常世のシャッテンシュピール ~自己否定王子とうそつき魔法少女~【前編】

KaTholi(カトリ)

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3章 清霊

3. 時割大学、学生食堂(2)

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 利彦かがひこと、遅れてあらわれた瑞葉みづは康弘やすひろも加わる。
 4人がびっくりして、あるいは、へらへらと見つめる先には、さも当然のようにテーブルについて、「やっほー♡」と手をふる、ヤソマガツヒノカミと、カムナオビノカミ。
 ヤソマガツヒノカミの服装は、あいかわらずのフリフリゴシック。
 だが、康弘の言うとおり、カムナオビノカミのほうはみづら古代人ではなく、地味めのパーカーと長ズボン。そして、ポニーテールを背中にながく垂らしていた。
 凜々花りりかが相好をくずす。

「あっ、ほんとだー。なおちゃん、どうしたの、それ。似合うー」
「やっ、まっ、こら、そのっ、いくら、あたしらは只人ただひとには見えんゆーても、さすがにそこらウロつくには、あら、目立つっちゅーか……やそが、ダサかやらなんやら、うるさかっちゅーか……」

 と、襟や裾をいじりながら、真っ赤になって言い訳する、カムナオビノカミ。
 だが、そのころには、凜々花たちはとっくに席を立っており、

「瑞葉ちゃん、またナンパされて、大変だったねー。ごはん選びにいこー」
「なに、ふたりとも。先に食べててよかったのに……」
「メガネとった利ちゃんも、かわいいね~♡」
「そうかい、康弘くん。ぼくも、メガネをとると、きみの身長と顔面偏差値に絶望せずに済むから、せいせいするよ……クッソォ! あいつら、ぼくのこと、安芸津あきつさんの弟ぉ? とか言いやがって! なんで、弟が大学に来るんだい、ごじゃっぺどもがッ!!」
「しょうがないてー、利ちゃん。あたしも止めに入ったけど、流されたし。もう、ハニーくんぐらいのイケメンじゃないと、太刀打ちできないんらよー……あっ、なおちゃんとやそたんは、なにか食べるー? おごってあげるよ、おいでー」
「ほんとぉ♡ やそ、ケーキ食べるぅー♡」

 わーい♡ と、配膳はいぜんコーナーへ駆けだしたヤソマガツヒノカミにも取り残され、カムナオビノカミは怒りと羞恥しゅうち咆哮ほうこうをあげた。

「無視するんなら、聞かんでよかったっつろ――――ッ!?!?」
「え、なおちゃん、お腹すいてない?」
「ホットケーキ!!!! いただくたい、あたしも!!!!」

 カムナオビノカミの涙まじりのかん高い声が、学生食堂に響く。
 すると、食堂にまばらにいる学生たちも、厨房の調理師たちも、一瞬なにごとかとふり返ったものの、すぐに「ああ、なんでもなかったわ」とばかりに、目をもどした。
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