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捜索2
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鑑定を発動させたままだったので、ふと思い付きで何気無く魔石を鑑定してみた。
[魔石(紫)] 魔族を倒したときに出現する魔石 空気中の瘴気を取り込む力がある 同じ魔石同士は共鳴する性質がある
この魔石は活用出来そうな気がする。
後でアイシャに交渉してみることにしようと決めた。
東側は職人街だった為なのか、たいした成果は得られなかった。
南側は路地に出店が並び食堂や宿屋があるので、人の出入りが多い地区だ。
響は見落としがないようにと、念入りに鑑定をしながらゆっくりめに歩く。
荷馬車の傍らで商人と値段交渉している男が、響の目に止まった。
「見付けましたよ。あの正面の短髪の男性です。」
アイシャに小声で耳打ちすると、アイシャは気取られないように素早く精霊魔法を使って風の精霊を呼び出し命ずる。
「あの男を監視しなさい。」
風の精霊はアイシャの命じたままに飛んで行った。
「これであの男の動向は把握出来ます。捜索を続けましょう。」
アイシャに促され、響は引き続き鑑定を続けた。
結局、南側ではその男以外の魔族は見付けられなかったので、続けて西側の捜索に移る。
西側は商人街で、専門店が連なる地区だ。
そういえば町中をじっくりと散策した事が無かったなと思いながら、響は物珍しげに眺めながら店の中をチェックして行く。
服屋や雑貨屋や食料品の卸売りの専門店や塩の専門店···色々な店が建ち並ぶ。
その中の一つに、魔法を取り扱う店があった。
今度、是非来よう···と考えながら、外から店の中を覗く。
そこで、もう一人の魔族を見付けることが出来た。
「アイシャさん。今、店を出てきた長髪の女性です。」
響が小声で囁くと、アイシャは頷き、すぐさま魔法を発動させる。
風の精霊が女性の後を追う。
女性は辺りに視線を泳がせると、然り気無く裏路地に姿を消す。
何と無く気に掛かり、女性が姿を消した裏路地に視線を向けた響に、アイシャの声が掛かる。
「捜索を続けましょう。ヒビキ。」
まあ、いいか···と気を取り直し捜索を続けたものの、西側での収穫はあの女性だけに止まった。
寂れた古い一軒家の薄暗がりの中にたたずむ男の姿があった。
「昨日、ガザの反応が消えた···。どうやら消された様だ。」
男性の抑揚の無い声が淡々と告げる。
「ガザは下級とは言え、それなりの実力者です。それを消せるほどの存在が···?」
低めの女性の声と供に、西側で響が見付けた女性が現れ、窓の外を眺めながら薄明かりの光の中を歩く。
「サリ···後を追跡された様だな···。」
男性の言葉にサリと呼ばれた女性が膝をつき頭を下げる。
「申し訳ありません!ユーグ様!」
薄明かりの中から男性が手を翳すとバチン!と弾ける音がして精霊の光が掻き消される。
「ガザの計画は終りだ。次の計画に移る···。」
ユーグと呼ばれた男性がサリに黒い珠を手渡す。
「ヨキにも追跡が付けられているかも知れない···。これを使え···。」
「わかりました。ユーグ様。」
サリの声と供に二人の姿は家の中から忽然と消えてしまった。
北側の住民街を捜索していて、異変が起こる。
墓地に程近い場所の寂れた古い一軒家の中に魔族の反応があったのだが、アイシャに伝えるよりも早く反応が消えてしまったのだ。
アイシャに告げて、慌ててその一軒家の中に二人は入ったが、そこはもぬけの殻でなんの痕跡も無かった。
その上、アイシャが女性に付けていた精霊も消されてしまっており、足取りを辿ることが出来なかった。
「私の呼び出した精霊を消し去る事が出来るなんて···。どうやら中級以上の魔族が関わっている様ですね···。」
アイシャは眉間に深くシワを刻む。
「ですが、もう一人にはまだ気付かれていないようです。精霊との繋がりが切れていません。このまま後を追いましょう。」
精霊の痕跡を辿りながら走り出すアイシャに、響は続いて走り出す。
町の中心部をすぎ南側の地区に近付いた所で、走っていたアイシャの足が急に止まる。
響も慌てて立ち止まる。
「アイシャさん?」
声を掛けると、アイシャは歯噛みをして表情を歪める。
「精霊を消されてしまいました···。こちらの存在を気取られた様です。どうやらこの町からは手を引いた様ですね。」
この町を狙った魔族の目論見の妨害が出来た筈なのに、そんなことはどうでもいいかの様に、魔族を取り逃がした悔しさを露骨に隠そうとはしないアイシャに、彼女の魔族に対する闇の深さを響は感じた。
響は立ち止まったままのアイシャが動き出すまで、何も言えずに静かに立ち尽くすしかなかった。
[魔石(紫)] 魔族を倒したときに出現する魔石 空気中の瘴気を取り込む力がある 同じ魔石同士は共鳴する性質がある
この魔石は活用出来そうな気がする。
後でアイシャに交渉してみることにしようと決めた。
東側は職人街だった為なのか、たいした成果は得られなかった。
南側は路地に出店が並び食堂や宿屋があるので、人の出入りが多い地区だ。
響は見落としがないようにと、念入りに鑑定をしながらゆっくりめに歩く。
荷馬車の傍らで商人と値段交渉している男が、響の目に止まった。
「見付けましたよ。あの正面の短髪の男性です。」
アイシャに小声で耳打ちすると、アイシャは気取られないように素早く精霊魔法を使って風の精霊を呼び出し命ずる。
「あの男を監視しなさい。」
風の精霊はアイシャの命じたままに飛んで行った。
「これであの男の動向は把握出来ます。捜索を続けましょう。」
アイシャに促され、響は引き続き鑑定を続けた。
結局、南側ではその男以外の魔族は見付けられなかったので、続けて西側の捜索に移る。
西側は商人街で、専門店が連なる地区だ。
そういえば町中をじっくりと散策した事が無かったなと思いながら、響は物珍しげに眺めながら店の中をチェックして行く。
服屋や雑貨屋や食料品の卸売りの専門店や塩の専門店···色々な店が建ち並ぶ。
その中の一つに、魔法を取り扱う店があった。
今度、是非来よう···と考えながら、外から店の中を覗く。
そこで、もう一人の魔族を見付けることが出来た。
「アイシャさん。今、店を出てきた長髪の女性です。」
響が小声で囁くと、アイシャは頷き、すぐさま魔法を発動させる。
風の精霊が女性の後を追う。
女性は辺りに視線を泳がせると、然り気無く裏路地に姿を消す。
何と無く気に掛かり、女性が姿を消した裏路地に視線を向けた響に、アイシャの声が掛かる。
「捜索を続けましょう。ヒビキ。」
まあ、いいか···と気を取り直し捜索を続けたものの、西側での収穫はあの女性だけに止まった。
寂れた古い一軒家の薄暗がりの中にたたずむ男の姿があった。
「昨日、ガザの反応が消えた···。どうやら消された様だ。」
男性の抑揚の無い声が淡々と告げる。
「ガザは下級とは言え、それなりの実力者です。それを消せるほどの存在が···?」
低めの女性の声と供に、西側で響が見付けた女性が現れ、窓の外を眺めながら薄明かりの光の中を歩く。
「サリ···後を追跡された様だな···。」
男性の言葉にサリと呼ばれた女性が膝をつき頭を下げる。
「申し訳ありません!ユーグ様!」
薄明かりの中から男性が手を翳すとバチン!と弾ける音がして精霊の光が掻き消される。
「ガザの計画は終りだ。次の計画に移る···。」
ユーグと呼ばれた男性がサリに黒い珠を手渡す。
「ヨキにも追跡が付けられているかも知れない···。これを使え···。」
「わかりました。ユーグ様。」
サリの声と供に二人の姿は家の中から忽然と消えてしまった。
北側の住民街を捜索していて、異変が起こる。
墓地に程近い場所の寂れた古い一軒家の中に魔族の反応があったのだが、アイシャに伝えるよりも早く反応が消えてしまったのだ。
アイシャに告げて、慌ててその一軒家の中に二人は入ったが、そこはもぬけの殻でなんの痕跡も無かった。
その上、アイシャが女性に付けていた精霊も消されてしまっており、足取りを辿ることが出来なかった。
「私の呼び出した精霊を消し去る事が出来るなんて···。どうやら中級以上の魔族が関わっている様ですね···。」
アイシャは眉間に深くシワを刻む。
「ですが、もう一人にはまだ気付かれていないようです。精霊との繋がりが切れていません。このまま後を追いましょう。」
精霊の痕跡を辿りながら走り出すアイシャに、響は続いて走り出す。
町の中心部をすぎ南側の地区に近付いた所で、走っていたアイシャの足が急に止まる。
響も慌てて立ち止まる。
「アイシャさん?」
声を掛けると、アイシャは歯噛みをして表情を歪める。
「精霊を消されてしまいました···。こちらの存在を気取られた様です。どうやらこの町からは手を引いた様ですね。」
この町を狙った魔族の目論見の妨害が出来た筈なのに、そんなことはどうでもいいかの様に、魔族を取り逃がした悔しさを露骨に隠そうとはしないアイシャに、彼女の魔族に対する闇の深さを響は感じた。
響は立ち止まったままのアイシャが動き出すまで、何も言えずに静かに立ち尽くすしかなかった。
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