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第一章
第148話 アンラと
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狭い一人部屋、小さな寝台に寝転ぶ俺を見下ろすアンラ、口の端からツーッと酒がこぼれるのが見えた。
少し間を置いて、ゴトン……ゴトンと、アンラは取り出した本と、口にしていた酒を床に落としちまったようだ。
その顔は、スッと赤く染まる。
蝋燭の炎とは違う赤さだと分かり、ドキドキが加速していくのも止められずにいる。
見惚れていたアンラの喉がコクンと動き、口にふくんだ酒が喉を通ったのだろう。
ギシッと寝台にされた木箱に手をつき、上ってくると俺の太ももにまたがった。
ずり上がるように体を動かすたびにギシッ、ギシッと軋ませ、前屈みに俺の顔の横と、肩へ手を置いた。
そして耳の先まで真っ赤に染めたアンラの顔が近付いてきた。
近付いてくると、ふっと飲んだのはワインのようで、アンラから果物の香りが俺の鼻に届き、アンラのアゴを伝っていた赤い雫がポタリと俺のアゴに落ち、喉元を濡らして滑り落ちる。
俺はそっと頬に手を伸ばし、濡れた唇を親指で拭うと、そのまま銀色でサラサラとした髪の毛を手櫛で撫で上げる。
「……アンラ」
「ケント……」
鼻と鼻が触れ合い、アンラの真っ赤な目には俺しか映っていない。
そのまま見つめ合いさらに近付き、閉じていくアンラの目蓋にあわせ――――――目を閉じた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふあっ、朝か」
「にゅふふ~、もっと寝てようよ~」
『もうお昼ですよ、宿の方が何度も来てましたから、早く起きて連泊を知らせないと迷惑がかかります』
『ほら、ケント様、アンラ、今、扉の外に宿の方が来ました』
コンコンとダーインスレイブが言った通り宿屋の人が来たようだ。
『お客さーん、そろそろ本当に起きてくれないと開けますよー、お客さーん』
「すまねえ! 今起きた! すぐ下りてくから飯を頼む!」
そう言って飛び起きようとしたが、アンラが抱きついてっから首だけ扉に向け、聞こえるように大きめの声で返事をした。
「えぇ~、しかたにゃいなぁ~」
『はいよっ! すぐに準備できますんで、お早く』
そう言って扉の前を遠ざかる気配が、階段を下りていった。
「寝すぎたみてえだな、アンラ、起きんぞ」
「ふぁぁ、あ~い、おはようケント」
「ああ、おはようアンラ、んっ」
「んっ、にゅふふふ! よーし今日も頑張るぞー!」
二人で同時に起き上がり、身支度をすませる。
昨日ドワーフのおっさんに仕立て直してもらった服だ。
アンラと同じように黒のズボンに白いシャツ、黒ベスト、そしてベルトを締めて解体用のナイフを革で造られた鞘に挿し込む。
今まではリュックに入れていたが、激しい動きでも簡単には落とさねえように造られていて、これが中々格好良い。
アンラには無いがまだ造っている最中の物もあるそうで、後日もらいに行く。
後、俺はこれももらったんだが新しいリュックにクロセルを取り付け背負えば準備完了だ。
「よし、クローセ、ソラーレ行くぞ」
ソラーレを寝台の上から掬い上げ肩へ。
クローセはぴょんと寝台からソラーレとは逆の肩に飛び上がり、リュックの蓋を鼻先で器用に開けてスルリと入っていった。
「私も準備完了」
「おっし、忘れ物は無いな、行くぞアンラ」
そろって部屋を出た俺達は、階段を下り一階の食堂についた。
朝昼兼用になったごはんを腹に詰め込んで、同じ部屋のまま数日の連泊を頼んで金を先払いしておく。
宿を出た俺達は、冒険者ギルドに向かい、依頼をすませることにする。
ギルドの受け付けに行くと昨日いなかったおっさんが、カウンターの奥にいるのが見えた……あれだな。
「すまねえ、ギルドマスターに手紙を渡す依頼を請けている者だ。ギルドマスターはいるか?」
受け付けの姉ちゃんに依頼書と手紙を見せ話しかけると、俺達の顔を見て少し驚いた顔をしたがすぐに後ろ向き、ギルドマスターを呼んでくれた。
「ギルドマスター、王都からのお手紙が届いています。署名が必要なものなので、こちらに来てください」
呼ばれて立ち上がったのはおっさんじゃなく、どう見ても俺達と変わらねえ女だ。
「な、なんでしょうか、王都からと聞こえたのですが」
「ギルドマスター、こちらの方が王都からお手紙を持ってきてくれました」
ソイツがおどおどと『あっ、後ろ通ります』『きゃっ、ご、ごめんなさい大丈夫ですか?』と職員の後ろを通るたびに、一人ずつことわりを入れ、なにもないところでつまずくと、謝りながらカウンターまでやってきた。
「ひゃい! あ、ごめんなさい、ありがとうございます。こちらですか、お預かりいたします」
スッと手紙をカウンターの上で滑らせ差し出すと、何が怖かったんか分かんねえが、ビクッとした後そっと手を伸ばして手紙を受け取った。
「ねえねえ大丈夫? 小さい子だけどギルドマスターだよね? みんなに苛められてたりするの? ビクビクしすぎだもん」
「ああ、もしそうなら俺が苛める奴をボコボコにしてやるからよ」
「いえいえいえいえ! こ、これは私の性格でして、昔からこんな感じですから、誰にも苛められていません! 皆さんとても優しいですからボコボコしないでください!」
バタバタと手を振り首を横に振ってはいるが、信じられねえよな。
だがまわりを見ると、ギルドマスターを見る目がまるで子供を見守る親みてえな顔をして『よし、頑張れギルマス』『大丈夫ですよギルマスちゃん、私達が見守ってますから』と、どうも言ってることは本当の事みたいだ。
少し間を置いて、ゴトン……ゴトンと、アンラは取り出した本と、口にしていた酒を床に落としちまったようだ。
その顔は、スッと赤く染まる。
蝋燭の炎とは違う赤さだと分かり、ドキドキが加速していくのも止められずにいる。
見惚れていたアンラの喉がコクンと動き、口にふくんだ酒が喉を通ったのだろう。
ギシッと寝台にされた木箱に手をつき、上ってくると俺の太ももにまたがった。
ずり上がるように体を動かすたびにギシッ、ギシッと軋ませ、前屈みに俺の顔の横と、肩へ手を置いた。
そして耳の先まで真っ赤に染めたアンラの顔が近付いてきた。
近付いてくると、ふっと飲んだのはワインのようで、アンラから果物の香りが俺の鼻に届き、アンラのアゴを伝っていた赤い雫がポタリと俺のアゴに落ち、喉元を濡らして滑り落ちる。
俺はそっと頬に手を伸ばし、濡れた唇を親指で拭うと、そのまま銀色でサラサラとした髪の毛を手櫛で撫で上げる。
「……アンラ」
「ケント……」
鼻と鼻が触れ合い、アンラの真っ赤な目には俺しか映っていない。
そのまま見つめ合いさらに近付き、閉じていくアンラの目蓋にあわせ――――――目を閉じた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふあっ、朝か」
「にゅふふ~、もっと寝てようよ~」
『もうお昼ですよ、宿の方が何度も来てましたから、早く起きて連泊を知らせないと迷惑がかかります』
『ほら、ケント様、アンラ、今、扉の外に宿の方が来ました』
コンコンとダーインスレイブが言った通り宿屋の人が来たようだ。
『お客さーん、そろそろ本当に起きてくれないと開けますよー、お客さーん』
「すまねえ! 今起きた! すぐ下りてくから飯を頼む!」
そう言って飛び起きようとしたが、アンラが抱きついてっから首だけ扉に向け、聞こえるように大きめの声で返事をした。
「えぇ~、しかたにゃいなぁ~」
『はいよっ! すぐに準備できますんで、お早く』
そう言って扉の前を遠ざかる気配が、階段を下りていった。
「寝すぎたみてえだな、アンラ、起きんぞ」
「ふぁぁ、あ~い、おはようケント」
「ああ、おはようアンラ、んっ」
「んっ、にゅふふふ! よーし今日も頑張るぞー!」
二人で同時に起き上がり、身支度をすませる。
昨日ドワーフのおっさんに仕立て直してもらった服だ。
アンラと同じように黒のズボンに白いシャツ、黒ベスト、そしてベルトを締めて解体用のナイフを革で造られた鞘に挿し込む。
今まではリュックに入れていたが、激しい動きでも簡単には落とさねえように造られていて、これが中々格好良い。
アンラには無いがまだ造っている最中の物もあるそうで、後日もらいに行く。
後、俺はこれももらったんだが新しいリュックにクロセルを取り付け背負えば準備完了だ。
「よし、クローセ、ソラーレ行くぞ」
ソラーレを寝台の上から掬い上げ肩へ。
クローセはぴょんと寝台からソラーレとは逆の肩に飛び上がり、リュックの蓋を鼻先で器用に開けてスルリと入っていった。
「私も準備完了」
「おっし、忘れ物は無いな、行くぞアンラ」
そろって部屋を出た俺達は、階段を下り一階の食堂についた。
朝昼兼用になったごはんを腹に詰め込んで、同じ部屋のまま数日の連泊を頼んで金を先払いしておく。
宿を出た俺達は、冒険者ギルドに向かい、依頼をすませることにする。
ギルドの受け付けに行くと昨日いなかったおっさんが、カウンターの奥にいるのが見えた……あれだな。
「すまねえ、ギルドマスターに手紙を渡す依頼を請けている者だ。ギルドマスターはいるか?」
受け付けの姉ちゃんに依頼書と手紙を見せ話しかけると、俺達の顔を見て少し驚いた顔をしたがすぐに後ろ向き、ギルドマスターを呼んでくれた。
「ギルドマスター、王都からのお手紙が届いています。署名が必要なものなので、こちらに来てください」
呼ばれて立ち上がったのはおっさんじゃなく、どう見ても俺達と変わらねえ女だ。
「な、なんでしょうか、王都からと聞こえたのですが」
「ギルドマスター、こちらの方が王都からお手紙を持ってきてくれました」
ソイツがおどおどと『あっ、後ろ通ります』『きゃっ、ご、ごめんなさい大丈夫ですか?』と職員の後ろを通るたびに、一人ずつことわりを入れ、なにもないところでつまずくと、謝りながらカウンターまでやってきた。
「ひゃい! あ、ごめんなさい、ありがとうございます。こちらですか、お預かりいたします」
スッと手紙をカウンターの上で滑らせ差し出すと、何が怖かったんか分かんねえが、ビクッとした後そっと手を伸ばして手紙を受け取った。
「ねえねえ大丈夫? 小さい子だけどギルドマスターだよね? みんなに苛められてたりするの? ビクビクしすぎだもん」
「ああ、もしそうなら俺が苛める奴をボコボコにしてやるからよ」
「いえいえいえいえ! こ、これは私の性格でして、昔からこんな感じですから、誰にも苛められていません! 皆さんとても優しいですからボコボコしないでください!」
バタバタと手を振り首を横に振ってはいるが、信じられねえよな。
だがまわりを見ると、ギルドマスターを見る目がまるで子供を見守る親みてえな顔をして『よし、頑張れギルマス』『大丈夫ですよギルマスちゃん、私達が見守ってますから』と、どうも言ってることは本当の事みたいだ。
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