きの

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1人目 柳川美奈

「もしもし?わたしだけど。あ、寝てた?ごめんね」
ケータイ片手に話す少女の声は全くもって申し訳なさそうな響きが無い。
「まあ、まあそんなに怒んないでよ」
少女は電話の向こうの人間に楽しそうに話す。
「あんたはきっと新聞とか、ネットとかしないからまだ知らないかもだけどさ。うちの高校やばいらしいの!」
少女の言う通り、彼女の通う高校では事件が起きていた。それは。
「なんかねー。女子寮の方で殺人があったとか。でさ、最悪な事に、その事件のせいで寮が閉鎖されちゃって。で、今実家にいる訳。今から会える?」
どうやら、事件の話をする為に電話をしていた訳ではないようだ。
「えー。知らないよ。別に近くで起きた事件じゃないし。でも、友達が同じ部屋だったっけ?」
少女は少し考えると、深刻な顔に変わった。
「うん。待って。どう考えても、犯人って同じ部屋の人だよね。考えたら。だって、私の高校の寮はうち側から鍵がかかるの。だったら、人が殺されたんなら内側に居た人しか、有り得ないよね?」
少女の声は段々と掠れていく。
「だったら、私の友達は犯人かもしれないってこと?だったら......」
ケータイの向こう側から怒鳴り声が聴こえた。その声の主はどうやら少女を落ち着かせるために言ったようだ。
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