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第六話
しおりを挟む12月も中旬を迎え、クリスマスシーズン真っ只中。クリスマス限定のメニューがある為この時期は忙しい。
「最近どう?」
ひと段落ついてコーヒーを飲みながら冬馬さんが聞いてきた。
「どう?とは?」
「あの子と付き合ってるんでしょ?駅に送ってくれてる子」
「なんで知ってるんですか?」
「普通見たら分かるよ。毎日迎えに来てるし、最近はももちゃんもどことなく楽しそうにしてるからさ」
「まぁ一応付き合ってますけど」
一応と言ってしまったが、ハッキリ言うのは何故か気が引けた。
「じゃあクリスマスも彼氏と過ごす予定かな」
「まだ約束はしてませんけど、多分」
「さっきから曖昧な返事ばかりだけど本当に付き合ってるんだよね?」
「はい、一応‥‥」
なんでだろう、冬馬さんには言いにくい雰囲気がある。
「じゃあその日は休む?」
「予定が決まったらすぐ言いますね」
とは言ったものの、結局柊生がデートしようと言ってきたのでクリスマス当日は休みをもらうことになった。だからといって初デートの時のようなワクワクはすでに薄れていた。
この時期になって思い出すのは高校一年の時に付き合っていた彼氏の事で、そこまでぞっこんではなかったけど、クリスマスまであと数日の時に突然別れを告げられた。
理由は私の友達の事が好きだって言われた。正直その二人は幼馴染だったしお似合いだった。でも私の友達にもその時彼氏はいたし面倒だなぁと思いながら受け入れたっけ、いい気はしなかったけど。
次の年のクリスマスはバイトしてたし、高校に入ってから初めて恋人と過ごすクリスマスだ。当日はお昼前に目が覚めた。昨日遅くまで漫画を読んでいたせいだ。
待ち合わせはいつもの公園に13時。私が駅から公園に向かっている途中に柊生の姿があった。
「待ちきれなくて来ちゃった」
そう言って柊生は頭を掻いた。
「まぁ、どのみち街に出るにはこっち来るもんね」
私たちはどこに行くのか予定を立てずにきていたが柊生がカラオケに行きたいと言うのでそれには賛成した。
それと一つ気になったのが、柊生はやたら膨らんだリュックを背負っていた。
何か入れてるのかとも思ったがあえて触れずに過ごす事にした。
クリスマスということもあってカラオケは満室だった。待合で待つこと30分。何組か出て行ったのを見ていたのでそろそろ入れるかと思った頃に声がかかり、無事に部屋に入る事が出来た。
先に歌ってと柊生が言うので私は歌い慣れた曲を入れ歌った。
「ももちゃん歌上手いね」
「普通だよ」
とは言ったが、歌うのは好きでみんなにも上手いねってよく言われる。
柊生がドリンクバーで注いできたメロンソーダを飲み干し歌う。が、誰の歌なのか分からずいまいち盛り上がれなかった。もちろん顔には出していないが、J-POPが好きな私に対して柊生はHIPHOP系がどうやら好きみたいだ。
「そろそろ出ない?」
2時間が限界だった私は柊生に言った。
「そうだね、他に行きたい所もあるし」
「行きたい所?」
「うん。でも着くまでのお楽しみだよ」
柊生は一体どこに行くつもりなのだろう。
会計は柊生が出してくれた。一応私の方が年上だし働いてるからせめて割り勘にしようって言ったが今日は全部出すと言って聞かなかった。
「ありがとう」
「全然いいよ!じゃあ行こっ」
「どこに行くかは聞かない方がいいんだよね?」
「うん!」
「わかった」
そして何故か駅に行き、行った事のない場所の切符を買って電車に乗った。
聞くなと言われても、クリスマス。サプライズがあるとすればイルミネーションって相場は決まってるはず。柊生はきっと喜ぶ私を見てドヤ顔をするんだろうな。そう考える私ってロマンもなく冷めてるのかな。
割と空いている車内で、席に座り外を眺めてみた。時刻は5時前。今日はいつもより日の入りが早く感じる。
電車のガタンガタンと言う音と夕焼けの赤い空を見て人肌が恋しくなった。
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