33 / 47
第3章
ニコライside ②
「…禁忌」
「竜の卵を使用されたと聞いております。と言っても命の入っていない不完全なものだったそうです。
…藁をも縋る思いだったのでしょうね。
不完全であったとしても竜の卵ですから…術は成功しました。…神によってジュリ様は彼方の世界に戻されてしまいましたが。」
「…余計な事を」そう呟いたエイタが、お茶に手を伸ばした。俺も喉が渇いていたが…お茶を飲む気にはなれなくて…じっとエイタの動きを目で追っていた。
その後、マクシム様が夢で魔女に遭い『其方の神は痛みを知らぬ未熟者か!神らしく沈黙を守れば良いならばものを!』と神を罵倒し、魔女が何を対価にしたのかは教えてもらえなかったが、魔女が逝く時まで待つなら…2人を其方に送る事が出来ると言われ、マクシム様は無事に2人を受け取れる様に術式を組んでいたと話した。
……エイタは黙ってそれを聞いていた。
エイタを見ていたバレンティンが俺を見て…
「ニコライ様は、エイタ様を侯爵家に奪われるのではないか?と思われているのですよね?それならば、心配は無用です。
万が一、マクシム様が先に逝かれる事があった時にはエイタ様は番の近くに導かれる様に術が組まれておりました。
そもそもマクシム様とジュリ様が番われた事でニコライ様とエイタ様の縁が生まれたのです。
エイタ様が侯爵家でお育ちになっていたなら…声を掛けるのも難しいほど身分差があったとしてもです。」
バレンティンは嘘は言わない。
それでも口を吐いてしまう言葉。
「…絶対に?」
「私は話さない事はあっても嘘は申しません。」
エイタがやっと俺の顔を見てくれた。
「エイタ様が彼方の世界から来られたと聞き、もしや?と思っておりましたがエイタ様はお祖母様の話はされても親御様のお話はされませんでしたし、根掘り葉掘り聞く話でもございませんので確認が遅れました。お詫び申し上げます。」
「…僕の話を信じるの?」
バレンティンが苦笑した。
「人族が狼を相手に何か策略を練るのは難しい話です。
それに山羊はとても目がいいんです。些細な事も見逃しません。エイタ様、ジュリ様は愛されておりましたよ。」
「…うん。」
……こんな時に俺は何を思っているのか。
エイタの頬を伝い顎から滴る涙が綺麗で…引き寄せて舐めとりたい。
「エイタ様は望まれて生まれたのですよ。」
「…うん。」
バレンティンに目配せされた。
抱きしめていいのかな?
そっとエイタを抱きしめた。
エイタが …身体を預けてくれて 涙が俺のシャツに滲みていく…
バレンティンが立ち上がって自分の分の茶器を片付け
「夜も遅くなりましたので、私は下がらせていただきます。ニコライ様は明日はお休みですのでお食事はフードケースに入っております。後はお二人でお話されてください。」
エイタが俺の腕の中にいる。
バレンティンが閉めかけたドアを開けて、さも今思い出したかのように白々しく。
「ああ。そうそう。ニコライ様は侯爵家に行く際に強い抑制剤を飲まれております。そろそろ解剤が効いてくる頃だと思われます。抱かないのではなく抱けなかったんですよエイタ様。ニコライ様は遮断をお忘れなく。」
バレンティンは出て行った。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて
碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。
美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。
第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。