9 / 10
本編
第八話
しおりを挟む
テラスでリスさん達にパンをあげて屋敷に戻ります。
そこでは、父、母、ペルセフォネが朝食を取っておりました、今まででしたら通る事もありませんでしたが、あえて今日は通ろうと思います。
それに気付いた、者達は口々に私に罵声を浴びせます。
「傷を隠せと何度言ったら分かるのか! それでは第一王子との婚約まで破棄されてしまうではないか!」
はい、その様にして貰います。
「こんな傷がある方が姉だなんて、もう耐えられませんわ!」
はい、私もこれ以上は耐えられません。
「レアー! いい加減になさい! 改めないと言うのならば即刻部屋に戻りなさい!」
はい、改めるのはあなた方なのですから。
私はその場で静かにに立ち止まり、小さくカーテシー。
先日折れた足は、まだ治っておらず、ズリズリと引きずり、私は階段下の物置······私の部屋に戻りました。
今日で学院は長期のお休みに入ります、計画の実行には最適な日となります。
私は、婚約者と、この家の悪事を、この五年間で集め全て記した物と、その証拠の品を学院へ行く前に届けるため、いつもより早く階段下の部屋から、クロノさんの部屋に向かいます。
コンコンコン
『はい、少々お待ち下さいませ』
カチャ
「レアーお嬢様、御用向きは?」
「中には入れて下さいませんの?」
「ふふっ、どうぞ」
未婚の女性が男性の部屋で二人きりに等々何度も聴かされましたが、クロノさんは部屋に入れてくれます、幼い頃には湯浴みもしていただきましたのに、おかしなお方です、あの頃より傷が増えたこんな私に、その様な気遣いをする必要など無いのです、それに、ナイフで刺された時には全てを見られてしまってますから。
質素なソファーに、足を気遣い手を引き案内をして、クロノさんはお茶の用意をしてくれます。
入れてくれた紅茶の香りを楽しみながら、喉を湿らせます。
「クロノさん、この後計画の実行をおねがいいたします」
「だと思いました、レアーお嬢様もよくここまで我慢なさいました、このクロノ、先代からの遺言を全ういたします」
「はい、お願いいたします」
「分かりました、こちらがこの家にある脱税を納付出来る金額を除いた全財産の引き落としが出来る商人ギルドのカードです、レアーお嬢様名義にしてありますのでご心配なく」
「うふふ、流石クロノさんですわね、ありがとうございます」
「お飲み終わりましたら学院ヘ御送りいたしましょう、その足では間に合いませんので」
本当に気が利いて、私も、心を奪われていたかもしれません、いえ、ほとんどが奪われた後なのでしょうね、この様な姿になる十数年前は『くりょののおよめしゃんになりゅ』と言っていましたから······この様な姿になりましたが、その思いはまだ諦められません。
「ありがとうございます、落ち着いて、落ち度が無い様にいたします」
お茶を飲み終わり、クロノさんのエスコートで馬車に向かい、馬車へ乗せていただきます。
まずは王城に向かいます。
計画の下地を作るためにかかった月日が思い出されます。
門番さんは、元伯爵様、宰相として、王子様にご注意をしたと、その罪で門番として五年もの間、務めなければならないそうです。
その方にクロノさんは、二冊の資料を渡しています、伯爵様は大きく頷き、門の中に入っていきました。
一冊は王様へ、もう一冊は近衛騎士団長様へ。
クロノさんは戻ってきて、学院へ馬車を向かわせます。
「これで今日中には王様も近衛騎士様も動くでしょう」
「そうですわね、王様と、近衛騎士様が動いてくださるなら、間違いなく最後ですねあの方々は······」
馬車を降りればそこは学院、学友達もいくらかは既に登校していることでしょう。
馬車が止まりました、私は髪の毛を結わえ傷痕を初めて学友の前に晒します。
義眼は着けず、眼孔を晒し。
髪を結わえて、額の傷と火傷を晒す。
半袖の制服は手袋をせず、刺し傷を晒します。
馬車の戸を開いたクロノさんが、こんなことを言うのですよ。
「レアーお嬢様、顔が笑顔になっております、整えて下さいませ」
「そうでしたか、分かりました······すぅぅ、はぁぁ」
大きく胸の奥まで息を吸い込み、ゆっくりと吐き出し、気を引き締めましす。
ゆっくりと足を引きずり、クロノさんの手を頼りに馬車を降りました。
暑さの増す夏の日差しが私を照らします。
そして日の元に晒された私を見つけた学友達が、ザワザワと辺りの空気をざわつかせ、そのざわつきが更に視線を集めてくれます。
私は沢山の視線を浴び、休み前の集会が行われる会場へとズリズリ足を引きずりながら入りました。
ここでも皆の視線が私に降り注ぎ、行く先が左右に分かれて行き、前方の椅子が並べられた舞台が見えました。
私は生徒会副長の席に座ります、もちろん壇上、隣にはまだ来ておりませんが会長、婚約者の王子が座る頑丈な、それでいて豪奢な椅子が座る者を待っております。
次々と入場してくる者達は壇上の私を目にする。
あるものは、驚き。
あるものは、じっと見つめ。
あるものは、目をそらし。
あるものは、表情を歪め。
あるものは、『・・・・』口が動く。
あるものは、侮蔑し。
あるものは、蔑み。
あるものは、笑みを浮かべる。
さあ、壇上から見える会場の出入口の外側に、豪奢な馬車が停まりました。
馬車の戸が開かれ、中からは煌びやかな衣装に身を包んだ婚約者、王子様があらわれ、会場入りをします、全ての者が跪く中、会場の中に入ったと言うのに、私の事は一瞥もせず、最近のお気に入りである伯爵令嬢、門番をしていた方がお父様でお可哀想な方です。
肩を抱かれ顔を歪め涙しています、その苦しみはもうすぐ終わらせます。
ケルド王子様と一緒に来たローグガオナー先生が最後の様子で、全ての方が揃い、会が始められる時まで伯爵令嬢を慰み、令嬢は涙でドレスに模様を作ってしまっており、肩口には血が滲んでおり、針の様な物が何本も刺さっております。
王子が壇上に上がるため、その身を解放されると振り向きもせず、肩に手を添え会場を出て行きました。
壇上に上がり、椅子の前までおいでになって初めて自身を見上げている私の姿を目にし、驚きの表情と共に言葉を発しました。
「何だその顔は」
「······」
「声を出す事を許す!」
「おはようございます王子様、ご機嫌麗しゅう御座います」
「その顔は何だと問ておる!」
まあ、大きな声をお出しに。
「元々この様な顔で御座います、いかがなさいましたか?」
「貴様! その様な顔を隠し我の婚約者となっておったのか!」
「いえ、本日は髪を結い上げ、義眼は外しておりますが、私はこの学院で王子様と会った時は既にこの顔でしたが?」
まだある瞳と、光の無い眼孔で見つめ、笑顔が出ないよう下から見上げます。
「ぐぬ、聴け! 今この時をもって婚約を解消する! 目障りだ! 出て行くがよい!!」
うふふ、第一段階は、思いの外順調に進みました。
「申し訳ありません、では失礼します」
ゆっくりと立ち上がり、足を引きずり、笑みが漏れないようにしながら壇上を後にする。
時間が掛かりましたが、会場を出て向かう先はクロノさんの待つ馬車置き場です。
クロノさんが、馬のブラッシングしている姿を見て、笑みが我慢出来ませんでしたが、人目もなく誰に見咎められる事無く無事にクロノさんの元にたどり着きました。
「レアーお嬢様、上手くいったようですね、参りますか」
「ええ、この様に晴れやかな気持ちになるのは初めてです。思いの外早いですので家まで・・・・と、お願いできますか」
「はい、第二段階ですね、衛兵の詰所に資料を届け帰りましょう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
衛兵の詰所に届け物をしました、これで別邸の制圧のため兵士達との連携が取れることでしょう。
家に着いた私は、執務室に居る父に会いに行きます、婚約破棄を言い渡された事を伝えに。
髪を下ろし、義眼を嵌め、手袋を嵌めました。
見た目は傷痕一つ見えなくなります。
そのままでは警戒するとクロノさんが言うので、傷が見えないようにしました。
コンコンコン
『誰だ』
「私です、レアーです」
『入れ』
カチャ
「なぜ今頃この家に居る」
息を吸い込みゆっくりと吐き出し気を落ち着かせます。
「本日、婚約破棄を王子様より言い渡されました」
「な! 何だと! なぜだ!」
「私には何も分かりません」
「ぐぬぬぬ、貴様のお陰で計画が全て遅れる! あの息子の暴虐の捌け口を探さねばあやつは計画の邪魔になる! クソ! この夏が終われば王になる筈が、もうお前には何も望みは無い! 廃嫡だ! 今後家名も名乗る事は許さん! 即刻出て行け! 二度とこの屋敷の敷地に入ることを禁ずる!」
「はい、失礼します」
私は執務室を出て、クロノさんの待つ馬車に戻ります。
クロノさんは執事服からローブに着替え、待っていてくれました。
もう、笑顔でクロノさんに近付き抱き付きたい衝動が、ぐっと押さえ込み、ゆっくりとクロノさんが待つ馬車までたどしつきました。
馬車はボロボロですが、見た目とは裏腹に頑丈に出来た馬車です、それにクロノさんに手伝ってもらい乗り込み、窓のある所に座らせてもらいました。
だって、この晴れやかな気持ちで景色を見たかったからです。
屋敷の敷地を出てすぐに一台の馬車とすれ違いました、騎士様が乗る馬車の様です、屋根の無い馬車ですので、八名の騎士様が乗っているのが見えました。
その馬車は速度を落とし、今出てきた屋敷に入って行きます。
私の予想では捕縛に来た騎士様たちです、小窓からクロノさんに話しかけ聞いてみましょう。
「捕まえに来られたのかしら?」
「その様で御座いますね、今朝、学院に行く前に届けておきましたので、ほらレアーお嬢様、学院からも護送用の馬車が出て参りますよ、王子が乗っておりますよ」
「まあ、こちらは数日後と思っておりましたのに」
「後ろ手に縛られております」
小窓から見た王子の顔は青ざめ怯えた顔をしておりました。
そこでは、父、母、ペルセフォネが朝食を取っておりました、今まででしたら通る事もありませんでしたが、あえて今日は通ろうと思います。
それに気付いた、者達は口々に私に罵声を浴びせます。
「傷を隠せと何度言ったら分かるのか! それでは第一王子との婚約まで破棄されてしまうではないか!」
はい、その様にして貰います。
「こんな傷がある方が姉だなんて、もう耐えられませんわ!」
はい、私もこれ以上は耐えられません。
「レアー! いい加減になさい! 改めないと言うのならば即刻部屋に戻りなさい!」
はい、改めるのはあなた方なのですから。
私はその場で静かにに立ち止まり、小さくカーテシー。
先日折れた足は、まだ治っておらず、ズリズリと引きずり、私は階段下の物置······私の部屋に戻りました。
今日で学院は長期のお休みに入ります、計画の実行には最適な日となります。
私は、婚約者と、この家の悪事を、この五年間で集め全て記した物と、その証拠の品を学院へ行く前に届けるため、いつもより早く階段下の部屋から、クロノさんの部屋に向かいます。
コンコンコン
『はい、少々お待ち下さいませ』
カチャ
「レアーお嬢様、御用向きは?」
「中には入れて下さいませんの?」
「ふふっ、どうぞ」
未婚の女性が男性の部屋で二人きりに等々何度も聴かされましたが、クロノさんは部屋に入れてくれます、幼い頃には湯浴みもしていただきましたのに、おかしなお方です、あの頃より傷が増えたこんな私に、その様な気遣いをする必要など無いのです、それに、ナイフで刺された時には全てを見られてしまってますから。
質素なソファーに、足を気遣い手を引き案内をして、クロノさんはお茶の用意をしてくれます。
入れてくれた紅茶の香りを楽しみながら、喉を湿らせます。
「クロノさん、この後計画の実行をおねがいいたします」
「だと思いました、レアーお嬢様もよくここまで我慢なさいました、このクロノ、先代からの遺言を全ういたします」
「はい、お願いいたします」
「分かりました、こちらがこの家にある脱税を納付出来る金額を除いた全財産の引き落としが出来る商人ギルドのカードです、レアーお嬢様名義にしてありますのでご心配なく」
「うふふ、流石クロノさんですわね、ありがとうございます」
「お飲み終わりましたら学院ヘ御送りいたしましょう、その足では間に合いませんので」
本当に気が利いて、私も、心を奪われていたかもしれません、いえ、ほとんどが奪われた後なのでしょうね、この様な姿になる十数年前は『くりょののおよめしゃんになりゅ』と言っていましたから······この様な姿になりましたが、その思いはまだ諦められません。
「ありがとうございます、落ち着いて、落ち度が無い様にいたします」
お茶を飲み終わり、クロノさんのエスコートで馬車に向かい、馬車へ乗せていただきます。
まずは王城に向かいます。
計画の下地を作るためにかかった月日が思い出されます。
門番さんは、元伯爵様、宰相として、王子様にご注意をしたと、その罪で門番として五年もの間、務めなければならないそうです。
その方にクロノさんは、二冊の資料を渡しています、伯爵様は大きく頷き、門の中に入っていきました。
一冊は王様へ、もう一冊は近衛騎士団長様へ。
クロノさんは戻ってきて、学院へ馬車を向かわせます。
「これで今日中には王様も近衛騎士様も動くでしょう」
「そうですわね、王様と、近衛騎士様が動いてくださるなら、間違いなく最後ですねあの方々は······」
馬車を降りればそこは学院、学友達もいくらかは既に登校していることでしょう。
馬車が止まりました、私は髪の毛を結わえ傷痕を初めて学友の前に晒します。
義眼は着けず、眼孔を晒し。
髪を結わえて、額の傷と火傷を晒す。
半袖の制服は手袋をせず、刺し傷を晒します。
馬車の戸を開いたクロノさんが、こんなことを言うのですよ。
「レアーお嬢様、顔が笑顔になっております、整えて下さいませ」
「そうでしたか、分かりました······すぅぅ、はぁぁ」
大きく胸の奥まで息を吸い込み、ゆっくりと吐き出し、気を引き締めましす。
ゆっくりと足を引きずり、クロノさんの手を頼りに馬車を降りました。
暑さの増す夏の日差しが私を照らします。
そして日の元に晒された私を見つけた学友達が、ザワザワと辺りの空気をざわつかせ、そのざわつきが更に視線を集めてくれます。
私は沢山の視線を浴び、休み前の集会が行われる会場へとズリズリ足を引きずりながら入りました。
ここでも皆の視線が私に降り注ぎ、行く先が左右に分かれて行き、前方の椅子が並べられた舞台が見えました。
私は生徒会副長の席に座ります、もちろん壇上、隣にはまだ来ておりませんが会長、婚約者の王子が座る頑丈な、それでいて豪奢な椅子が座る者を待っております。
次々と入場してくる者達は壇上の私を目にする。
あるものは、驚き。
あるものは、じっと見つめ。
あるものは、目をそらし。
あるものは、表情を歪め。
あるものは、『・・・・』口が動く。
あるものは、侮蔑し。
あるものは、蔑み。
あるものは、笑みを浮かべる。
さあ、壇上から見える会場の出入口の外側に、豪奢な馬車が停まりました。
馬車の戸が開かれ、中からは煌びやかな衣装に身を包んだ婚約者、王子様があらわれ、会場入りをします、全ての者が跪く中、会場の中に入ったと言うのに、私の事は一瞥もせず、最近のお気に入りである伯爵令嬢、門番をしていた方がお父様でお可哀想な方です。
肩を抱かれ顔を歪め涙しています、その苦しみはもうすぐ終わらせます。
ケルド王子様と一緒に来たローグガオナー先生が最後の様子で、全ての方が揃い、会が始められる時まで伯爵令嬢を慰み、令嬢は涙でドレスに模様を作ってしまっており、肩口には血が滲んでおり、針の様な物が何本も刺さっております。
王子が壇上に上がるため、その身を解放されると振り向きもせず、肩に手を添え会場を出て行きました。
壇上に上がり、椅子の前までおいでになって初めて自身を見上げている私の姿を目にし、驚きの表情と共に言葉を発しました。
「何だその顔は」
「······」
「声を出す事を許す!」
「おはようございます王子様、ご機嫌麗しゅう御座います」
「その顔は何だと問ておる!」
まあ、大きな声をお出しに。
「元々この様な顔で御座います、いかがなさいましたか?」
「貴様! その様な顔を隠し我の婚約者となっておったのか!」
「いえ、本日は髪を結い上げ、義眼は外しておりますが、私はこの学院で王子様と会った時は既にこの顔でしたが?」
まだある瞳と、光の無い眼孔で見つめ、笑顔が出ないよう下から見上げます。
「ぐぬ、聴け! 今この時をもって婚約を解消する! 目障りだ! 出て行くがよい!!」
うふふ、第一段階は、思いの外順調に進みました。
「申し訳ありません、では失礼します」
ゆっくりと立ち上がり、足を引きずり、笑みが漏れないようにしながら壇上を後にする。
時間が掛かりましたが、会場を出て向かう先はクロノさんの待つ馬車置き場です。
クロノさんが、馬のブラッシングしている姿を見て、笑みが我慢出来ませんでしたが、人目もなく誰に見咎められる事無く無事にクロノさんの元にたどり着きました。
「レアーお嬢様、上手くいったようですね、参りますか」
「ええ、この様に晴れやかな気持ちになるのは初めてです。思いの外早いですので家まで・・・・と、お願いできますか」
「はい、第二段階ですね、衛兵の詰所に資料を届け帰りましょう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
衛兵の詰所に届け物をしました、これで別邸の制圧のため兵士達との連携が取れることでしょう。
家に着いた私は、執務室に居る父に会いに行きます、婚約破棄を言い渡された事を伝えに。
髪を下ろし、義眼を嵌め、手袋を嵌めました。
見た目は傷痕一つ見えなくなります。
そのままでは警戒するとクロノさんが言うので、傷が見えないようにしました。
コンコンコン
『誰だ』
「私です、レアーです」
『入れ』
カチャ
「なぜ今頃この家に居る」
息を吸い込みゆっくりと吐き出し気を落ち着かせます。
「本日、婚約破棄を王子様より言い渡されました」
「な! 何だと! なぜだ!」
「私には何も分かりません」
「ぐぬぬぬ、貴様のお陰で計画が全て遅れる! あの息子の暴虐の捌け口を探さねばあやつは計画の邪魔になる! クソ! この夏が終われば王になる筈が、もうお前には何も望みは無い! 廃嫡だ! 今後家名も名乗る事は許さん! 即刻出て行け! 二度とこの屋敷の敷地に入ることを禁ずる!」
「はい、失礼します」
私は執務室を出て、クロノさんの待つ馬車に戻ります。
クロノさんは執事服からローブに着替え、待っていてくれました。
もう、笑顔でクロノさんに近付き抱き付きたい衝動が、ぐっと押さえ込み、ゆっくりとクロノさんが待つ馬車までたどしつきました。
馬車はボロボロですが、見た目とは裏腹に頑丈に出来た馬車です、それにクロノさんに手伝ってもらい乗り込み、窓のある所に座らせてもらいました。
だって、この晴れやかな気持ちで景色を見たかったからです。
屋敷の敷地を出てすぐに一台の馬車とすれ違いました、騎士様が乗る馬車の様です、屋根の無い馬車ですので、八名の騎士様が乗っているのが見えました。
その馬車は速度を落とし、今出てきた屋敷に入って行きます。
私の予想では捕縛に来た騎士様たちです、小窓からクロノさんに話しかけ聞いてみましょう。
「捕まえに来られたのかしら?」
「その様で御座いますね、今朝、学院に行く前に届けておきましたので、ほらレアーお嬢様、学院からも護送用の馬車が出て参りますよ、王子が乗っておりますよ」
「まあ、こちらは数日後と思っておりましたのに」
「後ろ手に縛られております」
小窓から見た王子の顔は青ざめ怯えた顔をしておりました。
1
あなたにおすすめの小説
『胸の大きさで婚約破棄する王太子を捨てたら、国の方が先に詰みました』
鷹 綾
恋愛
「女性の胸には愛と希望が詰まっている。大きい方がいいに決まっている」
――そう公言し、婚約者であるマルティナを堂々と切り捨てた王太子オスカー。
理由はただ一つ。「理想の女性像に合わない」から。
あまりにも愚かで、あまりにも軽薄。
マルティナは怒りも泣きもせず、静かに身を引くことを選ぶ。
「国内の人間を、これ以上巻き込むべきではありません」
それは諫言であり、同時に――予告だった。
彼女が去った王都では、次第に“判断できる人間”が消えていく。
調整役を失い、声の大きな者に振り回され、国政は静かに、しかし確実に崩壊へ向かっていった。
一方、王都を離れたマルティナは、名も肩書きも出さず、
「誰かに依存しない仕組み」を築き始める。
戻らない。
復縁しない。
選ばれなかった人生を、自分で選び直すために。
これは、
愚かな王太子が壊した国と、
“何も壊さずに離れた令嬢”の物語。
静かで冷静な、痛快ざまぁ×知性派ヒロイン譚。
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
追放聖女ですが、辺境で愛されすぎて国ごと救ってしまいました』
鍛高譚
恋愛
婚約者である王太子から
「お前の力は不安定で使えない」と切り捨てられ、
聖女アニスは王都から追放された。
行き場を失った彼女を迎えたのは、
寡黙で誠実な辺境伯レオニール。
「ここでは、君の意思が最優先だ」
その一言に救われ、
アニスは初めて“自分のために生きる”日々を知っていく。
──だがその頃、王都では魔力が暴走し、魔物が溢れ出す最悪の事態に。
「アニスさえ戻れば国は救われる!」
手のひらを返した王太子と新聖女リリィは土下座で懇願するが……
「私はあなたがたの所有物ではありません」
アニスは冷静に突き放し、
自らの意思で国を救うために立ち上がる。
そして儀式の中で“真の聖女”として覚醒したアニスは、
暴走する魔力を鎮め、魔物を浄化し、国中に奇跡をもたらす。
暴走の原因を隠蔽していた王太子は失脚。
リリィは国外追放。
民衆はアニスを真の守護者として称える。
しかしアニスが選んだのは――
王都ではなく、静かで温かい辺境の地。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる