異世界立志伝 ー邪神の使徒になり幼女達と広めて行くー

無為式

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出会い

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 オーガの長ゴルガは、同種の中でも異質な男でした。彼は自らの怪力だけに頼らず、周辺の異種族を武力と奸計で次々と支配下に置いていました。

 俊足で知られるケンタウロス部隊、そして重厚な斧を振るうミノタウロスの戦士団。それらを配下に収めたゴルガの軍勢は、今や一つの「小国家」と言える規模にまで膨れ上がっていたのです。

「帝国が『切り取り勝手』を許すか。……フン、オズマよ。貴様の狙いは分かっている。だが、その誘いに乗ってやろう。南の森を飲み込み、我が『オーガ連合軍』をさらに巨大にするためにな」

 ゴルガの野心が南の森へと牙を剥き始めた頃、バエルもまた、次なる一手へと動いていました。

「兄上、オーガが周辺の里を飲み込みながらこちらへ向かっています。正面からぶつかる前に、我らもまだ支配下にない里を味方に引き入れる必要があるかと」

 次女ビィーの進言に、バエルは頷きました。

「ああ。だが、力での制圧だけでは限界がある。……アン、お前の出番だ、人材を集めろ」

「はい、兄者、ふふ、私(わたくし)の『商談』、受けていただけない方はいないはずです、さて、どの様な基準で集めますか?」

「ただ才あらば用いる」

「お任せ下さい」

 長女アンは、バエルが組織した武装行商集団、黒薔薇行商隊を率い、赤い旗を掲げて森の深奥へと足を踏み入れました。

 彼女が手にしているのは、バエルが「ポイント」で交換した現代の嗜好品や、見たこともないほど便利な道具、そして――拒む者には死を与える「赤槍」を。

「……ふむ、その『真紅の十文字』の旗、なかなか粋な趣(おもむき)じゃな。だが、この先の道は入り組んでおる。迷えば森の主の餌食になるだけよ」

 深い森の境界線、大瓢箪を背負った老猩々(しょうじょう)、ゾウエンはアンの前にふらりと現れました。

 アンは微笑み、バエルから預かった秘蔵の酒――現代の蒸留技術で作られた、香りの高い銘酒の栓を抜きました。

「それは困りますね、もしよろしければ、この『琥珀の雫』をお分けしますので、少しばかり案内をお願いできませんか?」

 その芳醇な香りに、ゾウエンの鼻がぴくりと動きました。

「……ほう! この香り、ただの酒ではない。秩序と、そしてどこか遠い世界の理(ことわり)が混ざっておる。……よかろう、案内してやろう。ただし、道中は退屈させぬことじゃぞ」

 ゾウエンの案内で、アンと黒薔薇行商隊は何箇所かの里を巡りました。

 ある飢えた獣人の里では、アンはバエルの命により、惜しみなく物資を分け与えました。

「これは施しではありませんわ。未来の『赤巾党』への投資ですよ」

 アンの慈悲深い振る舞いにより、絶望に沈んでいた里に活気が戻り、住民たちは赤い旗に希望を見出しました。

 しかし、次に向かった里では、略奪を繰り返す凶暴なサイクロプスが、弱い種族を虐げていました。

「奪うばかりで何も生み出さぬ者……それは、兄様の描く地図には不要ですわ」

 アンは微笑みを絶やさぬまま、朱槍を構えました。

「――突貫!!」

 アンによる蹂躙劇に略奪者の里は、一刻と経たずして徹底的に叩き潰されました。

 その様子を、ゾウエンは酒を煽りながら静かに見守っていました。そして、サイクロプスの里が灰になった後、彼はポツリと呟きました。

「……アン殿、惜しいな。あの略奪者どもをただ潰すだけでは、オーガの長ゴルガへの『見せしめ』としては三流じゃ。……全滅させるのではなく、何人か生き残らせ我らの強さを言いふらしてもらう、それが最善じゃて」

 その一言に含まれた、恐るべき洞察力と戦略眼。アンは目を見開き、ゾウエンに向き直りました。彼女は優雅に、しかし今までにないほど真剣な眼差しで頭を下げました。

「……失礼いたしました、ゾウエン先生。先生のようなお方の知恵を、ただの道案内に使っていたとは、私(わたくし)の目が節穴でしたわ。……どうか、バエル兄者の、そして『赤巾党』の軍師として、お力を貸していただけませんか?」

 ゾウエンは、アンのその真摯な態度と、何より彼女が仕える「バエル」という少年の底知れなさに興味を惹かれました。

「ふむ、酒の代金としては、随分と高くつく注文じゃな。……だが、バエルとかいう若造が、帝国の毒をどう解いてみせるのか。それを見届けるのも、老いぼれの暇つぶしには悪くない」

 ゾウエンは瓢箪を腰に叩きつけると、不敵に笑いました。

「よかろう。まずはあの小賢しいオーガの長、ゴルガの首を獲るための『盤面』、わしが整えてやるとしよう!」

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