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チャムク帝国
103話 願い
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ラズリさん、あなたは何て残酷な人なんだ。他人には生きろっと言いながら、自身は死を望む。それを罪だと言うなら生きて下さい。その罪も生きていなければ感じることができないんですよ。
「人は失敗しても学ばないが、誰かの死によって学ぶ」
ラズリの言葉の意味を理解出来ずにトートは顔を上げる。
ラズリは仮面を取っていた。
「(・・・あ)貴方はどれ程、自分を救ってくれるのですか?」
そうだ。いじめられていた自分を助けてくれたのはラズリさんだ。何で忘れていたんだ。
「法が何故出来たか分かるか?それは誰かを犠牲にして学んだからだ。殺人罪、あれは悲しむ者達の心を少しでも緩和させる為、命を奪った者に裁きを与える為に出来た。本来、人が人を殺さなければ出来なかった法だ」
「ここで貴方が死んで、何になると?」
分かっている。幾ら自分が鈍いかって、分かっている。いるんです。
「お前は優しいな」
トートの目から涙が溢れる。
ラズリは肩の力を緩める。
「殺人鬼が幾ら救おうと偽善に過ぎない。幾ら救おうと、多くの者を殺したとういう事実は変わらない。そもそも殺しと救いを結びつけている時点で、もう救いようがないんだ」
「違います。その気持ちこそ大事なんです。世の中には罪の意識何てなくて、平気で犯罪に手を染める輩だっているんです。だから・・・」
「トート、人として殺してくれ、恨んでくれ」
トートは歯を喰いしばる。
「何故、貴方は世界を憎まないんですか?貴方が守って来た者達は今、貴方の死を望んでいるんですよ!?」
思い止まって。
「トート、彼らの思いは時間と共に風化していく、だからお前もどうか忘れてくれ」
トートは歯を食い縛る。
「ラズリ・・・」
「もう疲れた。何に触れようと、何も感じず。何を見ようと、全てが白黒でしかなく。人は全てが血に染まって見える。もう、嫌なんだ」
ラズリの目から一筋の涙が流れる。
ずるいよ。そんなこと言われたら・・・何もいえないじゃないか、その選択しか無いじゃないか。
トートは強く手を握る。そして、何かに気づいた様に力を緩める。
「(ああ、そうか)」
トートは目を瞑り、深呼吸を1回し、目を開け、構える。
「ラズリさん、世界の為に自分は貴方を殺します」
「そうか」
空気に溶け込んでしまうそうな、でも何処か強そうな、そんな返答だった。
剣と剣が交わる。羽田から見れば真剣勝負だろうが、戦っているトートからしてみれば茶番もいい所だった。そうこれは、始めっから仕組まれたことだったのだから。
ラズリの剣が弾かれる。だがそれはラズリがワザと作った隙でしかない。しかし、トートは躊躇わずにラズリの剣を弾き、ラズリの右下から左上を斬りつける。ラズリは倒れる。
「~~~~~」
貴方は笑う。
「ラズリさん、さようなら」
トートはいつも持っていた銃を出す。
「ラズリさん、優しすぎるよ・・・」
トートは振り絞るように言う。銃声が響く。
ラズリの顔はとても幸せそうだった。まるで全てから解放された様に。
ねぇラズリさん、自分達は貴方がどんなに凶悪な犯罪者でも、貴方が世界から追われる身になったとしても、一緒に歩むくらいの覚悟はあったんですよ。でも、貴方はそれを望まない。なぜなら、貴方は世界で一番優しい人で、あなたは世界で一番傲慢で我儘なのだから
「ねえ・・・さん・・・ラズ・・・」
トートはラズリの死体の前で崩れるよに膝と手を地面に着ける。
「ラズリさん、死なないでよ!」
青月が照らす。満天の星と共にまるでなにも隠すものがないかのように。
ー3年後ー
世界は目まぐるしい程の変化を遂げた。スイマール帝国が世界を統一したのだ。そして『国』は土地を区分する上での座標の一つとなり、国という、小さなかった世界は『世界』と呼ばれる様になった。
そして、争う対象がなくなったことによって、軍は廃止となり、新たに『自衛隊』という部隊に変更。主な仕事は世界を回り、食糧支援や医療支援などを行う。
そして元々の文化や言語はそのまま残しながら、他の文化と融合しながら今も受け継がれている。本来なら抹消されてもおかしくないが『文化というのは過去から未来に受け継がれて来た物、何かしらの意味がある。たかが数年しか生きていない我に滅ぼす権利はない』
っとリヒト皇帝がそれを阻止した。しかし言語はスイマール帝国の言葉に統一されている。
身分制度の廃止、迫害の一切の禁止、貿易ルートの開拓、法を統制、武器の破棄など多くの改革を有能な部下達に任せた後、リヒト皇帝は引退した。『上に立つ者が必ずしも優秀だとは限らない。多くの者にチャンスを与えるべきだ』
っとのこと。リヒト皇帝は『最後の王』、そして『歴史上最も偉大な王』っとして今でも讃えられている。
でも、自分らは知っている。元々奥さんと娘さんとのんびり余生を過ごしたっと思っていたことを。
知っている。それらが全てラズリさんの指示であることを。
「人は失敗しても学ばないが、誰かの死によって学ぶ」
ラズリの言葉の意味を理解出来ずにトートは顔を上げる。
ラズリは仮面を取っていた。
「(・・・あ)貴方はどれ程、自分を救ってくれるのですか?」
そうだ。いじめられていた自分を助けてくれたのはラズリさんだ。何で忘れていたんだ。
「法が何故出来たか分かるか?それは誰かを犠牲にして学んだからだ。殺人罪、あれは悲しむ者達の心を少しでも緩和させる為、命を奪った者に裁きを与える為に出来た。本来、人が人を殺さなければ出来なかった法だ」
「ここで貴方が死んで、何になると?」
分かっている。幾ら自分が鈍いかって、分かっている。いるんです。
「お前は優しいな」
トートの目から涙が溢れる。
ラズリは肩の力を緩める。
「殺人鬼が幾ら救おうと偽善に過ぎない。幾ら救おうと、多くの者を殺したとういう事実は変わらない。そもそも殺しと救いを結びつけている時点で、もう救いようがないんだ」
「違います。その気持ちこそ大事なんです。世の中には罪の意識何てなくて、平気で犯罪に手を染める輩だっているんです。だから・・・」
「トート、人として殺してくれ、恨んでくれ」
トートは歯を喰いしばる。
「何故、貴方は世界を憎まないんですか?貴方が守って来た者達は今、貴方の死を望んでいるんですよ!?」
思い止まって。
「トート、彼らの思いは時間と共に風化していく、だからお前もどうか忘れてくれ」
トートは歯を食い縛る。
「ラズリ・・・」
「もう疲れた。何に触れようと、何も感じず。何を見ようと、全てが白黒でしかなく。人は全てが血に染まって見える。もう、嫌なんだ」
ラズリの目から一筋の涙が流れる。
ずるいよ。そんなこと言われたら・・・何もいえないじゃないか、その選択しか無いじゃないか。
トートは強く手を握る。そして、何かに気づいた様に力を緩める。
「(ああ、そうか)」
トートは目を瞑り、深呼吸を1回し、目を開け、構える。
「ラズリさん、世界の為に自分は貴方を殺します」
「そうか」
空気に溶け込んでしまうそうな、でも何処か強そうな、そんな返答だった。
剣と剣が交わる。羽田から見れば真剣勝負だろうが、戦っているトートからしてみれば茶番もいい所だった。そうこれは、始めっから仕組まれたことだったのだから。
ラズリの剣が弾かれる。だがそれはラズリがワザと作った隙でしかない。しかし、トートは躊躇わずにラズリの剣を弾き、ラズリの右下から左上を斬りつける。ラズリは倒れる。
「~~~~~」
貴方は笑う。
「ラズリさん、さようなら」
トートはいつも持っていた銃を出す。
「ラズリさん、優しすぎるよ・・・」
トートは振り絞るように言う。銃声が響く。
ラズリの顔はとても幸せそうだった。まるで全てから解放された様に。
ねぇラズリさん、自分達は貴方がどんなに凶悪な犯罪者でも、貴方が世界から追われる身になったとしても、一緒に歩むくらいの覚悟はあったんですよ。でも、貴方はそれを望まない。なぜなら、貴方は世界で一番優しい人で、あなたは世界で一番傲慢で我儘なのだから
「ねえ・・・さん・・・ラズ・・・」
トートはラズリの死体の前で崩れるよに膝と手を地面に着ける。
「ラズリさん、死なないでよ!」
青月が照らす。満天の星と共にまるでなにも隠すものがないかのように。
ー3年後ー
世界は目まぐるしい程の変化を遂げた。スイマール帝国が世界を統一したのだ。そして『国』は土地を区分する上での座標の一つとなり、国という、小さなかった世界は『世界』と呼ばれる様になった。
そして、争う対象がなくなったことによって、軍は廃止となり、新たに『自衛隊』という部隊に変更。主な仕事は世界を回り、食糧支援や医療支援などを行う。
そして元々の文化や言語はそのまま残しながら、他の文化と融合しながら今も受け継がれている。本来なら抹消されてもおかしくないが『文化というのは過去から未来に受け継がれて来た物、何かしらの意味がある。たかが数年しか生きていない我に滅ぼす権利はない』
っとリヒト皇帝がそれを阻止した。しかし言語はスイマール帝国の言葉に統一されている。
身分制度の廃止、迫害の一切の禁止、貿易ルートの開拓、法を統制、武器の破棄など多くの改革を有能な部下達に任せた後、リヒト皇帝は引退した。『上に立つ者が必ずしも優秀だとは限らない。多くの者にチャンスを与えるべきだ』
っとのこと。リヒト皇帝は『最後の王』、そして『歴史上最も偉大な王』っとして今でも讃えられている。
でも、自分らは知っている。元々奥さんと娘さんとのんびり余生を過ごしたっと思っていたことを。
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