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第十七章
戦いの前に-02
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福島第二原発近郊から秋風・ハイジェットパックで飛び、ひとひらへと着艦したオレ、城坂織姫は、まず哨と梢さんを機体から降ろした後、リェータ――ズーウェイと呼ばれる少女の手を引きながら、機体から降りる。
残念な事に、彼女を拘束しなければならない事は、事前に説明している。
彼女は哨と友達になり、彼女が捕らえられている間の支えとなってくれていたと聞いているが、それでも彼女は元々レイスの構成員であり、オレ達の敵だった人物だ。
拘束しなければ、それは秩序を乱す事になるし、彼女もそれは納得している。
拘束と共に、彼女を禁錮室まで連れて行く。しかし彼女は元々風神のパイロットで内臓にダメージを追っているという話から、禁錮室には既に医療スタッフの指示によって受け入れ態勢が既に整っていた。
彼女を禁錮室に残したまま、オレは一度哨と梢さんの元へ。
彼女達は今格納庫にいて、そこにいた清水先輩と共に、量子PCで何やら作業をしているようだった。
「何してんだ?」
「あのズーウェイなんだけど、あの子クスリが無いと生きられないの。その投与剤の製造方法を修一さんから予め貰ってたんだけど、ロックが掛かってて」
「その解除だ。後三分で終わる」
ロックの解除を試みている清水先輩。彼の言う通り、三分弱程の時間を持ってロックは解除され、メモリ内にあったテキストデータをチェック、セキュリティ上問題がない事も確認して、データを医療スタッフに転送した。
「これで、投与剤の作成も出来るだろう」
「清水、ありがとうございます」
「明宮姉が俺に頭を下げる事は珍しいし、その珍事に見合う支払いだと思ってくれ」
「梢さんじゃ解除が出来なかったのか?」
「出来ると思いますが、時間は数日かかったでしょう。生死が掛かっているのならば、少しでも早い解決が好ましいです」
「ありがとうございます、清水先輩っ」
二人の礼に、清水先輩は哨の頭を撫でる。
「よく無事だった」
それだけ言って、先輩は自室へと戻っていく。
今はやるべき作業も無くて、本来は部屋に籠っていた筈だろうに、それでもここまで来てくれたという事は、哨や梢さんの事を心配してくれていたのだろう。
と、そんな時だった。艦内放送でダディの声が聞こえ、オレ達は耳を傾ける。
『オリヒメ、ミハリ、コズエ、至急指令室まで』
目を合わせ、頷きながら指令室へと向かう。
指令室には、治療が上手く言ったのか目を覚ました久世先輩もいて、オレが「無事だったんだな」と安堵した時、彼の下へ駆け出した梢さんが、ペタペタとチェックするように触れた。
「……どうした明宮」
「どうしたじゃありません。生きていますよね、会長補佐」
「生きている。どうやら心配をかけたようだな」
「本当です。貴方が死んでいたら、私は――あのズーウェイさんの事を、まともに見る事は出来なかったかもしれない」
「……あの捕虜となった少女が風神のパイロットか」
久世先輩は、複雑そうな表情を浮かべる。自身を殺しかけた相手が同じ艦にいるという事に、少々気まずさがあるのだろう。
「所でダディ、要件は」
「医療スタッフより通達があった。尋問に影響がある状況ではないので、これよりあの少女――ズーウェイに色々と聞き出さねばならない。お前たちも同席しろ」
「ボク達もですか?」
「理由は二つ。一つは尋問の内容に虚偽が無いか、少なからず接点のあるミハリとコズエが判断してほしいという事」
「もう一つは?」
「ミハリは彼女の容体が気になるだろう」
笑ったダディの言葉に、哨も「はいっ」と元気な声を返す。
「宜しい。思った通り、シューイチはお前たちへ手荒な事はしなかったようだな」
「紳士に扱っていただきましたよ。――ただ、最近は余裕が無さそうでしたが」
梢さんの言葉に、ダディは「だろうな」と頷きつつ、オレと哨、梢さんと久世先輩の四人を連れて、禁錮室へと向かう。
医療スタッフの同伴により、医療ベッドに寝かされたままのズーウェイとの会話が可能となる。
ダディは用意した椅子に腰かけながら、まず聞き出さねばならぬ事を尋ねた。
「シューイチの他に、所属構成員は?」
「元、でも宜しければお答えしますが」
「構わん」
「私、姉・ズーメイ、リントヴルム・セルゲイビッチ・リナーシタの他、オースィニ、ヴィスナー、そしてシモヤマ・ムツミの六名です。
現在は、リントヴルムとオースィニは私達の脱走を手助けした事もあり、脱退しているとは思いますが」
「君はこうして脱走しているが、君の姉は?」
「――そこの、クゼ・リョージが撃った115㎜で、死にました」
沈黙の後に。
久世先輩が一歩前に出て、ズーウェイの前に立ち、彼女に向けて頭を下げた。
「……僕が撃った銃弾で、君のお姉さんが亡くなったというのならば、その責は僕にある」
「やめて。――私は、ミハリに嫌われたくない、蔑まれたくない。だから、貴方に対して、憎しみを抱きたくない」
「しかし、事実なんだろう。であるのなら、僕は謝罪をしなければならない」
「……貴方が謝罪したら、お姉ちゃんは生き返るの? 貴方が死ねば、お姉ちゃんは報われるの? そういう事よ」
「僕は自分が間違っているとは思っていない。しかし、僕の信じて撃った銃弾の軌跡が、どの様に人の命を奪ったか、それを心に刻まない事が、正しいとは思えない。
これは自己満足だ。君にとっては傷口に塩を塗る様な行為だという事も、わかっている。
……それでも、僕は出来る限りの謝罪をしたい」
残念な事に、彼女を拘束しなければならない事は、事前に説明している。
彼女は哨と友達になり、彼女が捕らえられている間の支えとなってくれていたと聞いているが、それでも彼女は元々レイスの構成員であり、オレ達の敵だった人物だ。
拘束しなければ、それは秩序を乱す事になるし、彼女もそれは納得している。
拘束と共に、彼女を禁錮室まで連れて行く。しかし彼女は元々風神のパイロットで内臓にダメージを追っているという話から、禁錮室には既に医療スタッフの指示によって受け入れ態勢が既に整っていた。
彼女を禁錮室に残したまま、オレは一度哨と梢さんの元へ。
彼女達は今格納庫にいて、そこにいた清水先輩と共に、量子PCで何やら作業をしているようだった。
「何してんだ?」
「あのズーウェイなんだけど、あの子クスリが無いと生きられないの。その投与剤の製造方法を修一さんから予め貰ってたんだけど、ロックが掛かってて」
「その解除だ。後三分で終わる」
ロックの解除を試みている清水先輩。彼の言う通り、三分弱程の時間を持ってロックは解除され、メモリ内にあったテキストデータをチェック、セキュリティ上問題がない事も確認して、データを医療スタッフに転送した。
「これで、投与剤の作成も出来るだろう」
「清水、ありがとうございます」
「明宮姉が俺に頭を下げる事は珍しいし、その珍事に見合う支払いだと思ってくれ」
「梢さんじゃ解除が出来なかったのか?」
「出来ると思いますが、時間は数日かかったでしょう。生死が掛かっているのならば、少しでも早い解決が好ましいです」
「ありがとうございます、清水先輩っ」
二人の礼に、清水先輩は哨の頭を撫でる。
「よく無事だった」
それだけ言って、先輩は自室へと戻っていく。
今はやるべき作業も無くて、本来は部屋に籠っていた筈だろうに、それでもここまで来てくれたという事は、哨や梢さんの事を心配してくれていたのだろう。
と、そんな時だった。艦内放送でダディの声が聞こえ、オレ達は耳を傾ける。
『オリヒメ、ミハリ、コズエ、至急指令室まで』
目を合わせ、頷きながら指令室へと向かう。
指令室には、治療が上手く言ったのか目を覚ました久世先輩もいて、オレが「無事だったんだな」と安堵した時、彼の下へ駆け出した梢さんが、ペタペタとチェックするように触れた。
「……どうした明宮」
「どうしたじゃありません。生きていますよね、会長補佐」
「生きている。どうやら心配をかけたようだな」
「本当です。貴方が死んでいたら、私は――あのズーウェイさんの事を、まともに見る事は出来なかったかもしれない」
「……あの捕虜となった少女が風神のパイロットか」
久世先輩は、複雑そうな表情を浮かべる。自身を殺しかけた相手が同じ艦にいるという事に、少々気まずさがあるのだろう。
「所でダディ、要件は」
「医療スタッフより通達があった。尋問に影響がある状況ではないので、これよりあの少女――ズーウェイに色々と聞き出さねばならない。お前たちも同席しろ」
「ボク達もですか?」
「理由は二つ。一つは尋問の内容に虚偽が無いか、少なからず接点のあるミハリとコズエが判断してほしいという事」
「もう一つは?」
「ミハリは彼女の容体が気になるだろう」
笑ったダディの言葉に、哨も「はいっ」と元気な声を返す。
「宜しい。思った通り、シューイチはお前たちへ手荒な事はしなかったようだな」
「紳士に扱っていただきましたよ。――ただ、最近は余裕が無さそうでしたが」
梢さんの言葉に、ダディは「だろうな」と頷きつつ、オレと哨、梢さんと久世先輩の四人を連れて、禁錮室へと向かう。
医療スタッフの同伴により、医療ベッドに寝かされたままのズーウェイとの会話が可能となる。
ダディは用意した椅子に腰かけながら、まず聞き出さねばならぬ事を尋ねた。
「シューイチの他に、所属構成員は?」
「元、でも宜しければお答えしますが」
「構わん」
「私、姉・ズーメイ、リントヴルム・セルゲイビッチ・リナーシタの他、オースィニ、ヴィスナー、そしてシモヤマ・ムツミの六名です。
現在は、リントヴルムとオースィニは私達の脱走を手助けした事もあり、脱退しているとは思いますが」
「君はこうして脱走しているが、君の姉は?」
「――そこの、クゼ・リョージが撃った115㎜で、死にました」
沈黙の後に。
久世先輩が一歩前に出て、ズーウェイの前に立ち、彼女に向けて頭を下げた。
「……僕が撃った銃弾で、君のお姉さんが亡くなったというのならば、その責は僕にある」
「やめて。――私は、ミハリに嫌われたくない、蔑まれたくない。だから、貴方に対して、憎しみを抱きたくない」
「しかし、事実なんだろう。であるのなら、僕は謝罪をしなければならない」
「……貴方が謝罪したら、お姉ちゃんは生き返るの? 貴方が死ねば、お姉ちゃんは報われるの? そういう事よ」
「僕は自分が間違っているとは思っていない。しかし、僕の信じて撃った銃弾の軌跡が、どの様に人の命を奪ったか、それを心に刻まない事が、正しいとは思えない。
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