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ギルドマスター

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 別室に通され、そこで一人座って待っていると、アンナともう一人女性が入って来たので、響は立ち上がる。

 女性は銀髪で水色の瞳のスレンダー美人なエルフだった。

 エルフを初めて見た響は、少し驚きつつもやっぱり異世界なんだなとしみじみする。


「お待たせしました。私はエリネールのギルドマスターで、アイシャといいます。」


「はじめまして、響です。」


 お互いに握手を交わし、座るよう促され改めて腰掛ける。


「話と言うのは他でも無いのですが、昨日町中にブラックブラッドスライムが現れ、それを単身で討伐した者が居て『トドロキスイーパーカンパニー』と名乗ったと、報告がありました。聞いた話によると、ヒビキさんも『トドロキスイーパーカンパニー』の関係者だそうですね。そこで昨日の件について、何かご存知でないかお話を聞かせていただきたいのです。」


 問われて、響は少し考える。


『社名を名乗ったのは、町に来て直ぐに汚れ掃除をした時だ。変な汚れだとあの時は思ったけど、あのタール状の汚れがスライムだったのか。』


 状況を思い出すと、そうだったのかと納得した。


「あれ、スライムだったんですね。てっきり汚れかと思って、掃除しちゃいましたよ。」


 軽い口調で、笑い話の様に話す響に、アンナが思わず口を開く。


「『スライムだったんですね』じゃないわよ!ブラックブラッドスライムの脅威を理解出来ていないの?!あればAランクのモンスターなのよ!『汚れかと思って掃除』出来るレベルのモンスターじゃないわよ!しかもレベル1の貴方が倒すだなんて、常識で考えても不可能な話よ!?」


 つい声を荒げて息をするアンナにアイシャは驚いたが、響がレベル1と聞いて更に驚く。


「レベル1なんですか?!」


 アイシャにまじまじと二度見されて、響は困惑する。

 何だかまた、やらかした感がある······。


「もうレベル3に上がりましたよ?」


 なにやら相談し始めたアンナとアイシャに、響は一応言ってみたが意味がなかった。


「貴方はレベルに関係無く基礎値が高いのかも知れません。稀にそういった者が居るのです。貴方の実力が知りたいのですが、よろしいですか?」


 アイシャの申し出に、響は断ることも出来ず、仕方無く了承する。

 何だか厄介事の予感がひしひしとした。
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