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第二章 開幕
第18話 神の策略
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「で? メアリに何したんですか? 事と次第によってはこのギルド、いやこの街から追放ですからね!」
受付の嬢ちゃんは、左手を腰に右手は俺をビシッて指差しと言う決めポーズを取りながらそんな事を宣言してきた。
顔も頬を膨らませてプンプンだ。
おいおい、さっきこの街に残るって決めたのに、もう追放されるってか?
「だから違ぇよ! 話聞けって! 俺は何もしていないてぇの!」
何もしていないってのは嘘なんだが、お嬢ちゃんが勘違いしている様な事はしていないんでセーフだな。
まぁ、ある意味もっと酷い事なんでアウトかもしれんが。
「じゃあ、何でメアリがソォータさんの事を探してるんですか?」
「うっ、う~ん。あっ! あぁそうそう。あの事件の日にダイスに頼まれて教会に様子を見に行ったんだよ。何か『ただのジャイアントエイプによる被害とは思えないから、俺の見識を伺いたいんで』とか言うそんな理由で」
うん、今度は嘘は言っていない。
治療をして欲しいってのを伏せただけだ。
俺が北の現場に居た事自体はカイやグレンから話は行ってるだろうし、おかしい所はない筈。
嬢ちゃんも、ここまでの説明に関しては特に異論は無いようだな。
「それで教会に行ったら、一人で五人も治療している見習いシスターが居てな、あまりの献身ぶりに思わず『ガンバレー』って言ってやったんだ。そしたら急にあの子がピカーッと光り出してな。聖女様誕生って展開になった訳よ。もしかしたらそのお礼みたいなものじゃないか? ある意味俺の声援が聖女様誕生の切っ掛けになったのかもしれねぇしな。うんうん」
まぁ本当に俺が切っ掛けと言うか、元凶なのは秘密だ。
嬢ちゃんも俺の説明になにやら納得した顔をしている。
「確かにメアリもそんな事言ってました。てっきりあの子って優しいから、ソォータさんにされたアレやコレを庇う為にそう言ったのかなと……」
「酷ェ! って本当に礼を言う為に、わざわざ来たのか? 別にいいのに」
と言うか、何か嫌な予感がするんだよ、あの子。
魔法素人な見習いシスター程度が俺の設置魔法に気付く筈はないんだが、別れた時の態度が少し引っかかるんだよな。
くそう。ケチらずに隠蔽魔法も掛けておくんだったぜ。
「まぁ、あの子って昔から律儀な所が有りますからね。この忙しい最中お礼の為に時間を割いてくれたんですから、ソォータさんも感謝しないといけませんよ?」
「さっきから気になってたんだが、嬢ちゃん、あの子……メアリだっけ? と知り合いか?」
「えぇ。幼馴染なんです。親同士が昔からの知り合いなので、小さい時からよく遊んでいたんですよ。しかし親友が聖女様ってちょっと鼻が高いですね」
そう言ってまるで自分のように鼻をふんふんさせてドヤ顔をしている。
しかし、二人は幼馴染なのか。世間は狭い、いや、この街の広さからすると子供同士なら誰でも面識があってもおかしくないな。
それに……。
「へぇ~ギルドマスターの知り合いだったのか。まぁあの人は顔が広いからな」
「えぇ、お父さんが現役当時に、メアリのお父さんと同じ職種だった事もあって良きライバル同士って関係だったんですって」
そう、この嬢ちゃん。冒険者ギルドの受付嬢をしているが、実は俺の先輩冒険者でもあるギルドマスターの一人娘だ。
因みに母親も元冒険者で面識があったりする。
当時周囲の冒険者に姐御と呼ばれ恐れられていた凄腕の剣士だった。
ただ、久し振りに再開した時は、恐ろしかった面影は無く、普通に専業主婦をしている姿に、そのギャップで逆に恐怖したのを覚えている。
あまりの変り様に思わず『姐御! 悪いものでも食ったんですか?』と言ってしまったら、さすがに殴られた。
……当時の形相で。姐御は今も健在だった。
しかし、メアリとやらの父親がギルドマスターの知り合いだったのか。
こちらはマジで世間は狭いと言えるな。
現役当時ってあの王国での事か? そしたら俺も面識が有るって事だよな?
えぇと、現役時代のギルドマスターと同じ職種って事は、魔法使いって訳か。
う~ん、記憶では俺が所属していたギルド内には、先輩のライバルと言える程の魔法使いは居なかった。
じゃあ少なくとも、その人と直接面識は無さそうだ。
……ん? 父親が魔法使い?
なんだろう、凄く心臓がドキドキして来た。
まてまてまて、父親が魔法使いだって言っても、そのまま遺伝する訳じゃない。
それに教会で働いてるんだから魔法の適正が違うだろうし、大丈夫……だよな?
「メアリったら、お母さんに似た私と違って、小さい頃から天才魔術師って呼ばれてたんです。それが聖女さまになるなんて」
は? 天才……のなんだって?
「じ、嬢ちゃん? い、今なんて言った? メアリがなんだって?」
「え? 聖女様になるなんて?」
「違う! その前! 小さい頃から天才とかなんとかっての」
「あぁ、その事ですか。彼女は小さい時から魔法が得意だったんです。特に補助魔法なんて、おじさんも舌を巻く程凄かったんですよ~」
い、いやいやいや! ソレはおかしいだろ? 治癒魔法と呼ばれているが、それは便宜的な呼び名だ。
一般的に魔法使いが使う普通の魔法と違い、神の奇跡の代行者としての適正が必要で、魔力が有っても練習すれば使えるとか言うものじゃない。
そして、その適正者は何故か魔力が有ろうとも普通の魔法が使えない。
俺を除いては……だが。
「え? え? じゃあ何で見習いシスターなんかやってんだ? 魔法使いなら普通は無理だろ?」
「それがですね~。最近治癒適正が発現したんですよ」
「は? 何だそれ? いやその理屈はおかしい」
「普通はそうなんですけどね~、切っ掛けが私の怪我だったんですよ。先日彼女の家に遊びに行った際に私が不注意で割ってしまったコップを拾おうとしたら手をザックリいっちゃってですね。それを見た彼女が、慌てて私の傷口を押さえた瞬間、なんと治っちゃったんです! そこで免許を取得しないと不味いって言う事で、あの事件の前日から通ってたんですよ。やっぱりなるべくしてなった! と言う奴ですかねぇ~」
………………。ち~ん。
「やーーーめーーーろーーーよーーーなーーー!! なんだよそのコテコテな設定は!! 後出しは卑怯だろぉーーー!!」
「キャッ! ど、どうしたんですかソォータさん?! 急に大声出して訳の分からない事を言って!」
これは無いわぁ~。マジで無いわぁ~。
何が補助魔法が得意だよ! 設置魔法とか専門分野じゃねぇか!
それに急に治癒魔法適正が湧くってなんだよ! そんな特殊事例聞いた事もないわ!
それに、あの時のメアリって魔力も弱々しくヘロヘロで、治癒魔法の技術も素人だった。
…………。
いや、実の所は少しは俺もおかしいと思ってたんだよ。
そう、幾ら瘴気に犯されていた奴が死にそうだからって、見習いシスター一人に五人の重傷者を任せるっておかしいな? ってな。
けど、神が嫌いで教会には縁が無かったし、『見習い一人に負担を掛けさせるなんて、さすが神の手先だわ。とんだブラック企業だぜ』とかそんな風に思ってた訳よ。
ふぅ……。
アレってよ? もしかして、もしかしてだが、その実力が有ったから五人を任せていた……、仕草が素人だったのは二日目だったからで、魔力が弱かったのは、既に周りの奴らを全て治し終えて、魔力が枯渇しかけてたからって事だったりするのか?
そんなん分かる訳有るか! これ絶対神の策略だろ!
「でもソォータさん? お礼を言いに来たからって、それに付け込んで悪さしようとなんかしたら許しませんからね?」
神への怒りに打ち震えて肩で息をしている俺に、嬢ちゃんが何やら訝しげな口調でそんな事を言って来た。
さっきから手を出すな、手を出すなって嬢ちゃんはしつこいな。
普段俺の事をどんな目で見てやがるんだ?
「だから手を出すかっての! 何度も言うが歳が違い過ぎるわ!」
「むぅ~。私も同じ年齢なんですけど~?」
「へ? それがどうした?」
「べっ! 別に何でもないです!!」
ん? どうしたんだ嬢ちゃん。急に不機嫌になって?
しかし、嬢ちゃんと同い年? と言う事は14歳と言う訳か。
……改めてメアリの姿を想像すると、確かに顔の印象はそんな感じだったが、身体の発育の方は、ゆったり目の修道女の衣装の上からでもボンッキュッボンと、将来とてもグラマラスになる事が予想出来る体形だったな。
あと五年もしたらとんでもない美女に成長しそうだ。
それに比べて嬢ちゃんはと言うと……。
「嬢ちゃん? 同い年と言う事だが……」
「な、なんですか? その目は?」
「あ~、その、何だ。ドンマイ!」
俺はいい笑顔で嬢ちゃんに向けてサムズアップをした。
「何処見て言いやがった! このセクハラ親父!!」
ドガッ!
「フゴッ!」
俺の言葉の意味を察知した嬢ちゃんは、現役当時の姐御を髣髴とさせる迫力と共に、その拳が俺の鳩尾に深々と沈み込み、俺はその痛みに悶絶する。
くっ! 母親譲りのいいパンチをしてやがる。
覚醒以後、大抵の攻撃なら痛くないんだが、何故か姐御と嬢ちゃんの攻撃だけは骨の芯に響きやがるぜ。
「もう! ソォータさんなんか知りません!」
嬢ちゃんはそう言ってギルドの中に入っていってしまった。
そこまで怒る事か? う~ん思春期の娘の考えは分からねぇな。
とは言え、受付嬢とケンカしたままと言うのは報酬とかに響きそうで困るな。
今度アクセサリーとかお土産に買っていってやろうか?
いつもそれでコロッと機嫌が治るしな。
「まっ、取りあえず今はギルドマスターに昔の事を聞きに行くとするか」
確実にメアリは俺の魔法の事に気付いている筈だ。
もしかすると、いきなり聖女に仕立て上げられた事に怒って文句を言いに来たのかも知れねぇな。
とすれば、ここで会うのは拙いだろう。
下手すりゃ、俺の力をバラされる恐れが有るし、ここはやはり裏口からこっそりと……。
ギィィ。
改めて裏口に回ろうとした時、ギルドの扉が開く音が聞こえた。
凄く嫌な予感がする。なんか運命の強制力的なアレだ。
「あっーーーー! 教官じゃないですか! やっと休暇が終わったんですか? 待ちかねましたよ!」
俺の嫌な予感の通り、俺の存在を周囲に知らせる警報機の如く、辺りに大音量で響き渡ったのは、ダイス以上に空気を読まない天才であるバカの声だった。
「おっ、お前! そこでそんな大きな声を出す奴が有るか!」
ヤバイ! 今の絶対聞かれただろ!
だって今、誰かが勢い良く椅子を立ち上がった音がしたし。
タッタッタッタッ。
それにほら誰かが入り口に向けて走ってくる音もする。
この音は若い女の子の音だわ。あ~……神めっ!
「小父様!! やっと会えましたわ!!」
ほら……やっぱり。
「は、はは。こんにちわ……」
何故かとてもにこやかでいい笑顔をしている見習いシスター……メアリに向けて引き攣った愛想笑いを浮かべながら、俺はそう返す事しか出来なかった……。
受付の嬢ちゃんは、左手を腰に右手は俺をビシッて指差しと言う決めポーズを取りながらそんな事を宣言してきた。
顔も頬を膨らませてプンプンだ。
おいおい、さっきこの街に残るって決めたのに、もう追放されるってか?
「だから違ぇよ! 話聞けって! 俺は何もしていないてぇの!」
何もしていないってのは嘘なんだが、お嬢ちゃんが勘違いしている様な事はしていないんでセーフだな。
まぁ、ある意味もっと酷い事なんでアウトかもしれんが。
「じゃあ、何でメアリがソォータさんの事を探してるんですか?」
「うっ、う~ん。あっ! あぁそうそう。あの事件の日にダイスに頼まれて教会に様子を見に行ったんだよ。何か『ただのジャイアントエイプによる被害とは思えないから、俺の見識を伺いたいんで』とか言うそんな理由で」
うん、今度は嘘は言っていない。
治療をして欲しいってのを伏せただけだ。
俺が北の現場に居た事自体はカイやグレンから話は行ってるだろうし、おかしい所はない筈。
嬢ちゃんも、ここまでの説明に関しては特に異論は無いようだな。
「それで教会に行ったら、一人で五人も治療している見習いシスターが居てな、あまりの献身ぶりに思わず『ガンバレー』って言ってやったんだ。そしたら急にあの子がピカーッと光り出してな。聖女様誕生って展開になった訳よ。もしかしたらそのお礼みたいなものじゃないか? ある意味俺の声援が聖女様誕生の切っ掛けになったのかもしれねぇしな。うんうん」
まぁ本当に俺が切っ掛けと言うか、元凶なのは秘密だ。
嬢ちゃんも俺の説明になにやら納得した顔をしている。
「確かにメアリもそんな事言ってました。てっきりあの子って優しいから、ソォータさんにされたアレやコレを庇う為にそう言ったのかなと……」
「酷ェ! って本当に礼を言う為に、わざわざ来たのか? 別にいいのに」
と言うか、何か嫌な予感がするんだよ、あの子。
魔法素人な見習いシスター程度が俺の設置魔法に気付く筈はないんだが、別れた時の態度が少し引っかかるんだよな。
くそう。ケチらずに隠蔽魔法も掛けておくんだったぜ。
「まぁ、あの子って昔から律儀な所が有りますからね。この忙しい最中お礼の為に時間を割いてくれたんですから、ソォータさんも感謝しないといけませんよ?」
「さっきから気になってたんだが、嬢ちゃん、あの子……メアリだっけ? と知り合いか?」
「えぇ。幼馴染なんです。親同士が昔からの知り合いなので、小さい時からよく遊んでいたんですよ。しかし親友が聖女様ってちょっと鼻が高いですね」
そう言ってまるで自分のように鼻をふんふんさせてドヤ顔をしている。
しかし、二人は幼馴染なのか。世間は狭い、いや、この街の広さからすると子供同士なら誰でも面識があってもおかしくないな。
それに……。
「へぇ~ギルドマスターの知り合いだったのか。まぁあの人は顔が広いからな」
「えぇ、お父さんが現役当時に、メアリのお父さんと同じ職種だった事もあって良きライバル同士って関係だったんですって」
そう、この嬢ちゃん。冒険者ギルドの受付嬢をしているが、実は俺の先輩冒険者でもあるギルドマスターの一人娘だ。
因みに母親も元冒険者で面識があったりする。
当時周囲の冒険者に姐御と呼ばれ恐れられていた凄腕の剣士だった。
ただ、久し振りに再開した時は、恐ろしかった面影は無く、普通に専業主婦をしている姿に、そのギャップで逆に恐怖したのを覚えている。
あまりの変り様に思わず『姐御! 悪いものでも食ったんですか?』と言ってしまったら、さすがに殴られた。
……当時の形相で。姐御は今も健在だった。
しかし、メアリとやらの父親がギルドマスターの知り合いだったのか。
こちらはマジで世間は狭いと言えるな。
現役当時ってあの王国での事か? そしたら俺も面識が有るって事だよな?
えぇと、現役時代のギルドマスターと同じ職種って事は、魔法使いって訳か。
う~ん、記憶では俺が所属していたギルド内には、先輩のライバルと言える程の魔法使いは居なかった。
じゃあ少なくとも、その人と直接面識は無さそうだ。
……ん? 父親が魔法使い?
なんだろう、凄く心臓がドキドキして来た。
まてまてまて、父親が魔法使いだって言っても、そのまま遺伝する訳じゃない。
それに教会で働いてるんだから魔法の適正が違うだろうし、大丈夫……だよな?
「メアリったら、お母さんに似た私と違って、小さい頃から天才魔術師って呼ばれてたんです。それが聖女さまになるなんて」
は? 天才……のなんだって?
「じ、嬢ちゃん? い、今なんて言った? メアリがなんだって?」
「え? 聖女様になるなんて?」
「違う! その前! 小さい頃から天才とかなんとかっての」
「あぁ、その事ですか。彼女は小さい時から魔法が得意だったんです。特に補助魔法なんて、おじさんも舌を巻く程凄かったんですよ~」
い、いやいやいや! ソレはおかしいだろ? 治癒魔法と呼ばれているが、それは便宜的な呼び名だ。
一般的に魔法使いが使う普通の魔法と違い、神の奇跡の代行者としての適正が必要で、魔力が有っても練習すれば使えるとか言うものじゃない。
そして、その適正者は何故か魔力が有ろうとも普通の魔法が使えない。
俺を除いては……だが。
「え? え? じゃあ何で見習いシスターなんかやってんだ? 魔法使いなら普通は無理だろ?」
「それがですね~。最近治癒適正が発現したんですよ」
「は? 何だそれ? いやその理屈はおかしい」
「普通はそうなんですけどね~、切っ掛けが私の怪我だったんですよ。先日彼女の家に遊びに行った際に私が不注意で割ってしまったコップを拾おうとしたら手をザックリいっちゃってですね。それを見た彼女が、慌てて私の傷口を押さえた瞬間、なんと治っちゃったんです! そこで免許を取得しないと不味いって言う事で、あの事件の前日から通ってたんですよ。やっぱりなるべくしてなった! と言う奴ですかねぇ~」
………………。ち~ん。
「やーーーめーーーろーーーよーーーなーーー!! なんだよそのコテコテな設定は!! 後出しは卑怯だろぉーーー!!」
「キャッ! ど、どうしたんですかソォータさん?! 急に大声出して訳の分からない事を言って!」
これは無いわぁ~。マジで無いわぁ~。
何が補助魔法が得意だよ! 設置魔法とか専門分野じゃねぇか!
それに急に治癒魔法適正が湧くってなんだよ! そんな特殊事例聞いた事もないわ!
それに、あの時のメアリって魔力も弱々しくヘロヘロで、治癒魔法の技術も素人だった。
…………。
いや、実の所は少しは俺もおかしいと思ってたんだよ。
そう、幾ら瘴気に犯されていた奴が死にそうだからって、見習いシスター一人に五人の重傷者を任せるっておかしいな? ってな。
けど、神が嫌いで教会には縁が無かったし、『見習い一人に負担を掛けさせるなんて、さすが神の手先だわ。とんだブラック企業だぜ』とかそんな風に思ってた訳よ。
ふぅ……。
アレってよ? もしかして、もしかしてだが、その実力が有ったから五人を任せていた……、仕草が素人だったのは二日目だったからで、魔力が弱かったのは、既に周りの奴らを全て治し終えて、魔力が枯渇しかけてたからって事だったりするのか?
そんなん分かる訳有るか! これ絶対神の策略だろ!
「でもソォータさん? お礼を言いに来たからって、それに付け込んで悪さしようとなんかしたら許しませんからね?」
神への怒りに打ち震えて肩で息をしている俺に、嬢ちゃんが何やら訝しげな口調でそんな事を言って来た。
さっきから手を出すな、手を出すなって嬢ちゃんはしつこいな。
普段俺の事をどんな目で見てやがるんだ?
「だから手を出すかっての! 何度も言うが歳が違い過ぎるわ!」
「むぅ~。私も同じ年齢なんですけど~?」
「へ? それがどうした?」
「べっ! 別に何でもないです!!」
ん? どうしたんだ嬢ちゃん。急に不機嫌になって?
しかし、嬢ちゃんと同い年? と言う事は14歳と言う訳か。
……改めてメアリの姿を想像すると、確かに顔の印象はそんな感じだったが、身体の発育の方は、ゆったり目の修道女の衣装の上からでもボンッキュッボンと、将来とてもグラマラスになる事が予想出来る体形だったな。
あと五年もしたらとんでもない美女に成長しそうだ。
それに比べて嬢ちゃんはと言うと……。
「嬢ちゃん? 同い年と言う事だが……」
「な、なんですか? その目は?」
「あ~、その、何だ。ドンマイ!」
俺はいい笑顔で嬢ちゃんに向けてサムズアップをした。
「何処見て言いやがった! このセクハラ親父!!」
ドガッ!
「フゴッ!」
俺の言葉の意味を察知した嬢ちゃんは、現役当時の姐御を髣髴とさせる迫力と共に、その拳が俺の鳩尾に深々と沈み込み、俺はその痛みに悶絶する。
くっ! 母親譲りのいいパンチをしてやがる。
覚醒以後、大抵の攻撃なら痛くないんだが、何故か姐御と嬢ちゃんの攻撃だけは骨の芯に響きやがるぜ。
「もう! ソォータさんなんか知りません!」
嬢ちゃんはそう言ってギルドの中に入っていってしまった。
そこまで怒る事か? う~ん思春期の娘の考えは分からねぇな。
とは言え、受付嬢とケンカしたままと言うのは報酬とかに響きそうで困るな。
今度アクセサリーとかお土産に買っていってやろうか?
いつもそれでコロッと機嫌が治るしな。
「まっ、取りあえず今はギルドマスターに昔の事を聞きに行くとするか」
確実にメアリは俺の魔法の事に気付いている筈だ。
もしかすると、いきなり聖女に仕立て上げられた事に怒って文句を言いに来たのかも知れねぇな。
とすれば、ここで会うのは拙いだろう。
下手すりゃ、俺の力をバラされる恐れが有るし、ここはやはり裏口からこっそりと……。
ギィィ。
改めて裏口に回ろうとした時、ギルドの扉が開く音が聞こえた。
凄く嫌な予感がする。なんか運命の強制力的なアレだ。
「あっーーーー! 教官じゃないですか! やっと休暇が終わったんですか? 待ちかねましたよ!」
俺の嫌な予感の通り、俺の存在を周囲に知らせる警報機の如く、辺りに大音量で響き渡ったのは、ダイス以上に空気を読まない天才であるバカの声だった。
「おっ、お前! そこでそんな大きな声を出す奴が有るか!」
ヤバイ! 今の絶対聞かれただろ!
だって今、誰かが勢い良く椅子を立ち上がった音がしたし。
タッタッタッタッ。
それにほら誰かが入り口に向けて走ってくる音もする。
この音は若い女の子の音だわ。あ~……神めっ!
「小父様!! やっと会えましたわ!!」
ほら……やっぱり。
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何故かとてもにこやかでいい笑顔をしている見習いシスター……メアリに向けて引き攣った愛想笑いを浮かべながら、俺はそう返す事しか出来なかった……。
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その結果、様々な女性に迫られることになる。
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「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
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