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第十六章

プロポーズまでの道のり SIDE蒼空③

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 結局、近くで彼氏の隼人を待たせていたらしく、俺達がこのまま泊まろうかと思っていたが美和に部屋を譲る。凛花への誤解がとけて、家族の中では一番警戒していた妹の美和が凛花を認めたことが一番の収穫だが、こんなにすぐにやって来るとは予想できなかった。陽さんが見掛けて連絡をくれなかったら、凛花を傷つけていたかもしれない……

 思っている以上に動き出している未来のために、俺がするべきことはまだまだあるのだ。

 仕事では、羽田社長と改めて話し合って半年後に退職することとなった。

「わかっていたこととはいえ、寂しくなるな」
「まだお世話になるつもりだったのですが」
「親父さんが元気な間に、しっかりと受け継いで親孝行するべきだな」
「はい」
「吉瀬さんまで連れて行くのか?」
「そのことなんですが……。こちらを退職してから、当分の間はこのオフィスビル内の片桐に本拠地を置いて仕事をしようかと」
「……。プハッ」

 俺の考えが読めるのか、寂しくなると言っていたはずが爆笑している。

「また飲みにでも行こう。近いしな」

 色々と検討したが、本社と全国の支社との会議は、本社の会議室に集まることなくリモートなのだ。本社から近いここの支社なら、本社に用事があればすぐに行けるし、引っ越しをしなくていい。しかも凛花がまだここの仕事を続けられると、最善の策を思いついたのだ。

 退職の三ヶ月前には社内で発表するが、まだ俺が退職することは社長以外では限られた人しか知らない。

 社内で発表するよりも、俺には一世一代の大切なことがある。

 そう、凛花にプロポーズするのだ。結婚式は先になるかも知れないが、婚約者として公にしたい。婚約指輪を凛花の指にはめて俺のものだとアピールするのだ。

 美和が実家に帰って俺と凛花のことを話したらしく、凛花に迷惑を掛けたのではないかと両親が心配していた。親父はコンシェルジュの田辺さんから凛花の存在を聞いていたが、俺が報告するまではそっとしておくつもりだったらしい。相手が高校時代のバスケ部のマネージャーで、俺に相応しい相手だと美和から聞いたとも言っていた。まさか、美和の口からそんな話が出ているとは思わなかったが、お詫びの気持ちもあるのだろう。


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