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第十七章
戦いの前に-04
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ひとひらは現在、AD総合学園港へ後一時間と少しという距離になり、現在は着港準備を進めている。
艦載されるADの整備も並行して行われており、現在は高田重工の整備士だけでなく、帰還したばかりの哨も整備に加わり、高田重工の技師は皆一様に彼女の整備技術を見て、自分たちの整備が彼女に及ばないのか、それを実感している事だろう。
島根のどかは、一人で自身の秋風に搭乗し、胸の中にあるモヤモヤとした感情が何か、それを定めようと必死だった。
「アタシは、もう兵士じゃない」
彼女は、もう昔の様に狂気によって戦う事は出来ない。
自分自身、ADで戦う事に愉しみを見出していた事は分かっている。
しかし、それは戦いによって人が死ぬのだという現実に、しっかりと向き合っていなかったからだ。
これからの戦いも、これまでの戦いも、違う。
戦えば、自分が敵を墜とせば、それだけで敵は死ぬ。
自分が誰かの人生を奪うのだと考えるだけで、胸がはち切れそうになる位辛い。
その感情に、気付いてしまえば、もうおしまいだ。
「島根」
そんな彼女のコックピットに、一人の少年がやって来た。
城坂織姫だ。
「どうしたの、姫ちゃん」
「まだ悩んでんのか?」
「……甘いよね、アタシ」
「そうだな、甘ちゃんだ」
機体のコックピット内に入り込んで、サブシートを展開した彼は、そのまま背もたれに全身を委ね、目を閉じた。
「けど、それは戦場じゃ忘れなきゃいけないけど、こうして戦いにいない時に悩む事は、決して悪い事じゃない」
「……そう、なの?」
「偉そうに言ってるけど、オレはそうじゃなかったんだよ。何時だって戦う時みたいにピリピリして、ADに乗ってない時にも、誰かを殺すシステムになろうとしてた。――けど、そんなの間違いだ。
戦う時以外に悩んでさ、本当にコレで良かったのかなって考える事は、止めちゃいけなかったんだ。
そうして考えずに、ただ戦うだけのマシンになっちまったら、それこそ救いようのねぇバケモノだ。
お前は、バケモノみたいに強い女から、ただ強い女になっただけだ。
お前と同じ戦場に立てるなら、それ以上に頼もしい事なんかない」
そうやって笑う織姫に、のどかは何だか、胸のモヤモヤが、少しだけ晴れた気がした。
完全ではないし、悩まなければいけない事はまだあるけれど、それでも少しは、晴れ晴れとした気分を感じる。
「……ねぇ、姫ちゃん」
「どうした」
「アタシ、姫ちゃんみたいに戦えば、もっと強くなれるかな?」
「? オレみたいってどういう事だ?」
「雷神みたいに戦うの。そうすれば、敵を殺す事は無いよね?」
「いや、無茶言うなよ。あんなの雷神以外に出来るワケ――出来る、なぁ、お前なら」
言葉の途中から笑いが込み上がって来た織姫が、のどかの肩を叩く。
「出来る。お前はオレより強い女だ。秋風でも、雷神みたいに誰も殺さない、でもお前なりの戦いが出来るさ」
「そっか、それならアタシ、強いままだ! うん、何だか、イケる気がする!」
ふん、と両手を胸の前でグッと握り、自分の中で出せた結論に満足したのどかは、織姫に笑顔で「ありがと姫ちゃんっ」と礼をしながら――自分の唇を、織姫の唇と、重ねた。
時間は短かったが、のどかは何だかそれだけで、何か満たされたような感覚に見舞われる。
「AD学園イチバン美少女の、ファーストキス、姫ちゃんにあげるねっ」
「なあ、皆キスしたがるけど、これ何の意味があるんだ?」
「へ?」
「神崎も楠もオースィニって奴もそうだけど、キスになんか意味でもあるのか?」
「……あ~、姫ちゃんはもーちょっと、色んな事覚えた方がいいねぇ」
「よくわかんねぇ。――ま、お前がスッキリできたなら、いいか」
織姫は立ち上がり、最後に笑みだけを浮かべて、秋風のコックピットハッチから飛び降りていく。
「アタシ、これで戦えるっ」
自分が決して、正しい選択をしたとは思えない。
殺し殺されの戦場で、敵を殺さずに自分だけが生き残るなんて、甘い選択なのかもしれない。
それでも、自分自身の気持ちを偽る事無く、戦う事の出来る方法であると、信じている。
「武器なんか無けりゃいいのに。そうやって格闘技だけして戦争すりゃ、皆幸せなのに、どうしてしないんだろ」
何気なく呟いた言葉は、誰に聞かれるわけでもないし、聞かれた所で「バカの言葉だ」と言われると思う。
けれど、それでいい。
「バカだからこそ、真実に近い言葉を言えるのかもしれないよね」
彼女はそれでも信じてる。
そうして平和を志す者がいるだけで、真に平和へと近づく一歩になるのだと。
艦載されるADの整備も並行して行われており、現在は高田重工の整備士だけでなく、帰還したばかりの哨も整備に加わり、高田重工の技師は皆一様に彼女の整備技術を見て、自分たちの整備が彼女に及ばないのか、それを実感している事だろう。
島根のどかは、一人で自身の秋風に搭乗し、胸の中にあるモヤモヤとした感情が何か、それを定めようと必死だった。
「アタシは、もう兵士じゃない」
彼女は、もう昔の様に狂気によって戦う事は出来ない。
自分自身、ADで戦う事に愉しみを見出していた事は分かっている。
しかし、それは戦いによって人が死ぬのだという現実に、しっかりと向き合っていなかったからだ。
これからの戦いも、これまでの戦いも、違う。
戦えば、自分が敵を墜とせば、それだけで敵は死ぬ。
自分が誰かの人生を奪うのだと考えるだけで、胸がはち切れそうになる位辛い。
その感情に、気付いてしまえば、もうおしまいだ。
「島根」
そんな彼女のコックピットに、一人の少年がやって来た。
城坂織姫だ。
「どうしたの、姫ちゃん」
「まだ悩んでんのか?」
「……甘いよね、アタシ」
「そうだな、甘ちゃんだ」
機体のコックピット内に入り込んで、サブシートを展開した彼は、そのまま背もたれに全身を委ね、目を閉じた。
「けど、それは戦場じゃ忘れなきゃいけないけど、こうして戦いにいない時に悩む事は、決して悪い事じゃない」
「……そう、なの?」
「偉そうに言ってるけど、オレはそうじゃなかったんだよ。何時だって戦う時みたいにピリピリして、ADに乗ってない時にも、誰かを殺すシステムになろうとしてた。――けど、そんなの間違いだ。
戦う時以外に悩んでさ、本当にコレで良かったのかなって考える事は、止めちゃいけなかったんだ。
そうして考えずに、ただ戦うだけのマシンになっちまったら、それこそ救いようのねぇバケモノだ。
お前は、バケモノみたいに強い女から、ただ強い女になっただけだ。
お前と同じ戦場に立てるなら、それ以上に頼もしい事なんかない」
そうやって笑う織姫に、のどかは何だか、胸のモヤモヤが、少しだけ晴れた気がした。
完全ではないし、悩まなければいけない事はまだあるけれど、それでも少しは、晴れ晴れとした気分を感じる。
「……ねぇ、姫ちゃん」
「どうした」
「アタシ、姫ちゃんみたいに戦えば、もっと強くなれるかな?」
「? オレみたいってどういう事だ?」
「雷神みたいに戦うの。そうすれば、敵を殺す事は無いよね?」
「いや、無茶言うなよ。あんなの雷神以外に出来るワケ――出来る、なぁ、お前なら」
言葉の途中から笑いが込み上がって来た織姫が、のどかの肩を叩く。
「出来る。お前はオレより強い女だ。秋風でも、雷神みたいに誰も殺さない、でもお前なりの戦いが出来るさ」
「そっか、それならアタシ、強いままだ! うん、何だか、イケる気がする!」
ふん、と両手を胸の前でグッと握り、自分の中で出せた結論に満足したのどかは、織姫に笑顔で「ありがと姫ちゃんっ」と礼をしながら――自分の唇を、織姫の唇と、重ねた。
時間は短かったが、のどかは何だかそれだけで、何か満たされたような感覚に見舞われる。
「AD学園イチバン美少女の、ファーストキス、姫ちゃんにあげるねっ」
「なあ、皆キスしたがるけど、これ何の意味があるんだ?」
「へ?」
「神崎も楠もオースィニって奴もそうだけど、キスになんか意味でもあるのか?」
「……あ~、姫ちゃんはもーちょっと、色んな事覚えた方がいいねぇ」
「よくわかんねぇ。――ま、お前がスッキリできたなら、いいか」
織姫は立ち上がり、最後に笑みだけを浮かべて、秋風のコックピットハッチから飛び降りていく。
「アタシ、これで戦えるっ」
自分が決して、正しい選択をしたとは思えない。
殺し殺されの戦場で、敵を殺さずに自分だけが生き残るなんて、甘い選択なのかもしれない。
それでも、自分自身の気持ちを偽る事無く、戦う事の出来る方法であると、信じている。
「武器なんか無けりゃいいのに。そうやって格闘技だけして戦争すりゃ、皆幸せなのに、どうしてしないんだろ」
何気なく呟いた言葉は、誰に聞かれるわけでもないし、聞かれた所で「バカの言葉だ」と言われると思う。
けれど、それでいい。
「バカだからこそ、真実に近い言葉を言えるのかもしれないよね」
彼女はそれでも信じてる。
そうして平和を志す者がいるだけで、真に平和へと近づく一歩になるのだと。
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