うわさのRoll〜Remembering the days of Rape〜

冴木譲

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本編(前編)

26.恥ずかしい、知られたくない

 2004年6月12日

 約束の時間通りに杏理の家に着いた。杏理の部屋に上がってまだ10分も経っていないが、すでに俺たちは結合している。

「あっ・・・はぁっ・・・んっ・・・」

「杏理・・・いく・・・。」

「んっ・・・。」

「・・・ふう・・・。」

「もう・・・いつも早いんだから。」

 いつもなら早漏を罵られ言い返すが、今日は早い方が好都合だ。このあと環が控えている以上、少しでも早く出して、インターバルを長く取った方がいい。

 たんまりと精子が入ったコンドームを外し、杏理の腹の上に放り投げる。

「ちょっと!ゴミ箱に捨ててよ!」

「結んどいて。こぼれたら困るだろ。」

「いい加減自分でやってよ!もうっ!」

 文句をいいながらも杏理はコンドームを固結びする。最近これは杏理の仕事だ。

 お互いに性器を拭き、布団に寝転がる。

「杏理さぁ。」

「んー?」

「他の男とセックスしたいとか思ったことある?」

「えっ、ないよ。何、急に。」

「いや、人によってきっと身体とかやり方とか全然違うだろうからさぁ。気になったりするのかなと思って。」

「うちは別に自分からエッチしたいとか思わないし・・・好きでもない人とこんなことしたくない。」

「そういうもんかぁ。」

「・・・なに?譲は他の子としたいわけ?」

「そりゃあ紗良みたいな美人とやりたいよ。」

「ちょっと!浮気したら別れるからね!」

「俺が浮気なんてすると思うか?」

「・・・チャンスはありそうだしっ。」

「え?俺、紗良いけるかな?」

「紗良は無理!友達とそんなの絶対無理!てゆーか誰が相手でも浮気はダメっ!」

「あはは、そりゃそうだ。」

「絶対だからねっ。」

「・・・もしさ、杏理が誰かの浮気相手になったりしたら、杏理はどう思うのかな。」

「何!?うちが浮気すると思ってんの!?」

「あーいやいやそうじゃなくてさ。杏理が今フリーだとするじゃん?それで例えば紗良とか里奈に彼氏がいたとするじゃん?それで、その彼氏ともし杏理が浮気しちゃったとしたら、杏理は紗良とかにその話できる?」

「そんなのできるわけないじゃん!だいいちしないし!」

「それが半ば強引にだったとしたら?」

「えっ?どういう意味?」

「紗良とかの彼氏が、力尽くで杏理のこと襲ったとするじゃん。理由はどうあれ、そいつとセックスしたことになるわけじゃん。そういう状況だとしても、紗良とかには言わないの?」

「想像したら気持ち悪い・・・。・・・でも、たぶん言えない。」

「言ってみれば犯罪被害者だぜ?それでも言わないの?」

「だって恥ずかしいし、知られたくないもんそんなこと。」

「警察にも言わないの?」

「そんなに冷静でいられないと思う。」

「そっかぁ・・・恥ずかしい、知られたくない、か・・・。」

「なんでそんなこと聞くの?」

「あー・・・聞いた話なんだけどさ、うちの高校でレイプされたって噂のやつがいるんだよ。でもそいつ、警察とかには言ってないらしくてさ。なんでだろと思って。」

「えー・・・かわいそう・・・。」

「傷つくのかな?」

「あたりまえだよ!一生もんの傷だよ!」

「そうかぁ・・・よかったなぁ杏理は。いつも優しくて気持ちいいセックスで。」

「まぁ、レイプよりは多少ましかな・・・。」

「おい!多少ってなんだよ!」

「早いし小さいし、別に満足しないよーだっ。」

「おまっ・・・早いはともかく小さいとまで言うか!?つーか他の男のやつ知ってんのか!?」

「さぁー、どうでしょう?」

「杏理ー!」

 その後、杏理の下手な料理を一緒に食べたり、いつものノリで過ごしつつ、気づけば時刻は14時近く。もうそろそろ出なければならない時間だ。

「じゃ、そろそろ行くわ。」

「はーい。でも珍しいね、親となんか用事なんて。」

「まぁ、たまにはな。また連絡するよ。」

「うんっ。」

 玄関で杏理とキスを交わし家を出る。いつもなら出てすぐに左に曲がるのだが、今日は右だ。これから向かうのは自宅じゃない、環の家だ。10秒ほど歩くと、大きな公園に面した通りに出る。この時点ですでに、環の家が見えている。もう10秒も歩けば到着だ。万が一、まだ遥が家にいたら厄介なので、先に環にメールしてみよう。

『もう着くんだけど、家の中は環ひとりだよね?』

 環の家に向かい歩いている途中に、返信が届く。

『うん、そうだよ~⭐︎』

 メールを確認した頃には、すでに環の家の目の前にいた。早過ぎて驚くだろうか。まぁいい。チャイムを鳴らす。うっすらと階段を降りるような音が聞こえる。次第にその足音はこちら側に近づき、ドアが開く。
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