短冊と家族

大地ノコ

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短冊と家族

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 土曜のショッピングモールは混む。そこら中に何組もの家族連れがいるのだから、人口密度も高くなる。
 そして、土曜のショッピングモールは子供がうるさい。赤ん坊が泣き喚くのはまだ良しとして、5,6歳のガキがはしゃぎ回るのがどうも気に食わない。このぐらいの年ならもう、やっていいことと悪いことくらい分かるだろ!
 何が未来の宝だ。みてみろ、今の子供達は物に恵まれてるから、その分この年でここまで丸い体をしている。オブラートに包まず言えばデブだ。
 こんな宝、あってたまるか。

 そんな無法地帯ともいえるこの土曜のショッピングモール。嫌なら来なければいいと思うかもしれないが、嫌では無い。むしろ、今日は子供が多い土曜日だからこそここに来た。
「お、あったあった」それは、フードコート近くにあった。
『短冊です。ご自由にお書きください』の貼り紙とともに机に置かれていた短冊と、その横に立つ笹。私の1年に1度の趣味、【人の短冊の覗き見】の時間だ。
 子供の願い事というのは素晴らしい。突拍子もない、または現実味のないことを書いたりする。

 まずは1枚どれどれ、『かめんらいだあになってカナちゃんを助けたい。 ひろと』だってwww。可愛いなぁお前。カナちゃんが見ちゃったらどうすんだよww。それに文字が超真剣wwwガチで仮面ライダー目指してるよwww。
 これだから、短冊の覗き見は辞められない。

 ふと、目に付いた4枚の短冊群。長年覗き見をやっていた私からすると、感覚でこれは家族で書いたものだとわかる。

 まずはなるべく子供のものから見たい。お、これだ。『パパとけっこんする! かな』だってよ!!少しはみ出してんじゃん、どんだけ結婚したいんだよwww
 可愛い娘だなぁぁ!!それに優しい。今の時代、というか昔からだけれど、父を好いてくれる娘なんて絶滅危惧種だぞ!
 ていうか、カナちゃんここいるじゃん!残念だったなひろとwww

 さあて、こんなん見たら親のも気になるなぁ。お、筆跡が固い。これは大人のだな。『バレませんように』。これだけ???やけに小さい文字だ。神頼みしないといけないくらいのマズイことがあったのか?

 もう1人分の親の短冊があるはずだ。何か分かりそうな気がする。
『離婚と中絶が上手く行きますように』。そんなの子供の前で書くなよ……バレたらどうすんだよ……。
 なるほど、でもやっぱり分かった。『バレませんように』というのは、不倫の話だったのだ。しかし、不倫が発覚した頃にはもう、妻は子供を身ごもっていた。
 そして、この短冊に繋がるって訳だ。

 なるほど。なにやってんだよパパー、娘が好いてくれてたんだろ?それに妻からも。ならいいじゃん!!!
 そう非難したい気持ちが抑えられない。

 ふと思い出した。短冊群は「4枚」だった。
 残りの1枚を手に取る。おっと、子供の筆跡……だ……
 私は、短冊の内容に絶句し、何も考えることが出来なくなった。


『ぱぱとかなのあかちゃんがげんきにうまれますよーに かな』


 ふと、遊び場にいた子供を思い出した。
 デブ。3人くらいのデブがいた。でも、1人だけ少しおかしいんだ。デブというより、
 腹部に大きな何かが入っているような……
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