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第十一章
作戦終了ー06
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今、まさに自分の両手を見据えたのどかが、口を開く。
「そっか……あの時アタシ、人を殺したんだね」
「ノドカ、それを悔いる必要は無い。戦場で人を殺める為に出撃した者が、全員決めねばならん覚悟だ」
「分かってんだけど……なんか、胸の中、ポッカリと穴が開いてるカンカク」
苦笑し、自身の胸に手を当てたのどかは、映像に映る織姫を見て、何か思ったように、言葉を発する。
「でも姫ちゃんはさ、こんなカンカクとずっと、戦ってたんだよね」
「そうだ。奴はその感覚に逆らい、一人でも多く殺す事が出来る戦術をいくつも考案し、それを成した」
「凄いよ。立派だよ。――でも、尊敬は出来ない」
「その通りだ。凄い事をした。立派な事をした。だが、それは尊敬されていいものではないのだ」
「ああ……アタシ、きっとそんな大人になりたくないんだ。だからこそ、雷神プロジェクトが面白そうって、思えたんだろうね」
そこで耐え切れないと言わんばかりに、明久が立ち上がり、今まで必死に閉じていた口を開き、背筋を伸ばして、叫ぶ。
「大佐、無礼を承知で聞きますっ!」
「なんだアキヒサ」
「殴ってもいいですか!?」
「……構わんぞ」
「――ッ!!」
椅子に腰かけるガントレットに向けて、明久は可能な限り勢いをつけて、殴る。
椅子から転げ落ち、床に倒れるガントレットを見据え、明久はそれでも落ち着かない様子で、ふーっ、ふーっ、と鼻息荒く、彼を睨む。
遠藤と聖奈が彼の腕を止めるものの、しかし明久はその拘束を振りほどこうと足掻きつつ、声を張り上げて叫ぶ。
「何でアンタが止めなかったんだ!? そんな子供に育っちまったら、殴ってでも止めて、抱きしめてでも止めて、そんな事をする必要は無いんだと、諭すのが大人だろうが、親だろうがっ!!」
「ああ――その通りだ」
「オレと姫は友達だッ! 友達が今までそんな辛い思いをしていた事に気づいてやれなかったオレも、相当大馬鹿だけど……それを止める事が、アンタにはできたのに、何で、何で……ッ!!」
膝を折り、涙を流す明久。
その姿を見据え、乱れた服装を正し、殴られて切った唇を拭ったガントレットが、そんな彼を抱きしめる。
「お前も、優しい男だ」
「オレにじゃなくて、それを姫にやってやれよ……っ」
「私は、奴の力を利用したんだ。私にそんな事は許されない。
だがお前たちは、そうして私のような古い人間が持つ価値観ではなく――人が人を殺す事がいけない事だと、子供だからこそ、知っているんだ。
オリヒメには、そんな子供時代を、与える事が出来なかった。
だからこそ……お前たちのような【優しい友達】や【本当の家族】が、オリヒメに本当の価値観を、教えてやって欲しい」
立ち上がったガントレットが、全員の目を見据える。
全員は、何か言いたげな視線をしていたものの、しかしそれは、彼がこれより聞く言葉への答えで、決着が付くだろう。
「ムツミはいない。理由はまた後に予想を述べるが、シューイチに連れ去られたという事実は変わらない。
サエコは負傷し、ミハリも、コズエも連れ去られた。
これから、君たちも同じような目に遭うかもしれん。
君たちを必ず守れると、約束はできない。
だからこそ、聞かねばならない。
それでも、雷神プロジェクトという夢物語を信じるか?
その夢物語を叶えたいと……シューイチを打倒し、それを成すと、それでもなお、君たちは思うのか?」
そう思う者は立ち上がれ、と。
そういうと、全員が時間をかけずに立ち上がる。
「リョージ、いいのか?」
「僕には今まで、その覚悟が無かったのやもしれません。けれど、そんな覚悟をする必要のない世界を、作り上げたい」
「ノドカ、いいのか?」
「アタシ、難しい事はよくわかんないよ。けど、それでも……もう人は、殺したくない。こんなカンカク、もう誰にも、抱いてほしくない。
だから、アタシ戦うよ。一人でも死なない世界を、作る為に」
「ヤスヒコ、いいのか?」
「オレに出来る事なんか限られている。戦う事が出来ないオレには、ここにいる全員より弱いオレには、一体何が出来るって、言われても良い。
けど、それでも――これはオレが、本当にやりたい事だと、もう知っているから」
「アキヒサ、いいのか?」
「姫は大切な友達だ。んでもって、ここにいる全員も、オレが守りたい大切な友達だ。
操縦技術が未熟だっていい。運が良いだけのゲン担ぎだって言われても構わない。
友達を守るのに、それ以上の理由なんか、いらない」
「セイナ、いいのか?」
「アタシは今まで、力がある筈なのに、その力を使ってこなかった。貴方から姫ちゃんを取り上げる為に出来る事はあったのに、それをしてこなかった。
でも、今姫ちゃんは、アタシの腕が届く場所にいる。アタシの胸に抱き寄せられる場所にいる。
アタシは、今度こそ――お姉ちゃんとして、あの子を守ってみせる」
「クスノキ、いいのか?」
「私は――お兄ちゃんが、好き。
だから、お兄ちゃんにどんな過去があろうと、どんな未来が待っていようと、ずっと、隣に居たい。
雷神プロジェクトで成せる未来じゃなくてもいい。ずっと争いの絶えない世界でもいい。
私は、ずっと、お兄ちゃんの隣で、戦いたい」
良し、と。ガントレットは頷き、遠藤へ一枚の書類を渡す。
それは、今後四六の指揮は、霜山睦救出までの暫定措置として指揮官に遠藤二佐を任命する旨の記された書類であった。
「これよりアーミー隊が単独で、先ほどオリヒメが情報を入手したウェポン・プライバシー社に突入し、可能な限り情報を取得する。
その間、君たちは日本へ戻り、秋風の補給をし、次の作戦に備えてくれ」
皆が頷き、それに良しとガントレットも頷き、部屋を退室した後。
彼は、一人残った藤堂に「ビデオカメラで私を映せ」と命じた。
何の為かを理解せず、ただその命令に従い、ビデオカメラを構えた藤堂。
そして、ガントレットは語りだす。
「オリヒメ、お前が目を覚ました時には、私は次の作戦へ出向いている。直接説明が出来ない事を、どうか許してほしいと思っている。
シモヤマ・ムツミが、何故シューイチに攫われたのか。
それは彼女が――風神プロジェクトによって薬物投与を施された、百人目のテスターだったからだ。
詳しくは――遠藤義明という男が、全てを知っている」
「そっか……あの時アタシ、人を殺したんだね」
「ノドカ、それを悔いる必要は無い。戦場で人を殺める為に出撃した者が、全員決めねばならん覚悟だ」
「分かってんだけど……なんか、胸の中、ポッカリと穴が開いてるカンカク」
苦笑し、自身の胸に手を当てたのどかは、映像に映る織姫を見て、何か思ったように、言葉を発する。
「でも姫ちゃんはさ、こんなカンカクとずっと、戦ってたんだよね」
「そうだ。奴はその感覚に逆らい、一人でも多く殺す事が出来る戦術をいくつも考案し、それを成した」
「凄いよ。立派だよ。――でも、尊敬は出来ない」
「その通りだ。凄い事をした。立派な事をした。だが、それは尊敬されていいものではないのだ」
「ああ……アタシ、きっとそんな大人になりたくないんだ。だからこそ、雷神プロジェクトが面白そうって、思えたんだろうね」
そこで耐え切れないと言わんばかりに、明久が立ち上がり、今まで必死に閉じていた口を開き、背筋を伸ばして、叫ぶ。
「大佐、無礼を承知で聞きますっ!」
「なんだアキヒサ」
「殴ってもいいですか!?」
「……構わんぞ」
「――ッ!!」
椅子に腰かけるガントレットに向けて、明久は可能な限り勢いをつけて、殴る。
椅子から転げ落ち、床に倒れるガントレットを見据え、明久はそれでも落ち着かない様子で、ふーっ、ふーっ、と鼻息荒く、彼を睨む。
遠藤と聖奈が彼の腕を止めるものの、しかし明久はその拘束を振りほどこうと足掻きつつ、声を張り上げて叫ぶ。
「何でアンタが止めなかったんだ!? そんな子供に育っちまったら、殴ってでも止めて、抱きしめてでも止めて、そんな事をする必要は無いんだと、諭すのが大人だろうが、親だろうがっ!!」
「ああ――その通りだ」
「オレと姫は友達だッ! 友達が今までそんな辛い思いをしていた事に気づいてやれなかったオレも、相当大馬鹿だけど……それを止める事が、アンタにはできたのに、何で、何で……ッ!!」
膝を折り、涙を流す明久。
その姿を見据え、乱れた服装を正し、殴られて切った唇を拭ったガントレットが、そんな彼を抱きしめる。
「お前も、優しい男だ」
「オレにじゃなくて、それを姫にやってやれよ……っ」
「私は、奴の力を利用したんだ。私にそんな事は許されない。
だがお前たちは、そうして私のような古い人間が持つ価値観ではなく――人が人を殺す事がいけない事だと、子供だからこそ、知っているんだ。
オリヒメには、そんな子供時代を、与える事が出来なかった。
だからこそ……お前たちのような【優しい友達】や【本当の家族】が、オリヒメに本当の価値観を、教えてやって欲しい」
立ち上がったガントレットが、全員の目を見据える。
全員は、何か言いたげな視線をしていたものの、しかしそれは、彼がこれより聞く言葉への答えで、決着が付くだろう。
「ムツミはいない。理由はまた後に予想を述べるが、シューイチに連れ去られたという事実は変わらない。
サエコは負傷し、ミハリも、コズエも連れ去られた。
これから、君たちも同じような目に遭うかもしれん。
君たちを必ず守れると、約束はできない。
だからこそ、聞かねばならない。
それでも、雷神プロジェクトという夢物語を信じるか?
その夢物語を叶えたいと……シューイチを打倒し、それを成すと、それでもなお、君たちは思うのか?」
そう思う者は立ち上がれ、と。
そういうと、全員が時間をかけずに立ち上がる。
「リョージ、いいのか?」
「僕には今まで、その覚悟が無かったのやもしれません。けれど、そんな覚悟をする必要のない世界を、作り上げたい」
「ノドカ、いいのか?」
「アタシ、難しい事はよくわかんないよ。けど、それでも……もう人は、殺したくない。こんなカンカク、もう誰にも、抱いてほしくない。
だから、アタシ戦うよ。一人でも死なない世界を、作る為に」
「ヤスヒコ、いいのか?」
「オレに出来る事なんか限られている。戦う事が出来ないオレには、ここにいる全員より弱いオレには、一体何が出来るって、言われても良い。
けど、それでも――これはオレが、本当にやりたい事だと、もう知っているから」
「アキヒサ、いいのか?」
「姫は大切な友達だ。んでもって、ここにいる全員も、オレが守りたい大切な友達だ。
操縦技術が未熟だっていい。運が良いだけのゲン担ぎだって言われても構わない。
友達を守るのに、それ以上の理由なんか、いらない」
「セイナ、いいのか?」
「アタシは今まで、力がある筈なのに、その力を使ってこなかった。貴方から姫ちゃんを取り上げる為に出来る事はあったのに、それをしてこなかった。
でも、今姫ちゃんは、アタシの腕が届く場所にいる。アタシの胸に抱き寄せられる場所にいる。
アタシは、今度こそ――お姉ちゃんとして、あの子を守ってみせる」
「クスノキ、いいのか?」
「私は――お兄ちゃんが、好き。
だから、お兄ちゃんにどんな過去があろうと、どんな未来が待っていようと、ずっと、隣に居たい。
雷神プロジェクトで成せる未来じゃなくてもいい。ずっと争いの絶えない世界でもいい。
私は、ずっと、お兄ちゃんの隣で、戦いたい」
良し、と。ガントレットは頷き、遠藤へ一枚の書類を渡す。
それは、今後四六の指揮は、霜山睦救出までの暫定措置として指揮官に遠藤二佐を任命する旨の記された書類であった。
「これよりアーミー隊が単独で、先ほどオリヒメが情報を入手したウェポン・プライバシー社に突入し、可能な限り情報を取得する。
その間、君たちは日本へ戻り、秋風の補給をし、次の作戦に備えてくれ」
皆が頷き、それに良しとガントレットも頷き、部屋を退室した後。
彼は、一人残った藤堂に「ビデオカメラで私を映せ」と命じた。
何の為かを理解せず、ただその命令に従い、ビデオカメラを構えた藤堂。
そして、ガントレットは語りだす。
「オリヒメ、お前が目を覚ました時には、私は次の作戦へ出向いている。直接説明が出来ない事を、どうか許してほしいと思っている。
シモヤマ・ムツミが、何故シューイチに攫われたのか。
それは彼女が――風神プロジェクトによって薬物投与を施された、百人目のテスターだったからだ。
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