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事後処理2

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 霊廟から外に出ると、一同はほっと息をつく。

 外は変わらず静かで、先程の出来事がまるで幻のように思えてしまう。

 馬車に5人も乗り込むと流石に窮屈であったが、助けられた3人は安堵の表情を浮かべ、改めてお礼を言った。


「助け出してくれてありがとう!穴に近付いた時に足元が崩れて、何とか壁にしがみつけたんだが、体力的にも限界でもう駄目かと思ったんだ!」


 リーダーらしい、一番最初に助け出した男が、涙ぐむ。


「回復魔法のお陰で怪我も癒えたし、感謝しているよ!」


 怪我をしていた男はアンナの手を握りながら言った。


「穴の底に何か居るのは分かっていたが、あんなスライムの群れだとは思わなかった!本当に助けてくれてありがとう!」


 その身を震わせながら、3人目の男が頭を下げた。


「何はともあれ、無事に助け出すことが出来たのは幸いでした!」


 アイシャは嬉しそうに3人に微笑みを向けた。

 長年、ギルドマスターをしていると、こんな片隅の町だと冒険者達は家族の様なものに感じる。

 その無事は何よりの収穫であった。

 馬車は15ヤー(15分)程馬車に揺られ、ギルドへと到着した。

 
 ギルドに着くと、少し疲れを見せながらもアンナは精力的に動く。


「アイシャ!大至急町中全ての水路とその周辺の確認を緊急依頼で出すわ!募集は20名程、報酬は銀貨1枚、不審な物を見付けたら直ぐ様報告を義務付け、リミットはこれから3ジル(3時間)程度ね!」


 ハインツに目配せすると、ハインツは急ぎギルドの入口に有った鐘を力強く大きく鳴らす。


カーンッ!カーンッ!カーンッ!


 大きな鐘の音が響き、ギルドの入口に冒険者達が詰め掛けてくる。


「緊急依頼だ!ランクは不問!町中全ての水路とその周辺の確認!リミットは3ジル!募集は20名!報酬は銀貨1枚で、不審な物を見付けたら直ぐ様報告だ!受ける者は至急受付に行ってくれ!」


 ハインツの呼び掛けに次々と冒険者が受付に向かう。

 連携の取れた動きにプロ意識を感じて、『見習わないとな。』と響はしみじみ思う。

 個人経営者だと個人プレーが基本になるので、それに慣れているとチームプレーの様には上手く連携が取れない事が多いのだ。


「それでは、ヒビキはちょっと此方へ!」


 悪い笑みを浮かべるアイシャに呼ばれるまま、不用意にギルドマスターの部屋へと赴いた。




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