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本編(後編)
248.駄菓子屋でかき氷
2005年8月8日
11時過ぎ。
ふと目を覚ます。ケータイのアラームに起こされないことを久しぶりに感じる。むくりと起き上がる。波の音は聞こえない。当たり前か。
安藤の言った通り、昨夜家に帰った時には0時を回っていた。1週間分の衣類を洗濯機に突っ込み、シャワーを浴びてベッドで横になっていたわけだが、いつのまにか寝てしまっていたようだ。楽しかったけど体力的にはなかなかハードだった1週間、やはり疲れが溜まっていたのかぐっすりと眠ってしまった。
ケータイを見遣る。チカチカと光っている。メールを受信しているようだ。開いて確認したところ、未来からメールを受信していた。今日から両親と共に鹿児島へ帰省しており、戻るのは次の土曜日の夜だそうだ。ということは今日を含めて丸5日間は未来抜きの性活、いや生活だ。どう過ごそう。まぁ、悩むこともないか。最後のビーチで、新しい女ができたのだから。早速電話だ。
「もしもし~。」
「よう紗良、今日から地元戻ったぜ。」
「おかえり~。」
「今日会える?」
「会えるよ~。」
「おっけ、じゃあどこで合流すっかな・・・。」
「駄菓子屋行こ~?」
「駄菓子屋?」
「うん~。私の家の近くにあって~、そこのかき氷食べに行こうと思ってたの~。」
「そうなんだ。いいね、行こう。紗良の家ってどの辺だっけ?」
「"隕石公園"わかる~?」
「あぁ、わかるよ。そこ行けば良い?」
「うん~。」
「じゃあ隕石公園に・・・準備とかあるし13時でいいかな?」
「わかったぁ~。」
13時前。
隕石公園に到着する。この公園は時々玲美と一緒にバイト帰りに寄ったりする。バイト先から俺や玲美の自宅の途中に位置するため、缶カフェオレや缶ビールを買って一緒に飲んでだべったりするのにちょうど良い場所なわけだ。
公園の敷地内に入り、半分埋まった隕石のような半球に登る。隕石公園という通称の元になっているのはいうまでもなくこの半球だ。中は空洞で隠れることができ、上に登ればそれなりの高さで見晴らしがいい。まぁ、この時期は直射日光がきついが。わいわいと遊んでいる子供たちも半球に乗り上げるわけだが、暑いせいか割とすぐに降りてしまう。
隕石の上からしばらく周囲を見晴らしていると、長身にロングヘアの姿が視界に入る。紗良だ。ビーチで会った時はさほど気にならなかったが、いつも色白の紗良の肌がわりと焼けている。地元だとまた見え方が変わるのだろうか。いつもの姿とやや異なることによる違和感はあるが、まぁ夏だし悪くない。
隕石から降り、公園の出入り口に向かう。ちょうど公園に入りかかろうとしていた紗良と合流する。
「よっ。」
「よ~。」
軽い挨拶とともに、軽いキスを交わす。周囲には親子連れがいるがおかまいなしだ。紗良も周りの目を気にするタイプではないので、抵抗なく受け入れる。
並んで歩くこと3分程度、古びた一軒家が並ぶ路地に入る。ここらへんのエリアは何代にもわたって地主連中が住み続けていることもあり、昔から変わらない風景だ。そのうち一つの一軒家の縁側に小さな丸椅子が置かれており、その頭上付近にはこれまた小さな暖簾がある。あれがお目当ての駄菓子屋のようだ。こんなところに駄菓子屋があるなんて知らなかった。俺が昔よく遊びに行っていた駄菓子屋は全て潰れてしまったし、ここは貴重な店だ。
「おばあちゃん~。」
「・・・あら~紗良ちゃん。いらっしゃい。」
「かき氷食べたい~。」
「いつものね~。そちらのお兄さんは~?」
「えっ。あぁ、じゃあメロンのかき氷ください。」
「は~い、ちょっと待っててね~。」
店主のおばあちゃんはゆっくりと立ち上がると、店の奥へと姿を消した。今なら万引きし放題な気がするが、紗良のお気に入りの店のようだし大人しくしておこう。
「こんなところに駄菓子屋あったんだな。」
「そうだよ~。私は昔からよく来てるの~。」
「紗良の家はこの近くなんだ?」
「この路地抜けたらすぐだよ~。」
「そうなんだ。このへんあんまり来ないから知らなかった。」
「このへん駅から遠いからね~。用なかったら来ないよね~。」
「ま、これからは来るかもな。紗良がいるし。」
「うん、来て~。」
「つーか、この辺に住んでるってことは紗良の家系って地主?」
「そうだよ~。私はよくわかんないけど~、地主っていうみたい~。」
「そうか・・・地主っていいよなぁ。」
「そうみたいだね~。」
「紗良の家はでかい一軒家なの?」
「建物はでかいけど~、住む家は小さいよ~。」
「え?どゆこと?」
「1階が店舗で~、2階が家なの~。」
「あ、なるほど、店舗兼住宅ってことね。自分たちで何か店やってるの?」
「今は何もやってない~。昔は呉服屋だったんだけど~、あんまり売れないしね~。」
「そうなんだ。じゃ今はどっか別の店に貸してるの?」
「ううん~、もう10年以上空き店舗のまま~。」
「え、そうなのか。もったいない。」
奥の襖が開き、トレーを手にしたおばあちゃんがゆっくりと戻ってくる。いちごの練乳がけが一つ、メロンが一つ、それぞれ紗良と俺の元へと渡される。
「おばあちゃんありがとう~。はいお金~。」
「あ、いくらですか?」
「200円です。」
「安っ。はい、200円。」
「ありがとうねぇ~。」
紗良と共にかき氷を頬張る。うまい。夏祭りに出てくるような普通のかき氷だが、暑い夏休みに古民家の縁側で、しかも紗良と一緒に食べるというシチュエーションが素晴らしい。
「紗良はいつもいちご練乳のやつ食べてるのか?」
「うん~。昔からこれ~。」
「そうなんだ、うまいよな。」
「冴木はメロンが好きなの~?」
「そうだな、メロンとかブルーハワイ食うことが多いかな。」
「ブルーハワイって不思議だよねぇ~。」
「あぁ。何だよその味、って思うよな。」
「ハワイで作った味なのかな~。」
「どうなんだろうな。まぁ時々食べるけど、うまいよな。」
「そうだねぇ~。」
喋りながらかき氷を食べ終えると、皿をおばあちゃんに戻す。行こうか、と紗良と共に立ち上がる。
「おばあちゃん、また来るねぇ~。」
「はいはい。紗良ちゃん、ほんと大きくなったわねぇ~。」
「そうなの~、背ばっかり伸びちゃって~。」
「彼氏さんも大きいわねぇ~。よくお似合いだわ~。」
「ほんと~?冴木~、お似合いだって~。」
「おっ、光栄だな。」
おばあちゃんに手を振りながら店を後にする。何だか、おばあちゃんの喋り方や雰囲気が紗良によく似ていた。紗良は昔からこの駄菓子屋に通っているようだし、あのおばあちゃんの影響を受けたのだろうか。
11時過ぎ。
ふと目を覚ます。ケータイのアラームに起こされないことを久しぶりに感じる。むくりと起き上がる。波の音は聞こえない。当たり前か。
安藤の言った通り、昨夜家に帰った時には0時を回っていた。1週間分の衣類を洗濯機に突っ込み、シャワーを浴びてベッドで横になっていたわけだが、いつのまにか寝てしまっていたようだ。楽しかったけど体力的にはなかなかハードだった1週間、やはり疲れが溜まっていたのかぐっすりと眠ってしまった。
ケータイを見遣る。チカチカと光っている。メールを受信しているようだ。開いて確認したところ、未来からメールを受信していた。今日から両親と共に鹿児島へ帰省しており、戻るのは次の土曜日の夜だそうだ。ということは今日を含めて丸5日間は未来抜きの性活、いや生活だ。どう過ごそう。まぁ、悩むこともないか。最後のビーチで、新しい女ができたのだから。早速電話だ。
「もしもし~。」
「よう紗良、今日から地元戻ったぜ。」
「おかえり~。」
「今日会える?」
「会えるよ~。」
「おっけ、じゃあどこで合流すっかな・・・。」
「駄菓子屋行こ~?」
「駄菓子屋?」
「うん~。私の家の近くにあって~、そこのかき氷食べに行こうと思ってたの~。」
「そうなんだ。いいね、行こう。紗良の家ってどの辺だっけ?」
「"隕石公園"わかる~?」
「あぁ、わかるよ。そこ行けば良い?」
「うん~。」
「じゃあ隕石公園に・・・準備とかあるし13時でいいかな?」
「わかったぁ~。」
13時前。
隕石公園に到着する。この公園は時々玲美と一緒にバイト帰りに寄ったりする。バイト先から俺や玲美の自宅の途中に位置するため、缶カフェオレや缶ビールを買って一緒に飲んでだべったりするのにちょうど良い場所なわけだ。
公園の敷地内に入り、半分埋まった隕石のような半球に登る。隕石公園という通称の元になっているのはいうまでもなくこの半球だ。中は空洞で隠れることができ、上に登ればそれなりの高さで見晴らしがいい。まぁ、この時期は直射日光がきついが。わいわいと遊んでいる子供たちも半球に乗り上げるわけだが、暑いせいか割とすぐに降りてしまう。
隕石の上からしばらく周囲を見晴らしていると、長身にロングヘアの姿が視界に入る。紗良だ。ビーチで会った時はさほど気にならなかったが、いつも色白の紗良の肌がわりと焼けている。地元だとまた見え方が変わるのだろうか。いつもの姿とやや異なることによる違和感はあるが、まぁ夏だし悪くない。
隕石から降り、公園の出入り口に向かう。ちょうど公園に入りかかろうとしていた紗良と合流する。
「よっ。」
「よ~。」
軽い挨拶とともに、軽いキスを交わす。周囲には親子連れがいるがおかまいなしだ。紗良も周りの目を気にするタイプではないので、抵抗なく受け入れる。
並んで歩くこと3分程度、古びた一軒家が並ぶ路地に入る。ここらへんのエリアは何代にもわたって地主連中が住み続けていることもあり、昔から変わらない風景だ。そのうち一つの一軒家の縁側に小さな丸椅子が置かれており、その頭上付近にはこれまた小さな暖簾がある。あれがお目当ての駄菓子屋のようだ。こんなところに駄菓子屋があるなんて知らなかった。俺が昔よく遊びに行っていた駄菓子屋は全て潰れてしまったし、ここは貴重な店だ。
「おばあちゃん~。」
「・・・あら~紗良ちゃん。いらっしゃい。」
「かき氷食べたい~。」
「いつものね~。そちらのお兄さんは~?」
「えっ。あぁ、じゃあメロンのかき氷ください。」
「は~い、ちょっと待っててね~。」
店主のおばあちゃんはゆっくりと立ち上がると、店の奥へと姿を消した。今なら万引きし放題な気がするが、紗良のお気に入りの店のようだし大人しくしておこう。
「こんなところに駄菓子屋あったんだな。」
「そうだよ~。私は昔からよく来てるの~。」
「紗良の家はこの近くなんだ?」
「この路地抜けたらすぐだよ~。」
「そうなんだ。このへんあんまり来ないから知らなかった。」
「このへん駅から遠いからね~。用なかったら来ないよね~。」
「ま、これからは来るかもな。紗良がいるし。」
「うん、来て~。」
「つーか、この辺に住んでるってことは紗良の家系って地主?」
「そうだよ~。私はよくわかんないけど~、地主っていうみたい~。」
「そうか・・・地主っていいよなぁ。」
「そうみたいだね~。」
「紗良の家はでかい一軒家なの?」
「建物はでかいけど~、住む家は小さいよ~。」
「え?どゆこと?」
「1階が店舗で~、2階が家なの~。」
「あ、なるほど、店舗兼住宅ってことね。自分たちで何か店やってるの?」
「今は何もやってない~。昔は呉服屋だったんだけど~、あんまり売れないしね~。」
「そうなんだ。じゃ今はどっか別の店に貸してるの?」
「ううん~、もう10年以上空き店舗のまま~。」
「え、そうなのか。もったいない。」
奥の襖が開き、トレーを手にしたおばあちゃんがゆっくりと戻ってくる。いちごの練乳がけが一つ、メロンが一つ、それぞれ紗良と俺の元へと渡される。
「おばあちゃんありがとう~。はいお金~。」
「あ、いくらですか?」
「200円です。」
「安っ。はい、200円。」
「ありがとうねぇ~。」
紗良と共にかき氷を頬張る。うまい。夏祭りに出てくるような普通のかき氷だが、暑い夏休みに古民家の縁側で、しかも紗良と一緒に食べるというシチュエーションが素晴らしい。
「紗良はいつもいちご練乳のやつ食べてるのか?」
「うん~。昔からこれ~。」
「そうなんだ、うまいよな。」
「冴木はメロンが好きなの~?」
「そうだな、メロンとかブルーハワイ食うことが多いかな。」
「ブルーハワイって不思議だよねぇ~。」
「あぁ。何だよその味、って思うよな。」
「ハワイで作った味なのかな~。」
「どうなんだろうな。まぁ時々食べるけど、うまいよな。」
「そうだねぇ~。」
喋りながらかき氷を食べ終えると、皿をおばあちゃんに戻す。行こうか、と紗良と共に立ち上がる。
「おばあちゃん、また来るねぇ~。」
「はいはい。紗良ちゃん、ほんと大きくなったわねぇ~。」
「そうなの~、背ばっかり伸びちゃって~。」
「彼氏さんも大きいわねぇ~。よくお似合いだわ~。」
「ほんと~?冴木~、お似合いだって~。」
「おっ、光栄だな。」
おばあちゃんに手を振りながら店を後にする。何だか、おばあちゃんの喋り方や雰囲気が紗良によく似ていた。紗良は昔からこの駄菓子屋に通っているようだし、あのおばあちゃんの影響を受けたのだろうか。
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