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第十四章

彼の家族⑨

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 確かに私達の関係は、他人から見たら簡単には理解できないのかもしれない。

 高校の先輩後輩で、たまたま会社で再会して、二年経った今になってつき合い始めたのだから……

 蒼空さんの気持ちも私の気持ちも、当時からずっと変わらないけれど、両片想いが両想いになったタイミングが最近だったのだ。今回、蒼空さんのお父様が倒れる少し前だっただけのこと。きっと、お父様のことがなければ、蒼空さんが実家で話をするのももう少し後だったはずだと思う。

「もういいだろう?」
「はぁ~、私の大事な蒼空くんが悪女に騙されているのかと思って心配したけど違ったみたいね。悪女どころか、長年蒼空くんを支えてくれていた人だったのね」
「俺にとって大切な存在だ」
「蒼空くんの口から惚気の言葉を聞く日がやって来るなんて。お姉さんって呼んだらいい?」
「ええっ? それは勘弁してください。私の方が一歳下なので、呼び捨てでもなんでも」
「じゃあ、凛花ちゃんでいいかしら?」
「はい」
「私も下の名前で呼んでくれたらいいわ」
「美和さん」
「ちゃんでいいわよ」

 こっそりと呼び出された時にはどうなることかと焦ったけれど、蒼空さんが現れたことで無事に美和ちゃんにも認めてもらえたようだ。

「美和は一人で来たのか?」
「近くで隼大が待ってる」
「はあ? 道連れにされて可哀想に。これから帰るのか?」
「面倒になってきた。ここに泊まって帰っていい?」
「凛花、今日は美和にこの部屋を譲っていいか?」
「もちろんです」
「じゃあ俺達は帰るか」
「え? お仕事は?」
「今日はもういいや。明日にする」
「そうなの?」
「ああ、昨日に引き続き今日も凛花に癒してもらう」
「へ⁉」
「蒼空くんって意外とウザい男なんだね」
「はあ?」
「今までの蒼空くんと全然違う」
「ウルサイ」

 ポンポンと交わされる会話を聞いているだけで楽しい。大人な蒼空さんの意外な一面を見ることができて得した気分になる。

「凛花ちゃん、末永いつき合いになりそうだから、これからよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 会社を出た時の憂鬱さは消えて、清々しい気持ちでSAKURAを後にした。



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