私たちの試作機は最弱です

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第十一章

作戦開始-07

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 時は少々遡る。

  不意に持ち場を離れたアルトアリス試作三号機に、オースィニが思わず「リェータ君?」と声を挙げるも、彼女はそれを聞いていなかった。

  恐らく別行動となっていたズィマーに何かあったのだろうと短く結論付けた彼女は、目の前で未だに機を捨てない秋風を見据えようとした。

  しかし、思わぬハプニングがそこで起きた。

  神崎紗彩子の秋風は、その115㎜滑腔砲の砲塔をオースィニの一号機へ突き付け、ゼロ距離で模擬弾頭を射出したのだ。


「が――ギィッ!!」


 一号機が模擬弾頭の直撃を受け、数メートルほど吹っ飛び、倒れる。

 模擬弾頭とは言っても殺傷能力がないだけで、その衝撃はパイロットへ届いてしまう。

  機内でシェイクされるが、ヘルメットとパイロットスーツ、そしてシートベルトによって衝撃を受け止めた事により、失神や嘔吐などは無かったものの、しかし頭がグラグラと揺れる感覚を覚え、つい怒りを覚えてしまう。


「っ、……私はね、確かに子供を殺したくはない」


 痛む頭を押さえつつ、機体をすぐに起き上がらせたオースィニは、目を細めて操縦桿を握り直し、紗彩子機へ向き直る。


「だが……抵抗する場合は、別だ」


 背負う大型ブレイドを構え、突撃する。

  装填を終了し、今一度放たれた115㎜砲。しかし大型ブレイドの刃で切り弾き、大型ブレイドを放棄した一号機は、サイドアーマーにマウントしていた双剣を抜き、紗彩子機の両腕を斬り落とし、その上で胸部へ右腕部に持つ剣を突き付け、刺し込んだ。


『きゃ――ッ!!』


 接触回線で聞こえる紗彩子の叫び。しかしコックピットに直接刺してはいないので、死んではいないだろうと結論付けたオースィニが、刃を抜く。

  これで任務は終了だ。

  今、こちらへ近づいてくるもう一機の秋風をセンサーが確認。

 しかし一号機も先ほどの模擬弾頭の衝撃で万全な状態ではないとして、オースィニは地面を強く蹴り、その場から離脱した。
  

  **

  
「聖奈が秋風に乗ったか。……今後の計画に、若干の修正が必要だな」

「は、何か仰いましたか?」

「何でもない。それより準備はいいかい?」


 城坂修一は、現在その身に迷彩柄の戦闘服を着込み、肩にかける形でP90を下しつつ、着席する計二十名の歩兵部隊に向け、声を挙げた。


「目標は二名。それ以外に関してはどうしようが構わんが、あくまでスマートに、紳士的にね」


 彼らは現在、輸送機の中にいる。それはリェータやズィマーが乗り込み、現在はオースィニの向かう機ではない。

  山岳地帯とは別方向にある、海水浴の出来そうな砂浜へ着陸したそれが、今ハッチを開き、全員が行動を開始した。

  
  **

  
  突然の通信・レーダー・ソナー、それぞれの阻害から、十分も時間が過ぎていない中、それが判明した。

  海岸より現れた歩兵部隊が確認され、現在プロスパーの有する通信所・娯楽所・訓練所が次々と占拠されている。

  海岸より一番離れた格納庫と指令室はまだだが、このままでは時間の問題としたガントレットは、警報を鳴らした後に、指令室にいる全員――伝令係と秘書、そして睦へと声をかける。


「修一の目標は、恐らく雷神の奪取と思われる。格納庫をすぐに閉鎖し、白兵戦準備を進めさせろ!」

「本当に、そうでしょうか?」


 ガントレットの言葉に、僅かにではあるが、表情と言葉を濁す睦。


「それ以外何が」


 そんな彼女へ語る言葉の途中で、ガントレットも彼女の心意を理解し――冷や汗を流す。


「まさか、君か?」

「……恐らく、ですが」


 頷く睦。デスクから一丁のグロックを取り出し、ホルスターへ入れた後、睦の手を握り、指令室から退室したガントレット。

  首元にある通信機の電源を入れ、通信を試みるも、応答はない。通信障害の範囲を広げたのだろうと短く結論付けた彼は、睦を小さな倉庫へ入れて鍵をかけた後、扉越しに声をかける。


「必ずここから出ない事だ。わかったな」

『分かって、います』


 睦は、自身がレイスに――修一に狙われている理由を知り得ていた。

  ガントレットも同じく。

  だからこそ、こうしたやり取りがある。

  けれど――睦はそれでも、歯がゆく思うのだ。

  こんな時に力無く守られている自分に、腹が立ってしまうのだ。


「やぁ。久しぶりだね、ガントレット」


 そんな彼の前に、三人の兵士を連れて、一人の男が立ち塞がる。

  ガントレットは男に向けてグロックを突き付けようとしたが、しかしその前には男が連れて来た兵士がライフルを構えていたので、歯を噛みしめながら手を上げる。

 後にグロックを地面に置くと、兵士の一人が近づき、グロックを蹴って手の届かない場所へ弾く事で、ガントレットを真に丸腰へ変えた。


「シュウイチ……ッ!」

「こうなるように仕組んだとは言え、君らしくないな。たかが二十人ぽっちの部隊に後れを取るとは。引退を考えた方がいい」


 男は、城坂修一だ。今の彼は戦闘服を着込んでいるものの、着方は若干だらしなく、ガントレットはフンと鼻で笑う。


「確かに仕組まれたよ。連日の襲撃や今回の騒動は、全てムツミをさらう為の布石だった、というわけか」

「少し違うがね。四六が属する前から連日に渡りテロ組織をけん引したのも、先日のリントヴルムとヴィスナーの襲撃も、今回三人の学生を襲わせたのも……全ては確かにこの為さ。

 消耗した君たちは陸地の警備を薄くせざるを得ず、極め付きには通信障害による連携打破。しかし、君ならばこうなる事も予見すると睨んでいたのだが」

「残念な事だが、お前の言う通り私も老けて、思考が鈍ったのかもしれん」


 扉からガントレットを離れさせた一人の兵士が、今半自動拳銃へ持ち替えた上で「扉から離れろ!」と叫び、ドアノブを撃つ。

  放たれた弾丸によって扉が破壊され、睦のいる部屋が開かれた。

 しかし、そこで部屋から一発の銃弾が放たれ、兵士の一人が防弾チョッキに銃弾を受けた。

  結果兵士は部屋へ即座に突入。中にいた睦の持っている小銃を叩き落すと、彼女を拘束した。


「確保しました」

「宜しい。スマートだな」


 修一がガントレットの身体を横切り、部屋へ入室する。身柄を拘束され、地面へ組み伏せられている睦へ、微笑を浮かべた。


「睦ちゃん、大きくなったね」

「それは……嫌味、ですか……っ!?」

「そんな事は無い。四六を大きくし、僕のいない雷神プロジェクトを推し進めたその手腕、流石だと言わざるを得ない。君は体を成長させる事は出来ずとも、心を確かに成長させた」


 睦を捕らえる兵士へ視線で指示すると、彼は頷き備えていた睡眠剤を睦の首元に押し付け、それを注入した。

  意識を落とす睦を抱きかかえた事を確認した修一は、彼から半自動拳銃を頂戴した上で、ガントレットの両足へ一射ずつ、放つ。


「ぐ、ぅうっ!」


 膝から倒れるガントレットの姿を見届けた後、修一はその場から去っていく。


「ま、待てシュウイチ……ッ! 貴様は……貴様は、フウジンを……っ!」

「ああ――君の考案した風神は、我々レイスが使わせてもらう。

 止めたいというのなら、全力で来い、ガントレット」


 それだけを言い残して、修一たちが去っていく。

  ガントレットは、痛む足を堪えつつ、先ほど蹴り飛ばされたグロックを握り、構えたものの……その時には、既に修一たちの姿は、無かった。
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