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第3章
第50話
しおりを挟む模擬戦を終えて、応接室のような所へ俺とロゼッタと紅葉は通された。
目の前には、さぞ嬉しそうな顔でジェラールが座っている。
「いや~それにしてもいい魔法を見せてもらったよ!」
「そ、そうですか…。」
相変わらずのテンションの高さについていけない。ちなみにさっき戦った4人は、医務室にいる。まぁ気絶して寝ているジャンを、3人が見守っていると言った方が正しいのかもしれないが。
「それで、アリアちゃんから聞いたけど魔石を換金すればいいんだっけ?」
「あっ、はい。できれば今から王都を散策するので早めにお金を貰いたいとおもって…。」
そう言うとジェラールは少し考えるようなそぶりをみせた。
「いや、僕のレイ君のために換金してあげたい気持ちは山々なんだけどね、1000匹分でしょ?流石に全部は無理かな…うちのギルドが破綻しちゃうからね。」
「別に今日王都で使う分があれば困らないので、数体分でも構いませんよ?」
「ありがと!それならすぐに終わらせるから、さっき試合したところに出してくれれば20分くらいで終わると思うよ。」
「わかりました、では外に…」
「はい、ストップ。」
立って出て行こうとする俺の腕を、ジェラールは瞬時に掴んだ。
「その前に…君の名前を聞かせてもらおうかな?」
「え、レイですけど…」
「違う違~う。フルネームでお願い。」
やはりバレていたか。王都を散策するだけだから、貴族の者だと一目でわかるような服は選ばなかったつもりだが、ジェラールにはバレていたらしい。
「…はぁ、レイ・トライデント・レストリアですよ。」
名前を教えると、ジェラールは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの笑顔になった。
「なるほどねぇ。レイ・トライデント・レストリア君かぁ…。わかった、改めて今日は良いものを見せてくれてありがとね!あと、それからこれ。」
ジェラールは3枚の紙を取り出して、レイの目の前に並べた。
「これは…!」
「ここのギルドの登録申請書だよ。そちらの2人の分もあるけどどうかな?」
「でも俺まだ8歳ですよ…?」
「今回は僕のワガママに付き合ってくれたお礼って事で。全てのギルドが加入するギルド協会ってのがあるのは知ってるよね?僕はそこの会長も務めてるからね。今回は特例だよ~?」
「あ、そういえば前にアリアさんが言ってたような…。」
「それに君みたいな優秀な冒険者は少しでも多い方がいいからね。正直レイ君なAランクあたりから始めてもいいんだけど、流石にそれは他の奴がうるさそうだから一応Fランクから始めてもらうよ。でも僕が緊急の依頼とかで呼んだやつとかなら参加していいよ。それとそちらの2人は強いのはなんとなくわかるけど、登録はする?」
「もちろんです。私はマスターについて行きますから。」
「妾もじゃ!」
「そっか、じゃあここに簡単に書いてくれるかな。」
とりあえず名前や年齢、使える属性魔法の種類など必要最低限の事を記入すると、ロゼッタと紅葉が小さな声で話しかけてきた。
「マスター、年齢はどうしましょうか?」
「妾もじゃ。どうすればいい?」
「あら、あなたは1万歳とでも記入すればいいんじゃないですか?」
「そらなら貴様は1億歳とでも書いてお…」
「やめなさい。」
「なにか事情があるなら書かなくてもいいよ?最悪名前だけわかればいいし。本当はダメだけど、レイ君の家に一緒にいる様な人が悪い人なはずないしね。これも特別だよ~?」
この人、耳もいいとかストーカーなんじゃないかと思ったが、ありがたく2人はお言葉に甘えていた。記入を終えると、ジェラールは嬉しそうに紙を眺めた。
「レイ君とロゼッタちゃんともみじちゃんね。じゃあこれで通しておくから、換金ついでにカードをアリアちゃんからお金と一緒に受け取ってね。じゃあこれからよろしくね、冒険者のレイ君☆」
そう言うとジェラールは足早に部屋を出て行った。
「じゃあとりあえず外に行こうか?」
「了解です、マスター」
「妾は腹がへったぞ。」
「もうちょっと我慢してな。」
そう言って俺たちも部屋を後にした。
魔物を2体ほど出し終えて、ギルドのテーブルで軽く昼ご飯を食べた。紅葉は「肉が食べたいのじゃ~」と駄々をこね結局、2回ほどお代わりをしたのでリゼからもらったお金はすっかり無くなった。
「全く…酒癖も悪く大食らいとはマスターに迷惑しかかけていないですね。」
「なんか言ったか鉄娘。貴様こそ食わないからそんな貧相な胸になるのじゃ。」
「…別に私はこれで動きやすいからいいです。それにマスターはあなたのようなだらしない胸より、私のような手に収まるサイズの方が好きだと思いますし。」
「えっ?!」
「そんな事はあるまい、男は巨乳好きが多いと聞く。それならレイも妾のような立派な胸が好きに決まっておる!」
そう言って紅葉は胸を堂々と突き出した。
(なんでいつもこの2人胸で勝負してんだ…。なんか貧○神が!を思い出すな…。)
懐かしさに浸っていると、テーブルをダンッ!と叩く音がした。2人がレイに鋭い視線を向けていた。
「マスターはどっちなんですか?」
「もちろん妾じゃろ?」
「えっと…どっちでもいいか…」
「「どっちですか(なんじゃ)!!」」
「え~っと…」
ちょうどその時、受付の方からアリアさんに呼ばれる声がした。
「じゃあ行こっか!」
「あ、マスター!逃げられてしまいました…。」
「行く時に一瞬妾の胸を見ておった。これは妾で決定じゃな!」
2人は終始殺気を放ち、にらみ合っていた。
「レイ君、換金終わったよ。」
「ありがとうございます!」
「ミノタウロス・フェンリルの二体を換金させてもらったから、合計で金貨70枚と大銀貨100枚になるわ。これなら白金貨を渡すより、王都で使いやすいでしょ?」
ちなみにこの国のお金には7種類ある。
1番下から、銅貨・大銅貨・銀貨・大銀貨・金貨・白金貨・ミスリル貨となっており、銅貨が前世でいう10円と同じ価値で大銅貨・銀貨…上がるにつれて100円、1000円と10進法になっている。つまりミスリル貨は一千万という事だ。
紙幣が使われていないのは、金貨なら他の国に行っても溶かせば、価値が変わらないからだそうだ。(リゼが言ってた。)
(えーっとつまり…八百万?!あの宝くじのオレンジ色のクジラみたいなキャラが、吠えながら潮吹きまくるんじゃないのか?)
「そ、そんなにいいんですか?」
「むしろこれでも少ないのかもしれないけど、神獣を換金した前例がないのと、経済的にコレがうちの限界だってギルドマスターが。少ない様なら一応ギルドマスターに聞いてみようか?」
「いやいやいや、これで充分です!むしろ多く感じるくらいです!」
前世で普通の高校生だった俺としては、いきなり八百万の大金が入るとなると少し怖い。
「なら良かったわ。それとこれ!3人のギルドカードよ。」
アリアは机に3枚の緑色のカードを並べた。
(うぉぉ!異世界初のギルドカード!やっと手に入った!)
「3人とも実力はあるけど、一応決まりとしてFからのスタートになってるからね。まぁランクなんてすぐにあげられるんでしょうけど。あ、ランクの上げ方は覚えてる?」
「ダンジョンがあるんでしたっけ?」
「そう。でも全員1ヶ月に1回までしか入れないから、ダメなら次の月になるけど貴方達なら大丈夫だと思うわ。じゃ、このギルドのメンバーとしてこれから頑張ってね!」
「はい!今日はありがとうございました!」
こうして俺は念願のギルドカードをゲットしてギルドを出た。
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