最愛の敵

ルテラ

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エウダイモニア

77話 犯罪村

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緑が生い茂り、風が体だけでなく心も優しい包み込む。
「ここがエウダイモニア?」
「そう『幸福の村』通称『犯罪者村』だよ」
「犯罪者村?」
「ここにいる2割が亡命してきた者達で残り8割が元犯罪者またはその家族なんです。だからラズリはここを『犯罪者村』っと言っているんです」
「でもここで生活している奴らはここをエウダイモニア、幸福。幸福の村って言うんだ」
 しかし、今だに何を言っているのか分からないトートは顔かしめる。
「歩きながら説明しましょう」
 トートの横からパーチミが言う。歩くと家が点々とあり人の笑い声や話し声が聞こえ、パイロンが通りかかると笑顔で、挨拶をしたり笑いかけてくれる。
「先程、レオが説明してくれた様にここにいる殆どが犯罪者なんです。正確には死刑が執行されそうな者達をここで引き取っているんです」
「えっ?」
「ああ、勿論、刑期を終えた者達もいるんです。ですが犯罪を犯した者達には余りにもこの世の中は厳し過ぎる。だから挫折し、もう一度犯罪を犯してしまう。その悪循環を断ち切るためラズリはここを創りました」
「死刑を執行される者達まで・・・」
「ええ、これがバレれば私らはもちろん、皇帝陛下もたたでは済まないでしょう。私らも反対しました。しかし」

『命を奪うことが悪なら、牛や豚を食べている者達も悪人だ』
『そこは割りきれろ?汚い物には蓋をしろ、そしてその内誰かが、結局は他人任せ、いや他人任せにすらなっていない。それこそ罪ではないか』

「ラズリはここを第二の人生を歩むための休息点にしたいっと言っていたんです。きっと疲れているだろうから、これからどんな人生を歩みたいのか考える時間がだからっと」
「つってもここに来た殆どの奴らはここに定住することを選んでんだよ」
「居心地いいしね」
「“元”犯罪者同士だから分かることもあるんでしょう」

「パイロンさん!村長!」
 子供を抱っこした男が手を振るう。
「パイロンさん達お久しぶりです」
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「はい」
 トート、アタナシアナ、ファーデンの存在に気づく。
「こちらの子達は?新入り?そこの小さい子供は孤児かな?」
 レオに抱かれているアタナシアナの見る。
「(俺が子供?)」
 ファーデンが心の中で思う。
「いえ、違いますこの子は俺達の子です」
 セリアもレオとアタナシアナに近づく。
「それと2人は新入りです」
「そうでしたか。これは失礼」
 軽く頭を下げる。
「3人の歓迎会をやろうと思うのですがいいでしょうか?」
「それはいい。すぐに伝えてきます」
 男は子供を抱えたまま走っていった。男が走り去っていくと、安堵のため息をする。
「ラズリがいないこと突っ込まれるかと思ったー」
「っね。でももしかしたら気付いていないかもね」
「そうなんですか?」
「村を作ろっと言ったにはラズリですが人と関わることを嫌うラズリは殆ど叔父さんの家から出て来ないんです」
「そうなんですね。あの・・・さっきの人も・・・」
「いえ、彼は違います。彼のお兄さんが元犯罪者何ですか。この世界は犯罪者にもその家族にも厳しいですから。少し見て周るといいですよ。君の目で君だけの真実を見つけるといい」
 そう言い、案内にライを残しそれぞれ散っていく。じゃあ、行こっか、っとライが歩きその後ろにトートが着いて行く。
「ライ、ここって何処に位置するの?」
「ん?ああ、ほらチャムクとスイマールの国境に海があるだろう?そこに手付かずの森があるだろ」
 チャムク帝国とアデリアは横に国境が引かれており、そこを右に見ていくと何処の国にも属していない森がある。
「あそっこって表向きはスイマール帝国になってるの、何でか分かる?」
 トートは考える込むとあっ、と閃く。
「『かかしの英雄』!」
「そっ!かかしの英雄が戦争を終わらせた場所っとされている。両国敗戦ってなってるけどスイマールは心なしか戦力があってここはスイマールのものとなってる。『犯罪者村作るならこう言う未開の地がいいだろう』って皇帝がくれたんだよ」
 トートは気付いてた、普通に話している様に見えたがライが、何かを必死に隠さんとする思惑があることに。
「そして、ラズリが最も力を入れたのはここだよ」
 そこには白を基調とした教会の様な場所があった。建物に反して庭が広い取られており周りは木の塀で囲まれている。
 建物の後ろから賑やかな声が聞こえる。
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