【最弱勇者】100回目の転生

黒崎

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【後編】魔界の救済

勇者覚醒

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ドレッドの肉体が消滅するはずだった。しかし、いつまでも攻撃がこない。不思議に思ったドレッドは目を開ける。すると辺り一面セピア色になっており、マオの動きもピタッと止まっている。まるで時間が止まっているようだ。

『諦めてはいけません…勇者ドレッドよ』
「誰だ!?」

周囲を見渡すが誰もいない。念話で語り掛けているようだ。

『私は戦いの女神ヴァルキリー。貴方にこの剣を授けましょう。』

するとドレッドの目の前に禍々しい剣が現れる。

「これは!?」
『あらゆるものを切裂くことができるとされる伝説の宝剣、天叢雲剣』

ドレッドがその禍々しい剣を握ると闇夜を照らす月光のように妖しく光った。

「……何故これを俺にくれるんだ!?勇者はタクトだろ!」
『いいえ。この世界の勇者はドレッド、貴殿以外に存在しません。』

俺が伝説の勇者か?おいおい、何かの冗談だろ…。でも、やるっきゃねぇ…!!

『この空間はもう持ちません。さぁ、おゆきなさい!闇を切り払うのです!!』

セピア色の世界が剥がれ落ち、世界に色が戻るとドレッドは剣を振りかざす。するとマオが唱えた魔法がかき消される。

「ば、バカなぁ…さっきまで手にしていなかったその剣はなんだ!?」

マオの問いに沈黙を貫き通すと、ドレッドは剣を力一杯縦に振った。凄まじい衝撃波に耐え切れず、マオは両腕で顔を覆った。すると辺りを包んでいた闇が消え去った。それに伴ってドレッドの力が戻り、逆にマオの力が弱体化していく。

「そんなはずが……!?」
「終わりだ、小僧。」

ドレッドが剣を素早く振るとマオの両肩に鋭い痛みが走る。

「ぎゃあーーーー!!!」

両腕を上げることができなくなったマオは魔法を封じられ力なく膝をつく。

「た、たのむ!殺さないでーーー!僕、まだ死にたくないよぉーーー!!」

マオが必死にドレッドに懇願するも、ドレッドは容赦なく剣を振り下ろす。しかし、寸前のところで剣を止める。あいつならきっと殺さないだろうな。こんな時、あいつならどうする?

しばらく考え込んだ後、ドレッドは結論を出した。全てを切裂くなら、せっかくだし試してみるか!ドレッドは剣を振り下ろすとマオは倒れて気絶した。しかし、マオに肩の傷以外の外傷はない。

「やはりそうか……。」

ドレッドが切裂いたのはマオのサタンへの忠誠心。どうやらこの剣は実体のないものも切れるらしく、それが無事成功したらしい。マオはどうやら強大な魔力で洗脳され一部の自由意志を失っていたようだ。そんなマオの洗脳を無理やり解除したためか、マオの精神が一時的に大ダメージを受けてその場に倒れてしまったようだ。

倒れているマオを見下ろし、ふとタクトが居たカーテンの先に視線をやるとそこには誰もいなかった。そして玉座があったところには扉が出来ている。

「……待っていろよ、タクト!」

ドレッドは足早にタクトのもとへ駆けた。
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