常世のシャッテンシュピール ~自己否定王子とうそつき魔法少女~【前編】

KaTholi(カトリ)

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1章 影の巣くう遺跡

2. 底へ(6)

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 赤面というには暗い表情で、ナイアスは床に目を泳がせる。

 フレアが言っているのは、いまから2ヶ月ほどまえの――彼女たちが加わったときの話。

 影に関する風習がのこるという情報を得た、ハレドというとある村に、ナイアスは虎太郎コタロウをつれ、調査にむかった。
 そこで、ナイアスと虎太郎は運わるく、教導会きょうどうかいの教化と、その教化の混乱に便乗したアクシデントに巻きこまれる。
 
 調査で得られたものは、ごくわずか。
 ハレド村のゆいいつの生き残りであるが、教化のショックで記憶をうしなった、スピカ。
 村の風習についての、すこしの証言。
 アクシデントの原因でもあり、被害者でもある、磨弧マコ

 そのわずかに得た風習についての証言と、混乱のさなかにおこった、ふしぎなできごとからわかったこと。

 ――それは、スピカには、じぶんの影法師を具現化する能力、つまり、フレアを呼び出す能力があるということだった。

 ナイアスはちいさいころから、祖父の語る調査の話のなかでも、とくにシャドウ関係のものに、なみなみならぬ関心をしめしていた。
 そんな彼が、はじめて目のまえで召喚されたフレアに、開口一番ぶつけた質問が、

「あなたと遺跡のシャドウは、なにか関係があるんでしょうか!?」

 知ランガナ、というフレアのため息をかき消す、上司であるハンナ所長と、虎太郎の怒号。
 だが、ナイアスも負けじと、ふたりの目を盗んであつめたシャドウの資料を手に、

「だって、シャドウのことがわかれば対策もできるでしょう!? そうすれば、みんながもっと安全に調査をおこなえるはずです。なにより、いままで影にかんする発掘品や証言はいっさい出ていないのに、スピカくんの村にだけ、それにかかわる風習が残っていたというのは……」
「あなたの考えはわかるけど、リスクが大きすぎるわよ! 遭遇そうぐうはまれとはいえ、シャドウにとりかれて、自分の隊を全滅させた調査隊員や、そこから足がついて、教導会につぶされた研究所もあるの。今回だって、本当に……あなたたちが無事に帰ってこられたのが、ふしぎなくらいで……! あなたは調査隊のリーダーという自覚を持ちなさい、ナイアスくん!」
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