最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

16話 自分の道

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 自分達はガゼボに向かう。
「いや、ローンメドさんのお茶は美味い」
 ライさんが満足そうに言う。
「はい、とてもおいしいです」
「なぁトート、君いくつ?」
「15歳です」
「おっ。5つしか変わんない」
「20歳なんですね」
「トートそれ癖?」
「それとは?」
「いや、その敬語」
「歳上の方に敬語を使うものだと教わりました」
「いや、確かにそうなんだけど・・・ほら僕達5歳しか変わらないじゃないだからタメ口でもよくない?」
「いや、レオさんの弟さんに敬語なんてとても」
「じゃあ、友達にならない?」
「えっ!?」
「あーいや。嫌ならいいんだが・・・」
「いいんですか?自分で!」
 ライさんが目を大きくする。
「うん、トートがいい」
「よろしくお願い・・・よろしく」
 ライが手を出す。
「あぁ、よろしく」
 自分はその手を固く握る。
「ライに聞きたいことがあるんだ」
「ん?何?」
「ライはどうして情報屋を?」
「あぁ、僕ね」
 ライは少し考えるように上を見上げる。
「少し暗くなってしまうけどいい?」
「話してくれるの?」
「隠すことでもないしね」
 そしてまた空を見上げる。
「僕の父親も軍人だったんだ。しかもチャムクの。そして母親はスイマールの民」
「えっ!?ハーフなの?」
 ライは頷く。
 ハーフそれは忌み子の象徴だ。各国では自身の国が最も優れていると考えられている。特に帝国ではその考えが強い。他国との子を身籠るそれは貴族と奴隷の間で子を成すと同じ行為だった。故にそれが発覚すれば迫害は間逃れない。
「昔のスイマール帝国は『中立の象徴』なんて言われてた。例え他国の人と結婚しても国が匿ってくれた。だが両親は誰にも言わず隠していた」
「どうして?」
「いくら周りの国から隠してもらたって、人からは無理だ。迫害が絶えなかったろう」
 だから秘密にした。僕達を守るために。そして僕が8歳くらいの時に親父はチャムク帝国からスイマール帝国の軍人になった。父はこの国の“英雄”だったからね。皇帝の配慮で父はスイマール帝国の国籍を手に入れられたんだ。
 だから兄さんはスイマールの軍人なんだ。僕も目指したんだけど才能がなかった。魔力が生まれつき少なかったし運動能力もなかった。でもコミュニティー力は高くてね。それで必死に人脈広げてここまで来たんだ。と言っても本当は軍人になりたかったんだ
 ライは剣を持つ白髪の少女を思い描いた。
「好きな人がいた。当時は憧れの人でもあったんだ」
 でもその人の横にはいつも兄さんがいた。兄さんと同じくらい強ければ隣に立てると思った。無理だと分かっていても、がむしゃらに毎日のように剣を振るい、魔法の鍛錬を行なっていた。それをその人に見られたんだ。
 そしたら『お前に才能はない』て言われた。傷ついた。好きな人に憧れの人に言われて。悔しくて惨めで僕はその人に怒鳴ったんだ。『うるせぇ、お前に僕の何が分かる。努力もしないでそこにいけるお前に』って。そしてら何処からか来た兄さんに殴られたんだ。
「えっ!レオさんが?」
「意外だろう。でもそれは僕のせいなんだ。僕はその人がどういう人生を生きてきたか知っていたから」
 ライさんは悲しそうな顔する。
「僕は謝ろうとした。そしたら『親や兄弟が軍人だからってお前も軍人になる必要はない。自分のやりたいことをやれ』ってその人に言われた。救われたよ。だから僕は考えた自分がしたいことをどうしれば皆んなの役に立つか。そしてわかった。僕はコミュニティー力やが高いからこれを活かして人脈広げて情報集めてみんなの役に立てばいいって。だから今の仕事についたって訳さ」
「そうだったんだね。で、その人は?」
「ん?」
「“好きな人”とはどうなったの?」
「別に何も今も昔も同じだよ」
「そっか」
「2人とも」
 自分達は声のした方を向く。
「兄さん」
「そろそろ中に入ってきてください」
 もう夕方であることに気づく。
「随分話し込んだな」
「そうだね」
「じゃあ行くか」
「うん」
 自分達はレオさんの後に続く。
「何の話をしていたんですか?」
「兄さんが僕に暴力を振るうった話し」
 そう言いライはニヤリとする。
「あー。あったなそんなこと」
 レオさんは苦笑いする。

 リビングに行く。みんながいた。
「2人とも久しぶり」
「セリアさん!」
「姉さん久しぶり」
 ライが手を振るう。
コンコンコン
 執事長が一礼して入ってくる。
「皆様準備が出来ました。食堂におわつまりください」
「では行きましょう」
 みんなが立ち上がる。
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