最愛の敵

ルテラ

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チャムク帝国

96話 過去の真実(6)

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「んや、そうでもないさ。魔石剣に魔法を入れて見えない斬撃みたいにすればいいんじゃね?」
「確かにいいかもしれないね」
 パーチミも賛同する。
「自身のランクアップにもいいかもしれませんしやってみましょう」
 トートはラズリの剣を使うこととなった。
 その次の日、『影』とストゥルティのメンバーも合流する。
 朝起きると朝食を取るため村へ行く、ここでは村の全員で朝食を食べることが日課なのだ。その後は孤児院の子達とアタナシアナと共に遊び、昼食をとったのち午後から訓練開始だ。
 ライと『影』は情報収集のため村と帝国を行ったりきたり。ストゥルティのメンバーも訓練を行う。
 そんな日々が1ヶ月ほど続いた。
 その日はオンラインでライ達が集めた情報を聞いていた。
「それで・・・」
 画面に線が入る。
「ライ?」
「・・・な・・・ん」
 画面が暗くなる。
「どうしたんだ?」
 画面が光る。
『国民の皆様にご挨拶申し上げます』
 そのにはラズリが映っていた。
「ラズリ!!」
「ラズリさん!」
『単刀直入に申し上げます。この世界を滅ぼさせていただきます』
「なっ・・・」
『勘違いしてほしくないのは、これは宣戦布告ではなく一方的な殲滅です。ですが鬼ではありません。3年の期間を与えましょう。死ぬなり、豪遊するなり好きにするといい』
 それを最後に映像が途切れ、ライとの通信が回復する。
「ライ!見たか!?」
「うん、でもどう言うことなんだ。ラズリがなんで?」
 ライは動揺を隠せないでいる。
「落ち着くんだ」
 パーチミがなんとか落ち着かせる。
「とにかく、あれがもし本当なら3年後のは我々に明日はないということか」
「ライ、失礼する」
 『影』が現れる。ライに耳打ちする。
「分かった。皇帝が戻ってくる様にとのことだ」

 パイロンは皇城に行く。
「映像は見たな」
「はい。あれは世界に?」
「セルシアに先程、確認したがその様だ」
「本気か・・・」
 フィールがため息混じりに言う。
「パイロンよ。現状ラズリに勝てる確率は?」
 その沈黙が皇帝の顔をより一層深刻にさせる。
「3年後に勝てる確率は?」
「ラズリが3年間何もしないとは思いません」
 皇帝は俯く。
「何もできないのか?」
「あの・・・」
 今まで黙っていたライが口を開く。
「確証はありません。ですがよろしいでしょうか?」
「構わん。申してみよ」
「チャムク帝国の帝国にある“コロシアム”はご存じでしょうか」
「ああ・・・!まさか!あそこに!」
『コロシアム』はチャムク帝国にのみに存在し、昔はここで奴隷や獣を戦わせていた。しかし奴隷制度が廃止され今では囚人を戦わせ、優秀な成績を収めた者達には減刑にされ、更に優秀な者は軍人として雇用している。
「あそこには主に凶悪犯罪者や連続殺陣などが送り込まれています。一般人からも参加でき身分を証明しなくていいですし匿名、顔を隠したままでも問題ありません。如何でしょう?」
「しかし、チャムク帝国とは・・・」
 昔は良き貿易国として交流していたが戦争を仕掛けた日から、そして『かかしの英雄』が誕生した日からは冷戦状態であった。
「大丈夫です。情報収集のためにルートを使えば問題ありません」
「パイロン」
 レオは皆んなの顔を見る。全員が頷く。
「行って参ります」

ー現在ー
 自分らは顔を隠し、偽名を使いコロシアムで実力を高めていた。
 トートは『ルカ』
 レオは『エズラ』
 フィールは『ホセア』
 アイシャは『エステル』
 ファーデンは『ナホム』という名で登録している。
「でも、思ったよりやりづらいな」
「これのせいでしょう?」
 アイシャさんが腕の枷を見せる。囚人も一般人も関係なくつけられている。これは問題行動を起こしと反応し両手に付いている枷が磁石の様にくっつく仕組みになっている。それにより試合での殺しは少なくなった。そう表向きはそうなっている。無駄な殺し合いは避けたのも事実かもしれない、だがこれの本当の効果は
「魔力を奪われていますから」
「メンテナンスって称して回収してるけど魔力が満タンになったから回収してんだろう?」
「そうです」
「何を企んでいるのかしら」
「おい!」
 スタッフに声をかけられる。
「はい!なんでしょうか?」
「出番だ。ホセア」
「分かりました」
「じゃあ、いつもん所で、ボソ」
 囚人とは違い、一般人として参加しているため自由にコロシアムと街ので入りが出来る。
 コロシアムではあくまで他人の振りをしているパイロンは闘技場の中では堂々と話すことは出来ない。なのでライが手配してくれた家に集まり今後の計画などを話し合う。



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