名前を呼んで

栗鼠

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第3章

瑛太side ①




……ニコライの腕の中は安心する。

「抑制剤飲んでたんだ。知らなかった。」
「…言わなくてごめん。エイタの匂いは凄くいい匂いだから…あそこで勃ったらマズイと思って。」

こんな事ですらちゃんと言葉にしないと…伝わらない。…今更樹里が愛されていたって言われても簡単に納得出来ない …だから。

「…ニコライ、僕は …僕は愛が信じられない。
信じたいけど「いつか」「どうせ」って思ってる。だから…疑う僕を受け入れて…信じられない僕を許して。」

優しく抱きしめてくれるニコライが好き。
ここは僕の場所だって…そう思える。
…この気持ちは嘘じゃない。

ニコライが俯いていた僕の顎を指で上に上げて…目が合った。

「俺も…言えなかった事がある。」
「うん。教えて。」

2人の目の中に…拒絶されたらどうしようって不安の色が見えて…僕達は …似てるね。

「…人族に狼の執着は理解しづらいと思って…怖がらせたくなくて言えなかった。
…俺はエイタを誰にも見せたくないし閉じ込めていたい。…どうしたら俺に繋ぎ止められるんだろうって、いつも考えてる。共有紋を入れたから共に逝けるけど、残ったエイタの身体を誰かが触るのかと思うと気が狂いそうで…共に逝きたいのに…出来る事なら血のひと垂らしも残らず俺の腹に入れてしまいたい。
さっき…エイタの涙を吸い取った、俺のシャツに嫉妬してる。」

「…そんな風に思ってくれてるんだ…嬉しい。」

溢れた涙を舐め取られて…その後お互いの服を脱がせあって貪りあった。
…世界に2人だけになってしまえばいいのに。


何日か後、ニコライが僕をマクシムのお墓に連れて行ってくれた。

見覚えのあるマークが入った墓石。…樹里が肌身離さず持っていたカフスボタンに入ってたマーク。
墓石に『魂はジュリと共に』って書いてあるって教えてくれた。

スリングから出してもらった。
ひと言…言ってやらなくちゃ気が収まらない。
「おい…くそ野郎。樹里バカだから…すぐ「いいよぉ」って許すんだろうけど僕は許さないから。…今度は離すなよ。」

2人はもう生まれ変わっているのだろうか。
再会出来るのを待っているんだろうか。
…心は繋がっているだろうか。
樹里が笑っていたら …いいな。

「ねぇ、もし僕が奪われたらどうしてた?」

だって …僕が始めに会ったのはニコライじゃない。
ニコライの視線がチラッと腰の剣に動いた。
奪われるくらいなら僕を殺してしまうほど僕の事が好き?

「 …ソイツもエイタも殺してしまいたい。でも…エイタに生きていて欲しい …わからない。」

思い通りに出来ない事ってあるよね。
「僕がニコライを殺してあげる。」

ニコライが凄く嬉しそうな顔で「ここだよ」って鳩尾を指差して僕を招き入れるみたいに両手を広げて抱きしめてくれた。

「エイタ愛しているよ。」
「僕も愛してる。」





……え?
ニコライが 僕を 強引に引き離して 片膝をついて……頭を下げた?

振り向いたら虎がいた。

「久しぶりだなニコライ。元気そうで何よりだ。」
「この度は墓参をお許しいただき有難うございます。」

式典の時には、わからなかった揺るぎない存在感。
絶対的な強者 …侯爵家当主。

「そんなに畏まらなくていい。 屋敷には寄らないと聞いたから私が勝手にここに来たのだから。」
「…無礼をお許しください。」

…畏まらなくていいと言われてもニコライの頭が上がる事はなく、この虎も柔和な雰囲気だけどニコライが膝を着き首をたれている事に…何の疑問も抱いていない。

初めて目の当たりにした …抗うことの出来ない身分差。ハッキリわかった事は僕に与えられる選択肢は無いと言う事。

「何から話せばいいのか、私も少し動揺している。」

僕は、まるで石化の魔法でもかけられたかの様に動けなかった。

「…君が …どう聞いたかはわからないが今更何をどう話そうが言い訳でしかない。慢心した弟が強引に番をこちらに引き寄せ、力が足りず囲いきれなかった。…それが事実だ。
辛い思いをさせた。本当に申し訳なかった。」

虎が涙が出るのを堪えるように奥歯を噛み締めるみたいな顔をして…。

「…弟が生前に組んだ陣が少し前に反応したが発動しなかった。時間が経ち過ぎていたからなのか…正確な原因はわからなかった。ただ君がこちらの世界に渡った事だけは知る事が出来た。

マクシムを許すのは難しいのは …わかっている。
ただ知って欲しい…。マクシムも苦しんだんだ。

死に際に、君を愛していると、会いたかったと…ひとり残す事になってすまないと言っていた。
君に宛てた手紙がある受け取ってもらいたい……」

虎が話しているけど …言葉が…僕の中に入ってこない。

「…抱きしめてもいいだろうか?」と言われたけど僕が動けずにいたらグイッと背中が押された。
ニコライ……手が震えている。

侯爵様は僕をそっと抱きしめられて「また会える事を願っている」と言って帰って行った。ニコライは、その姿が見えなくなるまで膝をついて頭を下げていた。



……ニコライは何も言わずに僕を寝室に閉じ込めた。

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