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14話
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「寛大な言葉に感謝と敬意を。そしてこの度のことは改めて謝罪させて頂きたい。誠に申し訳なかった」
その言葉に、トリスさんまで膝を折る。
「だ、だからそのことはもういいって!トリスさんも!やめてください」
顔を上げたリベルの金色の瞳が俺を射抜ぬく。
その表情に心臓がどきりと跳ねた。
初めて見る、笑った顔。揶揄うようなにやにやした笑いじゃなく、優しい微笑み。
顔が良い所為で無駄にかっこよく見える。
くそう、これだからイケメンってやつは!
自分の顔の良さわかってやってるな!?
「チヒロ、側に行ってもいいか?」
「はっ!?」
その顔で、名前も初めて呼ばれ落ち着いた心臓が再び早鐘を打つ。
なに!?なんなの!?どういうつもり!?
「チヒロ?」
「あ、うん、いいけど....」
許可を出すと左腰に収まっている刀身を抜きながら立ち上がる。
その姿に思わず後ずさった。
なに!?ほんとになんなの!?
プチパニックになると「落ち着け」と優しく言われた。
「傷つけるつもりはない。お前を護る誓いを立てるだけだ」
はい?護る?誓い?
え、待ってなんの話?
目の前に来ると再び膝をつき剣先を下に向け、柄を額へ当てる。
所作がとても綺麗で見入ってしまった。
「我、リベル。ここに誓う。この先何が起きようと、この剣は貴殿を護る盾となろう。例えこの身が果てようと、最期までこの剣は貴殿と共に」
ぞくりとするような声色で口上を述べる。
.....え?え?ちょっと待って?なに勝手にそんな怖いこと誓ってんの!?
「え、なに今の。なんか怖いこと誓ってたけど....。そういうのって普通、王様に立てるもんじゃないの?」
「俺が勝手に誓っただけだ。気にするな」
いや、気にするでしょ!だって最期までとか言ってたじゃん!普通に重いから!
「そんな気軽に誓っていいものなの?」
「気軽に誓ったつもりはない」
うっ....。だらから!あんたは顔がいいんだから!そういう顔すんなって!
未だ片膝をついているので見上げるように金色の瞳がすっと細められる。
「チヒロさん、そんな難しく考えずともお守りくらいに思っていればいいですよ」
トリスさんまでそんなことを言うがとても納得できない。
それでも話は終わったとばかりにリベルは立ち上がり、剣を鞘に収めてしまう。
ちょ、俺の意見無視ですか!?だったら俺だって勝手にしますからね!?
...よし。今の話は聞かなかったことにしよう。うん。そうしよう。
「....じゃあ、俺はこれで。お忙しいのにお時間つくって頂きありがとうございました」
こういう時は逃げの一手!
「おい、待て。こちらもお前に伝えたいことがある。.....と、いうかお前の用事は先程ので全てか?」
くそう、早く帰りたかったのに。
「......?そうだけど....」
なにか他に伝えなきゃいけないことでもあっただろうか?
「なにか今の生活にご不満はないですか?」
「え?いや、全くないですよ。あ、不満、とかじゃないんですけど、俺も騎士団の方と同じ食事にしてもらえませんか?なんか豪華すぎて恐れ多いっていうか...。量ももう少し少なめでお願いしたいです」
食べきれないことはないんだけど毎食お腹がはちきれそうになるんだよね。
「.........」
「.........」
あれ?俺また変なこと言った?
いや、今までも変なこと言ったつもりはないんだけどね?なんで黙るの?
「....ふふっ、どうやら私たちの常識に当てはめない方が良さそうですね」
「ああ....。そうだな....」
え...、それって俺が非常識だってこと?
「あの....、俺なんか変なこと言いましたか?」
「いえ。失礼しました。手配しておきますね」
「よかった。お願いします。....それで、伝えたいことって....?」
尋ねるとトリスさんの顔が少しだけ曇った。
「お前がこの国に来たとき、もう1人いただろ」
ドクン
もう1人.....。
そうだ.....。ずっと、考えないようにしてた.....。
バチバチとフラッシュバックするようにあの時の光景が甦る。
「そいつをレムールへ送ることになった」
「レ、レムールへ....?」
「ああ。こちらで埋葬することも考えたが、やはり家族の元へ送った方がいいだろう」
「....でも、どうやって?国境まで連れてくの?」
「いえ。私が転送させます。第一王子には知られていない転移陣があるので。転送後はラディス殿下にお任せしてあります」
どうやら転移陣があれば少ない魔力で済むようで、ラディス殿下とはその転移陣を使って今までも情報を共有していたらしい。
遺体を大々的に返してしまうと戦争を激化させかねないのでご家族にのみ伝えてあるそうだ。
ご家族も、遺体を返してもらうのと引き換えに口外しない事を承諾済みらしい。
俺の知らないところで...というか都合の悪いことを考えないようにしている間にもこの2人は目を背けずに動いている。
その事実に少し情けなく思う。
だって、俺も少し責任を感じてるから。
俺と一緒に送られてなければ死ぬことはなかったのに。
俺がもっと早く現実だと受け止めていればなにか変わっていたかもしれないのに。
そんなことを思い知らされるのが嫌で向き合うのを避けていた。
お前の所為で死んだんだと言われているようで怖かったから。
その言葉に、トリスさんまで膝を折る。
「だ、だからそのことはもういいって!トリスさんも!やめてください」
顔を上げたリベルの金色の瞳が俺を射抜ぬく。
その表情に心臓がどきりと跳ねた。
初めて見る、笑った顔。揶揄うようなにやにやした笑いじゃなく、優しい微笑み。
顔が良い所為で無駄にかっこよく見える。
くそう、これだからイケメンってやつは!
自分の顔の良さわかってやってるな!?
「チヒロ、側に行ってもいいか?」
「はっ!?」
その顔で、名前も初めて呼ばれ落ち着いた心臓が再び早鐘を打つ。
なに!?なんなの!?どういうつもり!?
「チヒロ?」
「あ、うん、いいけど....」
許可を出すと左腰に収まっている刀身を抜きながら立ち上がる。
その姿に思わず後ずさった。
なに!?ほんとになんなの!?
プチパニックになると「落ち着け」と優しく言われた。
「傷つけるつもりはない。お前を護る誓いを立てるだけだ」
はい?護る?誓い?
え、待ってなんの話?
目の前に来ると再び膝をつき剣先を下に向け、柄を額へ当てる。
所作がとても綺麗で見入ってしまった。
「我、リベル。ここに誓う。この先何が起きようと、この剣は貴殿を護る盾となろう。例えこの身が果てようと、最期までこの剣は貴殿と共に」
ぞくりとするような声色で口上を述べる。
.....え?え?ちょっと待って?なに勝手にそんな怖いこと誓ってんの!?
「え、なに今の。なんか怖いこと誓ってたけど....。そういうのって普通、王様に立てるもんじゃないの?」
「俺が勝手に誓っただけだ。気にするな」
いや、気にするでしょ!だって最期までとか言ってたじゃん!普通に重いから!
「そんな気軽に誓っていいものなの?」
「気軽に誓ったつもりはない」
うっ....。だらから!あんたは顔がいいんだから!そういう顔すんなって!
未だ片膝をついているので見上げるように金色の瞳がすっと細められる。
「チヒロさん、そんな難しく考えずともお守りくらいに思っていればいいですよ」
トリスさんまでそんなことを言うがとても納得できない。
それでも話は終わったとばかりにリベルは立ち上がり、剣を鞘に収めてしまう。
ちょ、俺の意見無視ですか!?だったら俺だって勝手にしますからね!?
...よし。今の話は聞かなかったことにしよう。うん。そうしよう。
「....じゃあ、俺はこれで。お忙しいのにお時間つくって頂きありがとうございました」
こういう時は逃げの一手!
「おい、待て。こちらもお前に伝えたいことがある。.....と、いうかお前の用事は先程ので全てか?」
くそう、早く帰りたかったのに。
「......?そうだけど....」
なにか他に伝えなきゃいけないことでもあっただろうか?
「なにか今の生活にご不満はないですか?」
「え?いや、全くないですよ。あ、不満、とかじゃないんですけど、俺も騎士団の方と同じ食事にしてもらえませんか?なんか豪華すぎて恐れ多いっていうか...。量ももう少し少なめでお願いしたいです」
食べきれないことはないんだけど毎食お腹がはちきれそうになるんだよね。
「.........」
「.........」
あれ?俺また変なこと言った?
いや、今までも変なこと言ったつもりはないんだけどね?なんで黙るの?
「....ふふっ、どうやら私たちの常識に当てはめない方が良さそうですね」
「ああ....。そうだな....」
え...、それって俺が非常識だってこと?
「あの....、俺なんか変なこと言いましたか?」
「いえ。失礼しました。手配しておきますね」
「よかった。お願いします。....それで、伝えたいことって....?」
尋ねるとトリスさんの顔が少しだけ曇った。
「お前がこの国に来たとき、もう1人いただろ」
ドクン
もう1人.....。
そうだ.....。ずっと、考えないようにしてた.....。
バチバチとフラッシュバックするようにあの時の光景が甦る。
「そいつをレムールへ送ることになった」
「レ、レムールへ....?」
「ああ。こちらで埋葬することも考えたが、やはり家族の元へ送った方がいいだろう」
「....でも、どうやって?国境まで連れてくの?」
「いえ。私が転送させます。第一王子には知られていない転移陣があるので。転送後はラディス殿下にお任せしてあります」
どうやら転移陣があれば少ない魔力で済むようで、ラディス殿下とはその転移陣を使って今までも情報を共有していたらしい。
遺体を大々的に返してしまうと戦争を激化させかねないのでご家族にのみ伝えてあるそうだ。
ご家族も、遺体を返してもらうのと引き換えに口外しない事を承諾済みらしい。
俺の知らないところで...というか都合の悪いことを考えないようにしている間にもこの2人は目を背けずに動いている。
その事実に少し情けなく思う。
だって、俺も少し責任を感じてるから。
俺と一緒に送られてなければ死ぬことはなかったのに。
俺がもっと早く現実だと受け止めていればなにか変わっていたかもしれないのに。
そんなことを思い知らされるのが嫌で向き合うのを避けていた。
お前の所為で死んだんだと言われているようで怖かったから。
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