私たちの試作機は最弱です

ミュート

文字の大きさ
98 / 191
第十一章

作戦開始-05

しおりを挟む
 城坂聖奈は、自身用に配備させた秋風の高機動パックを装備した上で、60㎜突撃機銃とCIWS二門の実弾装填と、そしてダガーナイフ及びレーザーサーベルの安全装置解除を行いつつ、ガントレットと睦へ通信を行い、状況確認に徹していた。


「つまり、通信妨害を受けている、という事で良いのですね?」

『その通りだ。妨害範囲は山岳地帯内のみ。だがヒヨッコ共の安全を確認しようにも、レーダーやセンサーも阻害されてしまう。一種のECCMだとは思うが』


 ECCMは、Electronic Counter-Counter Measures……対電子対策の略語で、現在においてはEP……Electronic Protection、電子防護が一般的ではあるが、聖奈や織姫には通じるので良しとした。


「彼らを放っておいたままではいられません。私が出ます」

『完熟訓練もまだだが、行けるか?』

「行けるか行けないかじゃない。行くんです」


 ハッチ閉鎖と共にシステムチェックを全て終わらせ、実弾装填に時間がかかっている兵へ「遅いよ何やってんの!」と喝を入れながら、機体の起動を完了させる。


『姉ちゃん!』


 雷神より入る通信を聞き届けながら、聖奈は笑みと共に言葉をかける。


「大丈夫よ。姫ちゃんたちは、そこで大人しく待ってなさい」


 機体と格納庫機材を繋げるケーブルを無理矢理抜き、そのまま機体を走らせ、地を這うように機体を僅かに滑空させる。

 こういう場合、無駄に空を駆けるよりは、地に沿って移動した方が空気抵抗が少ないという判断からだ。

  通信が阻害された山岳地帯の場所へは数キロほどあるが、しかしADという兵器にとって数キロという距離はそほど離れた距離ではない。

 到着は数分もかからないとした聖奈の駆る秋風だったが――
  

  そんな彼女の眼前に、一機のADが飛来し、着地し、そのツインアイを発光させ、聖奈機を睨んだ。

 一度機体を止め、その上で飛来したADを観察する。


「アルトアリス型ね」


 彼女の言う通り、その機体はこれまで確認されていたアルトアリス型と、ほとんど同系統の機体デザインと配色をしていた。

  紺色の機体に、八頭身の機体。

  だが特徴的なのは――限りなく武装という武装が、見当たらなかったことだ。

  まるで、雷神のように、手ぶらで、何も持たずに。

 しかし、それは背部スラスターと電磁誘導装置を稼働させ、動いた。

  速攻という言葉が一番適しているだろう。

  その機体は真っすぐに聖奈機へと突っ込んできて、それをいなそうと操縦桿を動かした直後には、既に眼前へ迫っていた。


「うそっ」


 急ぎ、機体を後方へ逸らせると、それが幸いした。

  アルトアリスの右腕がその掌底を秋風の顎へ叩き込もうとしていたが、しかし偶然にもそれを避ける事が出来、また掌に搭載されていたパイルバンカーが見えて、それが主武装である事を確認する。


「しかしまぁ、アルトアリス型はパイルバンカー好きね……っ!」


 今度は左腕がコックピットに向けて振られるだろう事が予測できたので、機体を逸らしながら左膝部をアルトアリスに叩き込み、備えていた60㎜突撃機銃を放つ。

  数発着弾するものの、しかし銃弾は跳弾する。

  衝撃自体は与えている筈、と考えた聖奈だったが、しかしそれを物ともしないと言わんばかりに地を蹴ったアルトアリスに、今度はダガーナイフを抜き放ち、振り込もうとした。

  が、その時。

  その機体は、背部スラスターと脚部スラスターを強引に吹かすと、こちらへ跳びかかろうとしていた軌道を変え、そればかりか高速移動を開始。

 聖奈機の背後を取り、そのまま右脚部を起点として左脚部を蹴り込んできた。

 聖奈は冷静に衝撃をコックピット内で耐えつつ、機体を自立させることに意識を集中させる。

 アルトアリスの動きを見た上で冷静にそうした事が幸いし、続いて聖奈機の頭部を狙った腕を払いのけ、再び距離を取って銃弾を食らわせていく。


「あの動き、まるで雷神のよう……いえ、違う。きっとコンセプトが近いのね」


 恐らく対峙するアルトアリスは、機体のコンセプトを極めて雷神に近づけているのだろう。

 その驚異的な運動性能と姿勢制御性能は、雷神に劣るものの、しかし近い所まで来ている。

  機銃のマガジンを外し、替えのマガジンへ換装している間、アルトアリスへ通信を試みる。

 先ほど接触した際に、敵が使用している周波数は割り出しを完了しているので、そこは問題がない。


「聞こえる? 私は城坂聖奈、四六の人間よ」


 返事はない。しかし僅かに呼吸音が聞こえるので、通信が届いていないという事は無いだろう。


「そんな事どうでもいいわよね。けれど言わなきゃならない事がある。その機体は危険よ。一体どれだけのGが貴方の体を」

『う……うううっ』


 うめき声のようなものが聞こえた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

処理中です...