夏の日差しは眩しくて

星山

文字の大きさ
上 下
1 / 1

一目惚れ

しおりを挟む
 夏休み、特にすることのない僕は畑の道を一人で歩いていた。

暑いのは承知のうえで何にもない畑を歩く。

ただ、じりじりと太陽に焼かれながら、

朦朧とする意識と夏の暑さを感じたいという、

単純な動機が僕を歩かせていた。

僕は夏が好きだ。

夏は非日常的なことがたくさんある。

花火大会や夏祭り、海や川などへ出掛けたり

何より長い夏休みがある。

そんなことを考え、ふと空を見上げた。

空には眩しいくらい輝く太陽と

白くてもくもくとした入道雲

僕は思わず見とれてしまった。

綺麗だなぁ。
そう口にすると近くで同じように感嘆の声をあげる声がした。

すぐ近くには麦わら帽子の似合う美しい少女がいた。

その子は白色のワンピースをヒラヒラとさせ、

艶のある美しい長い髪を耳にかけていた。

白い素肌は涼しげで、
まるで僕とは別世界の住人のように見えた。

僕は一瞬でその子に恋をした。

「あ、あの...」

僕は思わず声をかけてしまった。

しかし、次の言葉が続かない。

彼女は不思議そうな顔を僕に向けるが、

僕は恥ずかしくて目をそらしてしまった。

女の子に顔を見られるのは何だか照れくさい。

「暑いですね。」

彼女は僕に優しく微笑み話しかけてくれた。

心臓がドキドキする。

たぶん暑すぎるせいで

一種の夏の魔法にかかったのだろう。

きっとそうだ。僕は自分に言い聞かせた。

「好きです...」

僕は変なことを口走った。

おい、今何て言った。え、嘘だろ...

いきなり告白って...俺の馬鹿野郎。

自分でも驚きを隠しきれない。

「...私も好きです。」

「え...」

僕は彼女に告白した。

そして、彼女にも告白された。

これはつまり、両思いだった。

夏の日差しが眩しくて、

僕たちは恋に落ちてしまった。

僕の夏は、まだはじまったばかりだ。


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...