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人食いの沼
しおりを挟むずぶ濡れで草むらに放り投げられた大ちゃんの上に、アーサーがまたがってきた。
無言で ジャージを脱がし始める。
「ちょっとまって・・・ちょっと・・・」と、言えた義理ではないのだが、大ちゃんは弱弱しく抵抗した。
しかしすぐに 、トランクス(!)一丁という姿にされた。
大ちゃんはとっさに、あらわになった胸を隠す。その間に 最後の砦のトランクスもはぎ取られた。
何か言いたいが、声が出ない。
アーサーは、大ちゃんの両膝を掴んで足を広げた。
大ちゃんは観念して目を閉じる。
そして・・・
プチっ
「ぷち?」
プチプチッ
「????」
アーサーが、大ちゃんの肌から何かを引っぺがしている。
「あー、やっぱりいたいた。4匹目~」
「匹?」
見ると、黒くて小さい何かが、アーサーが投げ捨てた辺りにうごめいている。それは・・・
「あれっ・・・ヒル?!!」
「そう。これヒル。はい5匹目!」
そう言うとアーサーは大ちゃんの目の前に掴んだヒルを突き付けた。
「きゃ~~~~っ!」大ちゃんはヌメヌメした足のない生き物が大っ嫌いなのだ。
とっさに、素っ裸でアーサーに抱き付く。
アーサーは腰に手を回して、最後の一匹を取り去った。
「ここはヒルの沼だ。こんなとこに飛び込むマヌケがいるとはな・・・。」
「ひっ、ヒルの沼・・・。」
さっきまで美しい湖だと思っていたものは、今では何とも言えない暗い緑の陰湿な沼の姿をしていた。
「一瞬人の目をだまして水の中に入ってきたところを、ヒルの群れに襲わせて食らう人食いの沼だ。」
大ちゃんはゾッとした。アーサーが来なかったら、オオカミの化け物に食われるかヒルに食われるかのどちらかだったのだ。
「気づいた?俺は命の恩人だ。丁寧に礼をしてもらわないとなぁ・・・」
アーサーはまたキスをしようとした・・が、
「クッサ!」
人食いの沼の泥水のせいで大ちゃんの全身はドロドロ、ヘドロと生ごみをブレンドしたような、何とも言えない匂いがしている。
「仕方ない、宿で洗ってからだな。」
アーサーは血を流している大ちゃんの腕を、脱がしたTシャツで縛って止血し、自分のマントを体に巻いてやった。
「いくらなんでも最初から裸の女を宿には連れ込めないしな。さあ、立て。」
何とか立ち上がったが、大ちゃんはくじいた足のせいで歩けない。
「なんだ、世話が焼けるやつだな。足もケガしてるのか・・・。」
アーサーがピューと口笛を吹くと、暗くなった空から何かが近づいてきて、バサバサと音を立てて二人の前に舞い降りた。
巨大なハゲワシだった。
「ジャック、悪いんだけどコイツを町の宿まで運んでくれないか。お前が女嫌いなのは知ってるんだが・・・、こんどお菓子あげるからさ。」
ジャックと呼ばれた巨大な鳥は、おびえまくる大ちゃんをフンッと一瞥した。そしてすぐに二度見。
最後にマジマジと眺める。
「大丈夫、ジャックはいいやつだよ」とアーサー。
チビっこいマント姿の大ちゃんは怖かったが、そっとジャックのくちばしに触れてみた。
一瞬ジャックが照れた気がした。
「・・・お菓子忘れんなよ」
ジャックは大ちゃんを片足で引っ掴んで飛び立った。
「ええっ ぎゃああああ」
大ちゃんはあっという間に大空へ消えていく。
「ははは。珍しいな、ジャックがすんなり女を運んでくれるなんて。よし、俺も宿に急ぐか」
アーサーは大ちゃんのジャージを麻袋に詰めて、人食いの沼の森を後にした。
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