風の想い 風の行方

木葉風子

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おもいがけない出来事⑤

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翌日、病院の受付
「面会は無理なんですか?」
「今は家族以外無理です」
諦めて病院を出ようと
廊下を歩く敬と毅
少し歩いていると
名前を呼ばれ振り向いた
「英司さん…」
「どうしたんだ?」
「面会きたんですけど
無理でした」
残念そうに言う敬
「規則だからね」
仕方ないという顔をする

「あの…彼の容態は?」
敬が訊ねる
「もうすぐ麻酔が 
切れる時間かな…」
そう言って2人を見る
「英司さん、昨日から
帰ってませんよね」
「大丈夫だよ
今日は帰れるからね」
少し疲れた様子の英司
「医者って、大変だな…」
毅が心配そうに言う

「輝、大丈夫なのかなぁ」
彼を心配する毅
「まぁ、実際に現場に
立たなきゃあ、わからない
ことだからな」
そんな話しをしていると
廊下の奥から怜が来る
「おまえら
何してるんだよ」
「真人くんが
気になったからね」
敬が言う

「青山先生
看護師が探してますよ」
「わかった、すぐ行く」
ナースステーションへ
行く英司を見送った
「でも、言葉使い違うんだ」
そう言って怜を見る毅
「当たり前だろ
上司と部下なんだからね」
そんな怜をジロジロ見る
「何だよ?敬」
「うん、白衣着てると
医者に見えるよね」
「そりゃ、どうも!」
照れくさそうに言った

「あっ、れい先生だ!」
「舞桜ちゃん」
彼の胸に飛び込んだ
「何してるの?」
優しく話す怜
「おかあさんが
お医者さんとお話しが
あるから待ってるの」
「じゃあ、俺と一緒に
待ってよか!」
「うん!!」
満面の笑みの舞桜

「と、言うことで
彼女とデートだから
じゃあね」
舞桜と表へ出ていく怜
「相変わらずだよなぁ~」
呆れ顔の毅
「あいつらしいけどね!」
苦笑いする敬

病院の中庭に来た2人
「れい先生
おにいちゃん
起きるよね?」
不安な顔をする
「大丈夫だよ
悪い所は取ったから…
真人にいちゃんは少し
疲れたからゆっくり
寝てるだけだよ」
それでも不安な様子
「でも、朝になったのに
まだおきないよ…」
怜の目を見て聞く舞桜

「おにいちゃんにとっては 
まだ夜なんだよ」
「いつになったら朝なの?」
舞桜をギュッと抱きしめて
優しく言う怜
「もう少しだからね」

❨真人、おまえには
待ってくれる人たちが
いるんだからな❩

午後
真人の麻酔がきれる時間
ICUの前で待っている2人
「毅、敬」
「輝、大学は?」
「こっちが気になって…」
ICUの扉が開き、怜が来る
「みんなも入って」
彼の後ろについて行く

扉の向こうにまた扉がある
扉と扉の間に手洗い所
「手を消毒して」
扉の前にあるインターホンに
話しかける怜
すると奥の扉が開いた
ICUの病棟
真人のベッドに向かう
ベッドには
たくさんのチューブと
点滴に繋がれ人工呼吸を
している真人がいた

「ほら、毅」
怜が毅を彼の前に
連れてくる
うっすら目を開ける真人
「オレのこと、わかるか?」
毅の顔をじっと見た
彼の顔を優しく撫でる毅
「大丈夫、絶対良くなるよ」
「今日はこの辺で…」
看護師に促され部屋を出る
廊下に出てきた、そして
3人の後から怜が出てきた

「怜、あいつ
オレのことわかったかな?」
不安気な様子の毅
「多分、わかってるよ」
少し安堵する毅
「今日のところは帰ろう」
敬が2人に言う 
「じゃあさ
俺の家で待ってろよ
ふぅちゃん家にいるから」
怜が3人に言った
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