異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第8章

第134話

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それからは、特にこれといった事件もなく平和に暮らしていた。

姉のエマと学園で会ったり、ガジルスと戦いまくったりと学園生活はそれなりに楽しんでいた。 
商会も売り上げはたくさんだし、魔道士団も稽古をつけたり報告書の処理など前よりはるかに効率よくこなして行った。


そんな生活も、すでに2ヶ月が経とうとしていた。

「よし、ちょっと休憩だな。」

「おっけー。」

昼休み、俺とガジルスはいつも通り組手をして休憩に入っていた。マリアが水を持ってきてくれて、シオリはガジルスにポーションを渡した。
俺がマリアと話している間、ガジルスはボーッとどこかを見ていた。視線の先をおうと、廊下を青髪の美人が歩いていた。

「おやおや、ガジルス先輩ったら恋するお年頃ですかな~?」

「そうなんですか?ガジルスさんの意中の相手はどなたなんですか?あ、レイ君はダメですからね。」

「なんで野郎くさい展開になってんだよ…」

呆れる俺の前で、ガジルスは顔を赤くしていた。なんだかこんな反応は新鮮だ。

「ち、ちげぇよ!」

「でも、そのわりには顔が赤くなってはります…。」

「テメェは余計な事言うんじゃねぇ!」

「ひ、ひいっ!す、すんまへん!」

「まぁまぁ。あの女の人でしょ?」

「あれは…この前来た保健の先生ですね。ガジルスさんはああいった方がお好みなんですか?」

「いや別に好きとかじゃねぇよ…ただ。」

「「ただ?」」

俺とマリアは興味津々になり、食い気味に聞いていた。ちゃっかりシオリも顔を赤くしながら、聞き入っている。

「この前行った時、美人だと思っただけだよ…。」

「「きゃー!」」

「うるせぇっ!」

「レイ君、大変です!恋が、恋の予感が!」

「お嬢様、ヤバイですわ!あのガジルス様に恋のハリケーンが!いいですわよ、ヤンキー生徒×保健室美人教師…最強の組み合わせですわ!」

「やかましいんだよテメェら!だいたいレイはその口調なんだ!」

「あの先生の名前はなんて言いはるんですか?」

「たしか…ソフィア先生でしたね。」

「なるほど、ガジルス先輩は巨乳が好きと。なんかどこぞの副団長みたいだな。」

「んなとこ見てねーわ。」

他愛ない会話をしながら、俺たちは教室に帰った。


ソフィアは、廊下の窓から中庭の4人を眺めていた。1人は要注意人物の魔道士団副団長・レイ、もう1人は王国第二王女のマリア、そしてさらに副団長の息子ガジルスとなかなか濃いメンツだった。

「あれがカシス様が言っていた、レイ・トライデント・レストリア…。確かに強力そうね。」

ソフィアは1人つぶやき、保健室へと歩いて行った。


 

深夜、王都の端にある一軒家の地下部屋に数人の人物が座っていた。円卓を囲むように、6人ほどの人物がいる。

「全員揃ったか。オルガン、頼む。」

「かしこまりました。」

真ん中の男性が告げると、隣に座っていた初老の男性・オルガンが立ち上がった。

「皆さん確認済みかと思いますが、1週間後に作戦を決行いたします。今回は我々『リスト・スプレッド』のメンバー以外にも、協力者がいますのでかなり大掛かりなものになります。」

「そんなの知ってるって~。正直俺っちがいれば、こんな国落とすのよゆーっしょ。」

机に足を乗せて踏ん反り返っていた若い男性が、笑みを浮かべながら返した。だが、すぐ隣に座っていた女性がその足を叩いた。

「スピルタ、すぐにその汚い足を下ろしなさい。カシス様に失礼よ。」

「へいへい、相変わらずソフィアちゃんはギルマスが大好きだねぇ~。」

「2人ともやめておけ。それに、今回はそう簡単に進められるとは思っていない。」

「お、おでたちだけじゃ危ないって事でさ?」

ソフィアの隣に座っていたダイが、おろおろしながらカシスに尋ねた。

「魔道士団にやっかいなガキがいるらしくてな。まぁそれはあの男に任せておけばいいのだが…問題は王族たちだな。」

「何かあったんですか?」

「情報によれば、そのガキが造った魔道具をつけているらしい。俺たちのいない時に行った作戦では、他の闇ギルドのメンバーが指一本触れられなかったそうだ。」

「へぇ~、そりゃ大した子供がいたもんすね~。」

「………私はお腹がすいた。」

スピルタの言葉に、ダイの隣でずっと黙っていた女性が初めて口を開いた。

「おいおい、今日初めての言葉がそれかよ?なんだ、あの日か?」

スピルタのノーデリカシーな言葉に、ソフィアは頭を思いっきり叩いた。

「サイテー…。作戦前に、あんたを凍らせてあげようかしら?」

「あはは、ソフィアちゃんに凍らせられるなら嬉しいかもね。でも…」

スピルタはヘラヘラ笑っていたが、突然真顔になり殺気を放った。ダイだけが、その怖さに震えている。

「ちょっとオイタがすぎるんじゃねぇかな~。なに、犯されたいの?」

「あんたね…。」

「ほっほっほっ。御二方、お静かに。」

険悪な2人に、オルガンが割って入った。口は笑っているが目は笑っておらず、その迫力に2人とも縮こまった。

「とりあえず、全員もう一度資料に目を通しておけ。残り1週間、準備は怠るなよ。」

カシスの一言で、その日の会議はお開きになった。
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