ケーキなボクの冒険

墨汁らぼ

文字の大きさ
61 / 67

♡61… 仕立て屋

しおりを挟む
扉を開けると・・・そこは・・・

「近っ!」

城を出てすぐの門の横だった。
ちょっと向こうには城の兵士がうろうろしている。
リーフはとっさにクルクルと壺を抱えて草むらに隠れた。

「牢屋から出してくれたのは嬉しいけど、もうちょっと遠くにならなったものか・・・」
魔法の扉はいつの間にか消えていた。

城は少し高台に建っているので、周辺の様子が見渡せた。
1時間も歩けば町に着きそうだ。大きな首都の町。
「むらさきの町って言ってたっけ・・・。人ごみに紛れたらごまかせるかな。
よし、行こう!」

リーフはむらさきの町に向かって歩き始めた。


城の中ではリーフが消えたことで騒ぎになっていたが、北のヒョウガの国の動きがいよいよ怪しく、リーフの捜索もそこそこに戦争準備に入っていた。

両王子もそれぞれ東西の砦を守るために遠征しなくてはならない。

「ご安心ください、マーリン王子、ララ王子、わたくしがきっと、リーフ様とあの少年をお探しいたしましょう。」

「頼んだぞ、スカーレット。しかしあの城の警備をくぐり抜けて出入りしたあの少年は、見かけによらず強力な魔法を使う者かもしれない。十分に気を付けるのだよ」

「はい、マーリン様。おそらく2人は町に潜んでいるでしょう・・・隠れるには好都合でしょうから。
リーフ様を必ずやご無事な姿でお連れいたします」

こうしてマーリン王子は東の砦、ララ王子は西の砦、スカーレットはむらさきの町の捜索にと出発した。


さてリーフとクルクルは、無事に町に着いた。
みどりの町とは違い、かなり大きな町である。
中央を走る大通りは立派で、人々でごった返しているし、その両端には所狭しとお店が並び、さらに分岐していくつもの賑やかな道がある。

リーフは屋台のいい香りで、お腹がすいておることに気がついた。
しかもよく見ると、自分の格好はボロボロのTシャツ1枚でかなりみすぼらしい。

「お金がいるなあ」
食べ物は壺から作れるとして、着る物を買うにはお金がいる。

ピコーン!!

「そうだ!壺で作ったお菓子を売ればいいんだ!」
リーフは壺が手元にあることに心から感謝した。

たいしたお菓子がないこの世界では、リーフのお菓子は飛ぶように売れた。
クルクルのつまみ食いがなければもっと儲かったはずだ。

3時間くらい売り続けると、3日分の宿代とリーフの洋服代ぐらいは儲かったので、リーフとクルクルは仕立てやさんに向かった。

リーフが見つけた仕立て屋さんは、大通りから少しずれた裏通りにある小さめのお店。
他にお客さんはいなかったが、あまり目立ちたくなかったので好都合だった。

「こんにちは・・・」
恐る恐る店の扉を開ける。
現実世界でも洋服屋さんとか一人で入ることはなかったので、なかなかハードルが高い。
店の中にはたくさんの布が並んでいた。
といっても、だいたい白か生成りの素朴な布だ。
色があまりないのは、染物屋さんが別にあるせいかもしれない。

よく売れるであろう、赤、青、黄色、みどりの布はあった。

「いらっしゃいませ。」
奥から男が出てくる。黒と青がっ混ざった色の髪、すらっとした体形、優し気な顔立ち。
(よかった、怖くなさそうな人だ)

ちょっと緊張していたリーフは安心した。
「すみません、ボク洋服を買うのなんて初めてで。予算は・・・これくらいなんですけど、」

リーフは宿代を引いた売り上げを男に見せた。

「洋服を買うのが初めて?珍しいですね・・・。でも光栄ですよ、初めての服選びを私のお店でしてくださるなんて。
そうですね、このご予算なら靴とマントまでご用意できるでしょう。
さて・・・お気に召した布はございますか?」

「・・・ボク、ほんとによくわからなくて、洋服のこと。できたら選んでもらえますか?」

男はセンスの良い服を着ている(と思う)。自分が選ぶよりマシだろうと思った。

「わかりました。では・・・まずは採寸をいたしましょう。どうぞこちらへ。」

リーフは奥の小部屋に連れて行かれる。
メジャーのようなもので、体のあちこち測られた。
男同士だけど体のが密着してなんだか恥ずかしい。

身を固くするリーフに男はニッコリして言った。
「申し遅れました、わたくしはブルーと申します。どうぞお気楽になさってくださいね・・・」
優しい微笑み。リーフもつられて「えへへ」と笑う。

その時、突然店のほうで大きな音と怒鳴り声がした。
「店主はどこだ!出てこい!」

ガチャンガチャンと何かが壊れる音がする。
「お客様はこちらでお待ちください」
ブルーは冷静に言って、小部屋から出ていく。
リーフはオロオロしながら立ちすくむ・・・

「ど、どうしよう、ブルーさん大丈夫かな?!助けに行った方がいいかなぁ・・・」
何か言い争う声が聞こえて、うめき声がしたかと思うと、シーンと静かになった。

そーっと小部屋から店をのぞくリーフ。
散らばった布と、紅い池のようなものが足元に見える。
「血?」

さらに見ると、5人ほどの男たちが突っ伏して倒れている。死んでるっぽかった。
その中で唯一生き、立っているのは

ブルーだった。

「お騒がせしました」

ブルーは返り血を浴びた美しく優しい顔でリーフに微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...