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降りかかる火の粉1

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 スキルの効果の確認と自分の好奇心を満足いくまで充たせた響は、足取り軽くギルドに向かう。

 エリスとのやり取りで思いの外時間が経っていて、ギルドに戻った頃には昼下がりになっていた。

 報告したら昼食にしようとギルドの受付に赴く。


「アンナさん。依頼が完了したので報告に来ました。」


 にこやかな響に、アンナがそっと耳打ちする。


「今、確かな筋の情報でアリシュ男爵の所に武装した男達が集められているらしいの···ヒビキ、気を付けて。」


 今朝の件かと思い当たり、響はアンナに礼を告げるとなに食わぬ顔で報告を続ける。

 アンナはそんな響に呆れつつも、響からの報告を聞いた。

 ギルドでの用事を済ませた響は、屋台で甘酸っぱい焼き肉と辛いトマトの様な野菜を包んだ春巻きモドキを食べながら考えた。

 町中だと騒ぎになるので、何処かに誘い出して対応した方が良いだろう。

 それに元凶も断たねば繰り返すだろうから、そちらの対応も一緒に考えようと考えを巡らせる。

 一通り考えを纏めると、声をかけてくる道行く人に軽く挨拶をしながら、町の外へと向かう。

 ちょっとした有名人になっている響の行動は、直ぐにノローズの元に伝わる。


「自分から人気の無い町の外へと出掛けるとは馬鹿な奴め!」


 ノローズはほくそ笑みながら、集めた30人程の柄の悪い男達に響を襲撃するように命令した。

 流石にどんなに強くても30人に1度に襲いかけられればひとたまりもないだろうと笑みを浮かべ、ワインを飲みながら骨付き肉にかじりつく。

 とても貴族とは思えない品性の欠片もない食べ方であったが、ノローズは気にする事もなく食べ終えた後の骨を投げ捨て、テーブルクロスに汚れを擦り付ける。


「おい!綺麗にしておけ!」


 横柄な態度でふんぞり返り、笑いながらノローズは自分の部屋に戻って行った。
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