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出会い
しおりを挟む「かずき、もう出れる?」
「うん」
僕は空っぽになった部屋でお気に入りのゲーム機を片手に持っていた。小学二年生に上がるタイミングで、僕は引っ越しをする事になったのだ。
「おうちにお別れ言おうね」
お母さんがそう言いながら僕の肩に手を乗せた。
「今までありがとうございました」
幼い僕は家に向かって頭を下げた。
そして、大きな家を見送りながら僕たちは新しい街へと出発した。
「今から行く所はどんな所?」
僕はワクワクしていた。
「きっといい街よ、お友達も沢山できるわ」
その明るい声とは裏腹に助手席に座るお母さんの顔は真顔だった。
車の中でゲームをしながら、何時間走ったか分からないけど僕はいつの間にか眠っていた。しばらくして目を覚ましたが、外はすっかり暗くなっていた。
「もう着く?」
まだ眠い目を擦りながら聞いた。
「着くわよ、もう起きといてね」
僕は変な体勢で寝ていたのもあって、首が少し痛かった。
小高い丘の住宅街にある家に着き、車は車庫に入れた。僕はゲーム機を持って車を降りると、お母さんと手を繋いで新しい家に入った。
「わぁー!前の家より広いね!」
僕はすぐにこの家が気に入った。
「そうでしょう。明日からお母さん少し忙しくなるから朝になったらお散歩でもしておいで」
「え?学校は?」
「まだ春休みが一週間あるわよ」
「やったあ!」
「今日はもう遅いから寝ましょう」
「うん」
僕は疲れていたのかその日は早めに眠りについた。
翌朝七時頃に目が覚めると、リビングがある一階に降りた。
「お母さん、おはよう」
「おはよう。朝ご飯作ってるからね」
「どこか行くの?」
「昨日言ったでしょ?色々手続きをしないといけなくて忙しいの。夕方には帰るから、お昼ご飯はお父さんと食べてね」
「わかった、いってらっしゃい」
「いってくるね」
お父さんはまだ寝てるなと思いながら一人広いリビングで朝食を食べる。
そのあとお気に入りの服を着て外に出てみると、当たり前だが知らない風景が広がっていた。僕は公園を探すことにした。
どのくらい歩いたか、近くの団地の敷地内に公園を見つけたのでそこで遊ぶ事にした。そこには既に他の子が遊んでいて、僕は声をかけた。
「ねえねえ、僕もまぜて!」
「どうする?」
女の子が隣にいた男の子に聞いていた。
「俺のけらいになるならいいぞ!」
その瞬間女の子は男の子の頭を叩いた。
「いってーな!」
「いいよ!今大きいお城作ってたんだ!一緒に作ろ!」
女の子は僕にそう言って笑いかけてくれた。
「うん!」
「君、名前は?」
「僕はかずきだよ」
「何歳?」
「七歳だよ!」
「じゃあ今度二年生?」
「そうだよ!」
「うちらもだよ!でも見た事ないけど、どこから来たの?」
「昨日この街に引っ越してきたんだ!」
「じゃあ学校一緒かもね!」
「そうかも!あっ名前聞いていい?」
「そうだった!私はゆいだよ!こっちのバカがたいち!」
「バカってゆうな!」
「だって本当の事じゃん!」
「二人はいつも喧嘩してるの?」
「喧嘩じゃないよ!通常だよ!」
「そうなんだ!いつもここで遊んでるの?」
僕とゆいちゃんは砂場でお城を作りながら話していた。
「うん!うちらの家ここの団地だから!」
「また来てもいい?」
「もちろんだよ!」
わぁ、かわいい。一目惚れだった。
それから春休みの間はほぼ三人で遊んでいた。
一週間後、僕はお母さんの運転する車で新しい学校に向かう。
「小学校遠いの?」
「なんで?」
「だって車だから」
「今度の学校は幼稚園から中学まである大きな学校なのよ」
「へー、そうなんだ!楽しみ!」
僕は二人に会えるのを楽しみにしていた。
学校に着くと、殆どの人が車で送迎してもらっていた。車を駐車し、僕はお母さんと一緒に校内に入る。校内はとても広くて綺麗だった。前の学校も大きかったけど、ここは人が多いなぁ。そんな事を思いながら廊下を進み校長室に入る。
「失礼します」
「失礼します」
僕はお母さんに続いて入った。
校長先生はとても優しそうな人で顔はシワシワだけど、ニコニコしていて好印象だ。
「かずき君、今日からよろしくね」
「よろしくお願いします」
「君は礼儀正しいね、お母さんの教育がいいんだね」
校長先生が僕とお母さんの顔を順番に見ながら言ってきた。
「そんな事ありませんよ」
お母さんは満更でもなさそうな顔で微笑んでいる。
校長先生との挨拶を済ますと、今度は担任になる田中先生に挨拶をした。
田中先生は若い女の先生だ。
「今日からよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね」
「お世話になります」
と、お母さん。
その後、田中先生と僕は教室に向かう。
「では、よろしくお願いします」
「お任せください」
お母さんは教室の前まで来ると、先生に僕を任せて帰って行った。
「じゃあ入ろっか」
「はい」
田中先生が先に教室に入り、僕は呼ばれるのを待つ。教室の中から呼ぶ声が聞こえると、僕は元々開いていたドアを入り、黒板の前に立つ。
「今日からこの学校に転校してきたお友達です。一言挨拶出来るかな?」
「はい、松本かずきです!好きな遊びは砂場遊びと、サッカーです。よろしくお願いします」
僕が挨拶をすると、静かに聞いていたクラスの人達が拍手をくれた。
僕はホッとした。そして、教室を見渡し、二人の姿を探す。いないなぁ。何クラスあるんだろう。後で聞いて探しに行こうと思っていた。
その日は始業式が終わると、給食もなしに帰った。帰りはお母さんが校門の前で待っていてくれたので、車で帰る。
「ねえ、毎日車で送ってくれるの?」
「そうね、遠いからね」
「ふーん」
「お母さんとランチしよっか」
「うん!」
「何が食べたい?」
「オムライスがいい!」
「分かったわ、じゃあレストランに行きましょう」
お母さんは優しい。
時々怒るけど、大きい声を出したりはしない、淡々となぜダメなのか教えてくれる。でも僕にはそれがすごく怖かった。僕とお母さんはレストランに向かいランチをする。
「お母さん、帰ったら遊びに行ってもいい?」
「いいわよ、遅くならないようにね」
「うん!」
そう言い、目の前に来たオムライスを急いで食べる。
「ゆっくり食べなさい」
「早く遊び行きたいもん」
「この子ったら」
ご飯も食べ終わり、家に帰る。
車から降りると、部屋に走り急いで着替えた。
「いってきまーす!」
「気をつけるのよ!」
「はーい!」
公園には二人の姿があった、僕は見つけると早速声をかける。
「今日学校行った?」
「うん、行ったよ?かずきくん来なかったの?」
「僕も行ったんだけど、二人共見つからなかったから」
「そんなはずないよ?一クラスしかないんだから」
あれ?僕の学年は最低でも五クラス程あったように感じたが、話が合わないなぁ。そんな事を思っていた。
「学校ってあそこだよね?」
ゆいちゃんが指を指したので、見ると団地からすぐの所に学校があった。
「違う学校だ‥‥」
「そうなの?」
僕はがっかりした。
「でも家は近いんでしょ?」
「うん、そうだよ」
「じゃあいつでも遊べるからいいじゃん」
そう言ってゆいちゃんが笑ってくれたお陰で僕も笑顔になれた。
「今日は何するー?」
「あれ?たいちくんは?」
「いるよ、あそこ」
ゆいちゃんが向いた方を見てみると、たいちくんは木の上に登って寝ていた。
「すごいね!僕も登ってみたい!」
「かずきくんはやめときなって!怪我するよ!」
「僕だって出来るかも!」
「ダメダメ!危ないから」
なんでゆいちゃんはそんなに止めるんだろうとは思っていたけど、今思えば、その頃の僕は背も小さくてひょろひょろとしていて、とても木登り出来るようには見えなかったんだろう。ゆいちゃんはその頃から優しくていい子だったなぁ。
僕は三人で遊ぶのを毎日楽しみにしていた。
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