27 / 27
蛇足 この物語には続きがある
しおりを挟む
この物語には続きがある。いや、正しくは――この物語の主人公は君じゃない。
「ねぇ、オルス。次の頁に何が書かれていたか……知ってる?『我、汝の願いを知らず、夢現に花咲かす者なり』こう続いていたんだ」
きっともう、彼の耳には届いていないだろうけど、僕は人の言うそれ、淡々と告げてく。
「物語はね、逆から読んだりすると主人公とか見方が変わったりするから最後まで燃やさずに見ていれば結果は違っていたかもしれないね。やっぱり熱心なのは剣だけだった?」
つい、掌から一枚の文を指先に持っていき、「フッ」と、火を孕む一息で焼き尽くす。
「いろんな考えで全てを捨ててまで此処へ来たんだろうけどさ。あれ書いたの、僕だよ」
そして、本命がやっと来てくれた。
「やぁ、はじめまして」
背を向けてのご挨拶。
「き、君は?」
動揺するのも無理はない。
「僕は26代目勇者、ヒスロア・ノースドラゴン。君を迎えに来たんだ」
「僕を?」
「うん」
「どうして」
「それは、君が特別な存在だからさ」
「お父さんとお母さんは」
「意味は居場所。で、合ってる? でも、必要なのは君だけ、後のことは知らないんだ」
だって僕は、子供だから。
「……」
白々しく頭上に疑問符を浮かべる様に苛立ちを隠せなかったのか、僕を無視して先へ。
「見てもいいけど、後悔しないでね」
思いやりの忠告も敢え無く、絶望的な光景を自らが望んで目の当たりにしてしまった。
「うぁぁぁぁ‼︎」
如何にも子どもらしい心の内からの発狂。こんなに綺麗な人の絶望は、さっきぶりか。
「あれはただの怪物さ。そんなのはいいから僕と一緒に未来に来て欲しいんだけど。あの剣に隠されていたせいで見つけるのに苦労したし、さっさと戻りたいんだけど。ねぇ、聞いてる?」
「ぁぁ。……。――な、なんでお父さんたちを助けてくれなかったの」
「天秤に乗せるのだって大変なんだ」
「そんな」
「でもね、あんなのだって歴史に逸話を残してるんだ。世界の人口爆発を抑えたり、邪魔な不法移民を殺したりって、勇者としては、三番目くらいに最悪の偉業を成し遂げてる」
記憶というのはあらゆる面で曖昧だ。だからこそ、ありえないなんてことはないんだ。
君がいずれ彼に憧れ、同じ道を辿るように。
「あぁ、この子。ラフッシュも君に預けるよ。とても優しいから仲良くしてあげてね。でも今、助けてあげられなかった後悔拗ねてるから撫でるのは止めといた方がいいかも」
「きみには人の気持ちが」
「僕は分身だわからないよ」
こんな惨状の前でも自分の意志を明確に僕にぶつけ、まともな会話を成立させている。
やっぱり雛の段階でもわかるものなんだ。
「そんなに攻められても、何度も言うようだけどね、本当は別の道もあったんだよ。まぁこれは彼の頭の中の記憶の話だから、いずれ変わるかもしれないから、あんまり気に病まなくても大丈夫」
「そういうことを言ってるんじゃないんだ‼︎」
「こんなことに怒ってあげるんだね。血の繋がった程度の赤の他人に」
「それを」
「だから勇者になるんだ」
「え、――。いっ、今なんて」
「そっか、まだ君は知らないのか。あのね。何十年後か、君はあの背中を追っていく。いずれ、オルスクラインに憧れる勇者として」
「……貴方は何なんだ」
「そうだな」
ふと大空を見て、照らす太陽に聞いた。
ここまでが彼奴の勇者を辞める物語なら、
きっと。
「ここから先は僕が勇者になるまでの物語だ」
「ねぇ、オルス。次の頁に何が書かれていたか……知ってる?『我、汝の願いを知らず、夢現に花咲かす者なり』こう続いていたんだ」
きっともう、彼の耳には届いていないだろうけど、僕は人の言うそれ、淡々と告げてく。
「物語はね、逆から読んだりすると主人公とか見方が変わったりするから最後まで燃やさずに見ていれば結果は違っていたかもしれないね。やっぱり熱心なのは剣だけだった?」
つい、掌から一枚の文を指先に持っていき、「フッ」と、火を孕む一息で焼き尽くす。
「いろんな考えで全てを捨ててまで此処へ来たんだろうけどさ。あれ書いたの、僕だよ」
そして、本命がやっと来てくれた。
「やぁ、はじめまして」
背を向けてのご挨拶。
「き、君は?」
動揺するのも無理はない。
「僕は26代目勇者、ヒスロア・ノースドラゴン。君を迎えに来たんだ」
「僕を?」
「うん」
「どうして」
「それは、君が特別な存在だからさ」
「お父さんとお母さんは」
「意味は居場所。で、合ってる? でも、必要なのは君だけ、後のことは知らないんだ」
だって僕は、子供だから。
「……」
白々しく頭上に疑問符を浮かべる様に苛立ちを隠せなかったのか、僕を無視して先へ。
「見てもいいけど、後悔しないでね」
思いやりの忠告も敢え無く、絶望的な光景を自らが望んで目の当たりにしてしまった。
「うぁぁぁぁ‼︎」
如何にも子どもらしい心の内からの発狂。こんなに綺麗な人の絶望は、さっきぶりか。
「あれはただの怪物さ。そんなのはいいから僕と一緒に未来に来て欲しいんだけど。あの剣に隠されていたせいで見つけるのに苦労したし、さっさと戻りたいんだけど。ねぇ、聞いてる?」
「ぁぁ。……。――な、なんでお父さんたちを助けてくれなかったの」
「天秤に乗せるのだって大変なんだ」
「そんな」
「でもね、あんなのだって歴史に逸話を残してるんだ。世界の人口爆発を抑えたり、邪魔な不法移民を殺したりって、勇者としては、三番目くらいに最悪の偉業を成し遂げてる」
記憶というのはあらゆる面で曖昧だ。だからこそ、ありえないなんてことはないんだ。
君がいずれ彼に憧れ、同じ道を辿るように。
「あぁ、この子。ラフッシュも君に預けるよ。とても優しいから仲良くしてあげてね。でも今、助けてあげられなかった後悔拗ねてるから撫でるのは止めといた方がいいかも」
「きみには人の気持ちが」
「僕は分身だわからないよ」
こんな惨状の前でも自分の意志を明確に僕にぶつけ、まともな会話を成立させている。
やっぱり雛の段階でもわかるものなんだ。
「そんなに攻められても、何度も言うようだけどね、本当は別の道もあったんだよ。まぁこれは彼の頭の中の記憶の話だから、いずれ変わるかもしれないから、あんまり気に病まなくても大丈夫」
「そういうことを言ってるんじゃないんだ‼︎」
「こんなことに怒ってあげるんだね。血の繋がった程度の赤の他人に」
「それを」
「だから勇者になるんだ」
「え、――。いっ、今なんて」
「そっか、まだ君は知らないのか。あのね。何十年後か、君はあの背中を追っていく。いずれ、オルスクラインに憧れる勇者として」
「……貴方は何なんだ」
「そうだな」
ふと大空を見て、照らす太陽に聞いた。
ここまでが彼奴の勇者を辞める物語なら、
きっと。
「ここから先は僕が勇者になるまでの物語だ」
9
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる
ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。
幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜
犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。
これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。
足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました
ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」
優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。
――僕には才能がなかった。
打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ご期待に添えるよう努力します。
前回の作品とも通じる、現代の深刻なテーマとファンタジーが絶妙にマッチされた一話が堪りません! 次も期待しています!
ありがとうございます!