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本編
もちゃもちゃもちゃもちゃ……
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不覚にもこのサイトをブックマークしていたせいで友人に小説を見られかけ、危うくテンプレキラーになる所でした。手遅れになる前に誰か変わってください。
もちゃもちゃもちゃ……
「んまいなコレ」
「でしょう? 皆喜ぶかなーと思って買ってきたッスよ」
2人でガムをもちゃもちゃする。
子供の時分に初めてガムを口にした時の感想は「これ無限じゃん」だった。無理もない、なにせいつまで経っても、何度咀嚼しようとも口の中から無くならないのだから。感動し、狂喜した。
次第に薄くなる味に、現代社会ににおける人間関係の希薄さを重ね、嗚咽混じりに泣いたのを今でも覚えている。四歳のとある日の夕暮れ、思えばあの日初めて世界の不条理に触れたんだよな。
懐かしいなぁ、子供ながらに「人の栄華は泡沫の夢が如し 」なんて呟いてさ。いつになく乾いて見える暁の空に、噛みしだいていたガムと今までの怠惰な自分を吐き捨てたっけ。
そういやぁ、幼なじみの美結と結婚の約束を交わしたのも、確かあの時だったな。
ふふふ、アイツ……あのこと覚えてるかな。今でも俺は忘れていない、なんて言ったら笑われるだろうか。
「……あの時も、たしかグレープ味だったかな」
秋晴れの空に向け独りごちる。あれから随分と背も伸びて、頭も良くなったし、笑い方も覚えた。美結は怪しい宗教にハマり、家を捨て、国を売った。
あの売国奴を始末するために俺はこの世に生を受け、今日ここに生きているのだ。
けど……何年経っても、いくら歳をとっても変わらないことだってある。このガムの味だってその内の一つだ。
噛めば噛むほどに薄くなっていくガムの……
もちゃもちゃ……
噛めば噛むほど……濃い。
「なんだコレ」
「うんめぇッスよね? これが今、異世界で空前絶後の超絶怒涛のムーブメンツを巻き起こしている『噛めば噛むほど味が濃くなるガム』ッス」
「……そうか」
口の中で掛け算式に濃くなるグレープは、俺の幼少期の苦い思い出を消し飛ばすのに充分過ぎるほどの役割を果たしていた。
しかし、俺の憎しみはこの程度では収まらない。むしろ日を増す事に強くなる一方だ。そう、このガムのように。
……ドォン!
落雷のような轟音が遠くで鳴り響く。
この技……美結だ。
「ペッ」
「……どうしたッスか?」
ガムを吐き捨て、俺は立ち上がる。行かなくては。
俺は強くなった。けど、何も変わっちゃいない。ただ、増えたんだ。このガムの味ように。
「あっ……」
小さな頭に手を乗せる。
守りたい人が、増えたんだ。増えたんだよ、このガムみたいに。
「行ってくる」
「先輩……私、ずっと待ってるッスから!」
俺はあの日の俺を超える。そして行くんだ、皆との未来に向かって。作るんだ、思い出を。色とりどりの、濃くて甘い思い出を。そう、このガムのように……
「新フレーバー、グレープ味を加えて美味しくなって再登場ッス!! 価格はなんと驚き据え置き180円!!ッス」
「『噛めば噛むほど味が濃くなるガム』!! お求めはお近くのコンビニかスーパーで!!」
『カーット!!』
「はぁー疲れたッスぅー!」
『いいですよこれは売れるですよー! くぅーっ! いいCMが撮れたですよーっ!』
「なー女神サマ、このガムどの味も焼肉のタレの味するんだけど」
『んなモン売ったモン勝ちですよ、買うほうが悪いんです』
結局のところ勇者がTV局の襲撃と電波ジャックに失敗した為、お茶の間にCMは流れることはなかった。トホホーっ
もちゃもちゃもちゃ……
「んまいなコレ」
「でしょう? 皆喜ぶかなーと思って買ってきたッスよ」
2人でガムをもちゃもちゃする。
子供の時分に初めてガムを口にした時の感想は「これ無限じゃん」だった。無理もない、なにせいつまで経っても、何度咀嚼しようとも口の中から無くならないのだから。感動し、狂喜した。
次第に薄くなる味に、現代社会ににおける人間関係の希薄さを重ね、嗚咽混じりに泣いたのを今でも覚えている。四歳のとある日の夕暮れ、思えばあの日初めて世界の不条理に触れたんだよな。
懐かしいなぁ、子供ながらに「人の栄華は泡沫の夢が如し 」なんて呟いてさ。いつになく乾いて見える暁の空に、噛みしだいていたガムと今までの怠惰な自分を吐き捨てたっけ。
そういやぁ、幼なじみの美結と結婚の約束を交わしたのも、確かあの時だったな。
ふふふ、アイツ……あのこと覚えてるかな。今でも俺は忘れていない、なんて言ったら笑われるだろうか。
「……あの時も、たしかグレープ味だったかな」
秋晴れの空に向け独りごちる。あれから随分と背も伸びて、頭も良くなったし、笑い方も覚えた。美結は怪しい宗教にハマり、家を捨て、国を売った。
あの売国奴を始末するために俺はこの世に生を受け、今日ここに生きているのだ。
けど……何年経っても、いくら歳をとっても変わらないことだってある。このガムの味だってその内の一つだ。
噛めば噛むほどに薄くなっていくガムの……
もちゃもちゃ……
噛めば噛むほど……濃い。
「なんだコレ」
「うんめぇッスよね? これが今、異世界で空前絶後の超絶怒涛のムーブメンツを巻き起こしている『噛めば噛むほど味が濃くなるガム』ッス」
「……そうか」
口の中で掛け算式に濃くなるグレープは、俺の幼少期の苦い思い出を消し飛ばすのに充分過ぎるほどの役割を果たしていた。
しかし、俺の憎しみはこの程度では収まらない。むしろ日を増す事に強くなる一方だ。そう、このガムのように。
……ドォン!
落雷のような轟音が遠くで鳴り響く。
この技……美結だ。
「ペッ」
「……どうしたッスか?」
ガムを吐き捨て、俺は立ち上がる。行かなくては。
俺は強くなった。けど、何も変わっちゃいない。ただ、増えたんだ。このガムの味ように。
「あっ……」
小さな頭に手を乗せる。
守りたい人が、増えたんだ。増えたんだよ、このガムみたいに。
「行ってくる」
「先輩……私、ずっと待ってるッスから!」
俺はあの日の俺を超える。そして行くんだ、皆との未来に向かって。作るんだ、思い出を。色とりどりの、濃くて甘い思い出を。そう、このガムのように……
「新フレーバー、グレープ味を加えて美味しくなって再登場ッス!! 価格はなんと驚き据え置き180円!!ッス」
「『噛めば噛むほど味が濃くなるガム』!! お求めはお近くのコンビニかスーパーで!!」
『カーット!!』
「はぁー疲れたッスぅー!」
『いいですよこれは売れるですよー! くぅーっ! いいCMが撮れたですよーっ!』
「なー女神サマ、このガムどの味も焼肉のタレの味するんだけど」
『んなモン売ったモン勝ちですよ、買うほうが悪いんです』
結局のところ勇者がTV局の襲撃と電波ジャックに失敗した為、お茶の間にCMは流れることはなかった。トホホーっ
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