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本編(前編)
43.小物に理想は難しい
2004年6月28日
普段よりも少し早く登校した俺は、真っ先に数学科の教員室に向かった。扉のガラス越しに廊下から中を覗くと、椿の姿を確認できた。俺は軽くノックをした上で、中に入る。
「おはようございます。」
「ん?冴木か、おはよう。早いな。」
「相談というか知っといてもらいたいことがあって。」
「おう、なんだ?」
「関が香織に嫌がらせしてる。」
「あー・・・加藤からも聞いたよ。」
「そうなんだ。それで、何か手は打ったんですか。」
「んー・・・まぁちょっと別件があったんだけど、その時に併せて注意はしといたよ。だからもう大丈夫だと思うけど。」
「本当に?嫌がらせってエスカレートするから、しっかりやめさせないと危ないと思うけど。」
「まぁ・・・あいつも懲りたと思うから、大丈夫だと思うよ。もしまたなんかあったら教えてよ。」
「じゃあ、せめて目は光らせておいて。下駄箱に生ゴミ入れるくらいならまだマシだけど、これが暴力とかレイプとかになったら大変だし。」
「おま・・・そんな極悪人、この学校にはいないと思うぜ?」
目の前にいるから言ってんだよ、とは言えない。
「あいつがほんとに懲りてんの?さっき言ってた別件って、もしかして万引きのことですか?」
「あれ・・・お前、そのこと知ってんのか。それは内緒にしてやってくれ。」
「内緒って、内々で処理したんですか。」
「内々っていうか、関自身が否定してたからな。まぁ、あんまり詳しいことは言えないからさ。」
「ふーん。」
「ま、ぶっちゃけ関に対するクレームってたくさん来てるからよ・・・担任としては、むしろあいつが孤立しないように、っていうのも考えてやんないといけないからさ。」
「・・・なるほど、そういう感じね。」
「冴木も関とはいろいろあんのかもしんないけど・・・しばらくは様子見てやってくれないか?なっ。」
1時限目の授業が終わり休憩時間。俺は早速加藤の席に向かう。
「加藤、関が香織にちょっかい出してること先生に言ってくれたんだ?」
「あぁ、譲くん。すぐ言ったよ。見てらんないし。」
「ありがとう。香織も嬉しいと思うよ。」
「いやそんな、照れるよ。」
「ところでメールで言ってた件だけど、あいつマジで万引きしたんだ。」
「たぶんね。あいつはやってないって言い張ってたけど。」
「どういう状況だったの?」
「いつも通りにアイス買って、店出ようとしたら何が音がしたんだよ。それで店員が駆け寄ってきて、バッグ調べられてさ。そしたら関のバッグから商品が出てきたんだよ。」
「関のバッグから?あいつがやった以外にないじゃん。」
「そうなんだけどさ、あいつは俺たちの誰かが関のバッグに入れたんだろとか騒ぎ始めてさ。もともとあいつの味方なんていないから、お前が自分で万引きしたんだろって、そもそも万引きしようかなとか言ってただろって、みんな突き放してさ。俺もだけど。」
「なるほどねぇ。日頃の行いが出るねぇ。」
「それであいつだけが店の奥に連れて行かれて、そのあとどうなったのかは知らないんだけどさ。」
その後は恐らく店が学校に連絡し、椿が迎えに行ったということか。商品は返却し平謝りすることで、その場は収まったのだろう。濡れ衣の関は当然否定していたはずだが、すでに各所からクレームが来ている生徒の言葉には信憑性など無いし、そもそも潔白を証明する決定的な証拠もない。どっちつかずの状況となれば、後は日頃の行いがものを言う。
2時限目の授業も終わり、トイレに向かう。小便器にて用を足していると、偶然にも関と鉢合わせした。関は俺の隣一つ空けた小便器の前に立つ。いつもならこの時点で憎まれ口を叩いてきてもおかしくないのだが、関は無言で用を足す。椿の言っていたことも満更ではないようだ。
「お前、万引きしたんだって?」
「!・・・それ、黙ってて。頼むよ・・・。」
「別に万引き如きでそんなびびんなくても良いと思うけど・・・まぁ、わかったよ。」
用を足し終えた俺は、ひと足先にトイレから出る。どうやら、余程の教育ママに育てられているらしい。正直、万引きでここまで萎縮してくれるとは思いもしなかった。結果的に作戦は成功したのかもしれないが、呆気なさすぎる。万引き程度でこのびびり様なら、当初の理想だった環強姦案が実現したら一体どうなっていただろうか。是非とも、実現してみたいものだ。
3時限目。授業を受けながらメール文を打つ。環強姦案で思い出した。そういえば土曜日に環とゴタゴタがあったのだった。さっさと環との関係に結論を出したい。
『学校終わったら俺んち来て。』
さて、環は来るだろうか。来たとして、どの様な心持ちだろうか。まぁ、家に来さえすれば、こちらのものだが。
普段よりも少し早く登校した俺は、真っ先に数学科の教員室に向かった。扉のガラス越しに廊下から中を覗くと、椿の姿を確認できた。俺は軽くノックをした上で、中に入る。
「おはようございます。」
「ん?冴木か、おはよう。早いな。」
「相談というか知っといてもらいたいことがあって。」
「おう、なんだ?」
「関が香織に嫌がらせしてる。」
「あー・・・加藤からも聞いたよ。」
「そうなんだ。それで、何か手は打ったんですか。」
「んー・・・まぁちょっと別件があったんだけど、その時に併せて注意はしといたよ。だからもう大丈夫だと思うけど。」
「本当に?嫌がらせってエスカレートするから、しっかりやめさせないと危ないと思うけど。」
「まぁ・・・あいつも懲りたと思うから、大丈夫だと思うよ。もしまたなんかあったら教えてよ。」
「じゃあ、せめて目は光らせておいて。下駄箱に生ゴミ入れるくらいならまだマシだけど、これが暴力とかレイプとかになったら大変だし。」
「おま・・・そんな極悪人、この学校にはいないと思うぜ?」
目の前にいるから言ってんだよ、とは言えない。
「あいつがほんとに懲りてんの?さっき言ってた別件って、もしかして万引きのことですか?」
「あれ・・・お前、そのこと知ってんのか。それは内緒にしてやってくれ。」
「内緒って、内々で処理したんですか。」
「内々っていうか、関自身が否定してたからな。まぁ、あんまり詳しいことは言えないからさ。」
「ふーん。」
「ま、ぶっちゃけ関に対するクレームってたくさん来てるからよ・・・担任としては、むしろあいつが孤立しないように、っていうのも考えてやんないといけないからさ。」
「・・・なるほど、そういう感じね。」
「冴木も関とはいろいろあんのかもしんないけど・・・しばらくは様子見てやってくれないか?なっ。」
1時限目の授業が終わり休憩時間。俺は早速加藤の席に向かう。
「加藤、関が香織にちょっかい出してること先生に言ってくれたんだ?」
「あぁ、譲くん。すぐ言ったよ。見てらんないし。」
「ありがとう。香織も嬉しいと思うよ。」
「いやそんな、照れるよ。」
「ところでメールで言ってた件だけど、あいつマジで万引きしたんだ。」
「たぶんね。あいつはやってないって言い張ってたけど。」
「どういう状況だったの?」
「いつも通りにアイス買って、店出ようとしたら何が音がしたんだよ。それで店員が駆け寄ってきて、バッグ調べられてさ。そしたら関のバッグから商品が出てきたんだよ。」
「関のバッグから?あいつがやった以外にないじゃん。」
「そうなんだけどさ、あいつは俺たちの誰かが関のバッグに入れたんだろとか騒ぎ始めてさ。もともとあいつの味方なんていないから、お前が自分で万引きしたんだろって、そもそも万引きしようかなとか言ってただろって、みんな突き放してさ。俺もだけど。」
「なるほどねぇ。日頃の行いが出るねぇ。」
「それであいつだけが店の奥に連れて行かれて、そのあとどうなったのかは知らないんだけどさ。」
その後は恐らく店が学校に連絡し、椿が迎えに行ったということか。商品は返却し平謝りすることで、その場は収まったのだろう。濡れ衣の関は当然否定していたはずだが、すでに各所からクレームが来ている生徒の言葉には信憑性など無いし、そもそも潔白を証明する決定的な証拠もない。どっちつかずの状況となれば、後は日頃の行いがものを言う。
2時限目の授業も終わり、トイレに向かう。小便器にて用を足していると、偶然にも関と鉢合わせした。関は俺の隣一つ空けた小便器の前に立つ。いつもならこの時点で憎まれ口を叩いてきてもおかしくないのだが、関は無言で用を足す。椿の言っていたことも満更ではないようだ。
「お前、万引きしたんだって?」
「!・・・それ、黙ってて。頼むよ・・・。」
「別に万引き如きでそんなびびんなくても良いと思うけど・・・まぁ、わかったよ。」
用を足し終えた俺は、ひと足先にトイレから出る。どうやら、余程の教育ママに育てられているらしい。正直、万引きでここまで萎縮してくれるとは思いもしなかった。結果的に作戦は成功したのかもしれないが、呆気なさすぎる。万引き程度でこのびびり様なら、当初の理想だった環強姦案が実現したら一体どうなっていただろうか。是非とも、実現してみたいものだ。
3時限目。授業を受けながらメール文を打つ。環強姦案で思い出した。そういえば土曜日に環とゴタゴタがあったのだった。さっさと環との関係に結論を出したい。
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