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2話
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「....ん....」
意識が浮上するとガチャリと金属音のような耳障りな音が響く。
目を開けるとここはもう森ではなかった。
もちろん、夢が覚めて自分の部屋にいるわけでもない。
目の前には鉄格子があり両手は鎖で壁に繋がれている。
座らされた状態で足にも鎖が繋がっているが、こちらは長さに余裕があって少しは動かせる。
胸当てや小手などは脱がされていて、着ているのはスウェットだけ。右手を見ると包帯が巻いてあった。
鎖が取れないかと動かしてみるが、ガチャガチャとうるさい音がするだけで外れる気がしない。
捕まった、ってことか....?
部屋には俺しかいないようだ。
どうしよう、早くここから逃げないと。
でも、どうやって?
逃げられたとしてその後は?
ぐるぐると考えていると部屋のドアが開いた。
思わず身を縮めると鎖がガチャ、と音を立てた。
入ってきたのはあの獣人だ。
男と目が合った瞬間、あの時の光景が鮮明に蘇ってくる。
喉元に刺さった矢
虚な瞳
力なく垂れ下がった腕——
初めて、人が殺されるのを見た。
初めて、人を殺した人を見た。
男が近づく度、身体が勝手に震える。
「....お前は何者だ」
「........」
柵越しに話しかけられただけなのに情けないくらい身体がびくりと震えてしまう。
「勇者と呼ばれていたな?」
「.........」
「.....だんまりか。まあいい。こちらもすんなり話してくれるとは思っていない」
鉄格子の鍵を開けて男が入ってきた。
「ひっ....!」
喉の奥から引き攣ったような声が漏れる。
「そう怯えるな。殺したりはしない」
メイヤットさんを、殺したくせに....。
「もう1人の奴は敵意に満ちた目をしていたがお前の目は恐怖しか宿していない」
俺の言いたいことが分かったのか、そう言った。
でも、だからなんだというんだ。
相手が敵意を持っていたら殺していいとでも?
「とにかく、お前の知っていることは全て話してもらうぞ」
「......なにも知らない」
「ふん、そんな生意気な口がいつまで叩けるかみものだな」
本当になにも知らないのに強がりだと思っているみたいだ。男は口の端を吊り上げて笑うとズボンのポケットから小瓶を取り出し中身を煽った。
顎に手をかけられ上を向かされる。
せめてもの抵抗でキッと睨みつけたが、男は意に介さず顔を近づけてきた。
「んうっ!?んんー!ん...く...っ」
なぜか唇を重ねられ、口内にとろりとした液体が注ぎ込まれた。
突然入ってきた液体を半分くらい飲み込んでしまった。
「...っ、げほっ....げほっ...、なに....」
甘ったるい液体が喉に張り付いて気持ち悪い。
「素直になれる薬だ」
....自白剤、とかだろうか。
本当にそんなのがあるかどうかは分からないがそれしか思いつかない。
コンコン
突然部屋にノック音が響いた。
男は特に驚いた様子もなくドアに向かう。
その時、後ろを向いた男の後ろ姿に尻尾が見えた。
髪色と同じ、銀色の尻尾だ。
こんな状況でなければ触れたのだろうか。
男がドアを開けると金色の髪と瞳を持った男が入ってきた。
丸みを帯びた耳と色からしてライオンだろうか。
.....それにしても、ここのやつらはみんな美形なのか?
「殿下、この様な場所にいかがなさいましたか?」
「ああ、お前が直々に拷問すると聞いてな。相手がどんな奴か気になっただけだ」
ちらりと俺に視線を向ける。
拷問!?
すっごい不吉な言葉が聞こえた気がするんですが!
「随分と幼いな?成人しているのか?こんな奴が危険だと?」
俺を見た途端失礼な言葉を連発しやがった。
お前の方が絶対年下だろ!
「勇者と呼ばれていました。もしかしたら得体の知れない力を持っているかもしれません」
そんなもんないわ!
....いかん、怒りで身体が熱くなってきた....。
くっそ、好き放題言いやがって。
「で?口を割ったのか?」
「いえ。これからです。報告はいたしますのでお戻りください」
「見ていてはいけないのか?」
「危険ですので」
「....そうか。なら報告を待つ」
2人が話している間もどんどん身体が熱くなっていった。
なんだかおかしい。これは怒りの所為だけではないような気がする。
下半身に熱が集まっていくようなぞわぞわとした感覚に腰がもじもじと勝手に動いてしまう。
殿下と呼ばれていた獣人が部屋を出ていくと男がこちらに向き直り、
「薬が効いてきたか」
息を荒げる俺を見て言った。
これはさっきの液体の所為か。
「随分敏感だな。まだ何もしていないのに勃つとは」
男の言葉に耳を疑った。
意識が浮上するとガチャリと金属音のような耳障りな音が響く。
目を開けるとここはもう森ではなかった。
もちろん、夢が覚めて自分の部屋にいるわけでもない。
目の前には鉄格子があり両手は鎖で壁に繋がれている。
座らされた状態で足にも鎖が繋がっているが、こちらは長さに余裕があって少しは動かせる。
胸当てや小手などは脱がされていて、着ているのはスウェットだけ。右手を見ると包帯が巻いてあった。
鎖が取れないかと動かしてみるが、ガチャガチャとうるさい音がするだけで外れる気がしない。
捕まった、ってことか....?
部屋には俺しかいないようだ。
どうしよう、早くここから逃げないと。
でも、どうやって?
逃げられたとしてその後は?
ぐるぐると考えていると部屋のドアが開いた。
思わず身を縮めると鎖がガチャ、と音を立てた。
入ってきたのはあの獣人だ。
男と目が合った瞬間、あの時の光景が鮮明に蘇ってくる。
喉元に刺さった矢
虚な瞳
力なく垂れ下がった腕——
初めて、人が殺されるのを見た。
初めて、人を殺した人を見た。
男が近づく度、身体が勝手に震える。
「....お前は何者だ」
「........」
柵越しに話しかけられただけなのに情けないくらい身体がびくりと震えてしまう。
「勇者と呼ばれていたな?」
「.........」
「.....だんまりか。まあいい。こちらもすんなり話してくれるとは思っていない」
鉄格子の鍵を開けて男が入ってきた。
「ひっ....!」
喉の奥から引き攣ったような声が漏れる。
「そう怯えるな。殺したりはしない」
メイヤットさんを、殺したくせに....。
「もう1人の奴は敵意に満ちた目をしていたがお前の目は恐怖しか宿していない」
俺の言いたいことが分かったのか、そう言った。
でも、だからなんだというんだ。
相手が敵意を持っていたら殺していいとでも?
「とにかく、お前の知っていることは全て話してもらうぞ」
「......なにも知らない」
「ふん、そんな生意気な口がいつまで叩けるかみものだな」
本当になにも知らないのに強がりだと思っているみたいだ。男は口の端を吊り上げて笑うとズボンのポケットから小瓶を取り出し中身を煽った。
顎に手をかけられ上を向かされる。
せめてもの抵抗でキッと睨みつけたが、男は意に介さず顔を近づけてきた。
「んうっ!?んんー!ん...く...っ」
なぜか唇を重ねられ、口内にとろりとした液体が注ぎ込まれた。
突然入ってきた液体を半分くらい飲み込んでしまった。
「...っ、げほっ....げほっ...、なに....」
甘ったるい液体が喉に張り付いて気持ち悪い。
「素直になれる薬だ」
....自白剤、とかだろうか。
本当にそんなのがあるかどうかは分からないがそれしか思いつかない。
コンコン
突然部屋にノック音が響いた。
男は特に驚いた様子もなくドアに向かう。
その時、後ろを向いた男の後ろ姿に尻尾が見えた。
髪色と同じ、銀色の尻尾だ。
こんな状況でなければ触れたのだろうか。
男がドアを開けると金色の髪と瞳を持った男が入ってきた。
丸みを帯びた耳と色からしてライオンだろうか。
.....それにしても、ここのやつらはみんな美形なのか?
「殿下、この様な場所にいかがなさいましたか?」
「ああ、お前が直々に拷問すると聞いてな。相手がどんな奴か気になっただけだ」
ちらりと俺に視線を向ける。
拷問!?
すっごい不吉な言葉が聞こえた気がするんですが!
「随分と幼いな?成人しているのか?こんな奴が危険だと?」
俺を見た途端失礼な言葉を連発しやがった。
お前の方が絶対年下だろ!
「勇者と呼ばれていました。もしかしたら得体の知れない力を持っているかもしれません」
そんなもんないわ!
....いかん、怒りで身体が熱くなってきた....。
くっそ、好き放題言いやがって。
「で?口を割ったのか?」
「いえ。これからです。報告はいたしますのでお戻りください」
「見ていてはいけないのか?」
「危険ですので」
「....そうか。なら報告を待つ」
2人が話している間もどんどん身体が熱くなっていった。
なんだかおかしい。これは怒りの所為だけではないような気がする。
下半身に熱が集まっていくようなぞわぞわとした感覚に腰がもじもじと勝手に動いてしまう。
殿下と呼ばれていた獣人が部屋を出ていくと男がこちらに向き直り、
「薬が効いてきたか」
息を荒げる俺を見て言った。
これはさっきの液体の所為か。
「随分敏感だな。まだ何もしていないのに勃つとは」
男の言葉に耳を疑った。
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