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第3章
ニコライside ①
…やらかした。
エイタから憤怒の感情が流れ出して、それは殺意に変わった。俺は慌てて遮断をかけて家に帰った。
俺の予想が合っていたとしてもエイタはマクシム様には会った事がないと言っていたから…マクシム様の兄である侯爵家当主様の顔を見ても血縁者だとは気付かないと思っていたんだ。
どう言う仕組みなのか分からなかったがエイタの持っていた銀色の小さな板の中にその絵はあった。
柔かに穏やかに笑う3人の絵。
エイタの感情が波打っていて…どう話せばいのかわからない。そもそも上手く話せる気がしなくて…強く抱きしめた。
…そしたら抱いてと言われ…侯爵家に行くから間違いがあってはいけないから強い抑制剤を飲んでいて上手く勃たなくて …いつもみたいに!って言われたけど…ごめん!
咄嗟に睡眠魔術をかけた。
誰か…
「何か、ございましたか?」
……バレンティンが立っていた。
自分で解決する方法が見つけられない。
でも言ってしまったら奪われてしまうかも……
「ニコライ様。バレンティンは信頼に足りませんか?」
……信頼? …充分だ。
エイタを抱いたままソファーに座り直してエイタから聞いた話と俺のやらかしを全て話した。
バレンティンは …深い溜息をついた。
「まず、これをお飲みください。抑制剤の解剤です。」
そう言って渡されたものを俺は急いで飲み込んだ。
「沈黙が誤解を招いております。本当に兄弟揃って言葉が足りないのですよ。何故2人とも番に愛の言葉を囁く事が出来ないのですか?
…私がお話しさせていただきます。エイタ様の睡眠を解除してください。」
……わかった。
「エイタ。ごめん。起きて。」
睡眠導入の術を解いて …起きたエイタの目に …疑いが…俺は何をしたんだ?
目を伏せては駄目だ …逃げるな。
エイタが……身を捩る様にして俺の腕の中から離れた。
匂いが…触るなと。
フードケースに入れてあったお茶をバレンティンが、手早く3人分サーブして
「エイタ様。バレンティンと少しお話をいたしましょう。 …失礼して座らせていただきます。」とエイタの向かいの椅子に座った。
「ニコライ様からお話は伺いましたが、少々確認を。
…エイタ様の亡くなられた親御様のお名前はジュリ様。会われた事のないもう1人の親御様はマクシム様とおっしゃる。そしてジュリ様が亡くなられたのは6年前でエイタ様はマクシム様の色を受け継いでいらっしゃる。ここに間違えはありませんか?」
バレンティンを真っ直ぐみているエイタの目に感情がない。
「…ないです。」
聞いた事も無いエイタの冷たい声。
「侯爵家の当主様。今日お会いになられましたね?
彼にはマクシム様とおっしゃる弟君がいらっしゃっいました。容姿はとても似ていらっしゃいました。色味がもう少し薄く…そうですね、エイタ様のお色と近いでしょうか。
マクシム様は20年程前、外砦の森…エイタ様とニコライ様がお会いになった西領の近くの森で人族の雄型の雌のジュリ様と出会い…番いました。
ジュリ様はひと月もしないうちに消えてしまわれ、マクシム様は6年前の討伐中に亡くなられました。
魂魄の共有をされていおりましたのでジュリ様もその時に亡くなられておられると思います。」
エイタが息を飲んで…その目が見開かれた。
「…随分と似た様な話だと思いませんか?この話は、こちらの貴族であれば皆知っている事話でございます。…ジュリ様が居なくなられた時に大変な騒ぎでしたので。」
バレンティンがお茶をひと口飲んでから
「この件には、一般には秘された事がございます。この家ではお館様と私しか知りません。
…この世界に召喚された聖女様の話は、まだご存知ではございませんよね?長くなりますので詳細は今は割愛させていただきますね?
この世界は欲に溺れ大罪を犯しました。
その罪を忘れない様に…力のある雄の番となる者は、神によって隠される様になりました。
獣人にとって番を隠される事は絶望よりも深い…希望が全く見えない状況です。
マクシム様の番様も神によって隠されておりました。
……マクシム様は禁忌を犯し彼方の世界から番であるジュリ様を強引に引き寄せ…手に入れました。」
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