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第十七章

未来へ⑥

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「片桐部長、三ヶ月したらいなくなるんですか?」
「ああ」
「もう会えないんですか?」
「どこに移られるんですか?」
「吉瀬さんもいなくなるんですか?」

 次々に質問が飛び、私の名前まで出てきているではないか。私自身、今後の身の振り方も決まっていないし、蒼空さんがどこに住むのかさえ聞けていないのに……
 
「何から説明するべきなのか迷いますが、吉瀬さんはここを辞めません」

 なぜか私のことを蒼空さんが答えている。しかも辞めないとは、蒼空さんと離れ離れになってしまうことを意味するのではないか。そんな大切なことを一言も話し合わずに、勝手に返事をする蒼空さんが信じられず哀しい気持ちになったのだが……

「そして残念ながら、引っ越しの予定もありません」
「へ⁉」

 思わず声が出てしまった私の声がフロアに響き渡る。

「ククッ」

 それを聞いた轟課長が笑いを堪えているではないか。どういうことなのだ? 訳がわからず私一人がパニックだ。

「次の勤務先は……」

 蒼空さんからの言葉をみんなが固唾をのんで見守っている。もちろん私もだ。

「このオフィスビルの30階です」
「「「……」」」

 さらに訳が分からずみんながポカンとしている。オフィスビルに入っている企業は多く、全てを把握しているわけではない。ましてや、どの企業がどのフロアに入っているのか把握することは困難だ。

「片桐ホールディングス……」

 小春がポツリと呟いた。みんなの視線が一気に小春に向き、次に蒼空さんへ移って交互に見ている。小春は以前に片桐ホールディングスの社員に絡まれた時に聞いたフロアの階数を覚えていたようだ。

 私が今後の住まいや仕事のことを心配していたのに、蒼空さんは悩んでいる様子がなかった。このオフィスビルで働くことが決まっていたのなら、早くに教えてほしかった……

「あの~」
「なんだ?」
「片桐部長と片桐ホールディングスって……」
「ああ、名前の通り実家が経営している」

 はっきりと、あっさり答えてしまった。その答えに、みんな呆けている。クラウドフラップに勤めている片桐部長と片桐ホールディングスが繋がっているとは考えもしていなかったのだろう。



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