前世の彼女が狼だった件

うさみん

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高鳴り

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 彼女と別れても、彼女と触れ合った感触が何時までも消えずにいた。

 それを密かに楽しみながら家路につく。

「ただいま」

 誰も居ない2LDKの自宅に帰ると、何時もの習慣で呟く。

 独り暮らしなので、もちろん答える者は居ないが、特に気に止めずそのまま浴室に入る。

 家を出る前に準備していったので、湯船は適温だった。

 体を洗いゆっくり湯船に浸かる。

 彼女はきっとシャワーを浴びて、その後は直ぐにベットに直行だろうと苦笑する。

 知らない筈の彼女を知ってる自分に、何故か疑問も湧かず、そう言うものなのだと深く納得してしまう事に、驚きを感じない訳では無いが、彼女の事になると些細な事だと思えて気にならなくなってしまう。

 夢見心地でよろけた彼女の体を抱き止めた時は、本当に理性を総動員させる必要があった。

 彼女に初回から仕掛けるのは悪手だ。

 前みたいに少しずつ囲い混み、逃げられないように絡めとって仕舞おうと心に決める。


 誰にも渡さない·····。


 今度こそこの腕の中で守りきる。

 強い執着を感じながら自嘲した。

 
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