中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

うさみん

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72,世界の暗部

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 朝になり、起き出した男にソウタは話を聞いた。

「どんな悪事があるかなんて、可笑しな事を聞くな?」

 移動の合間に時間はいくらでも有ったので、男はソウタに話して聞かせる。

「盗みにゆすりにたかりに詐偽、暴行に強姦に強盗、人拐いに違法薬物の売買、人身売買に殺人、非人道的な人体実験って言うのも聞いた事がある。とにかく、悪事の数は俺には把握仕切れない。星の数だけあるだろうよ。」

 思わず身震いしながらソウタは尋ねる。

「悪事を取り締まる事は出来ているの?」

「そうだな···大きな悪事なら町の自警団や警備の役人や騎士団なんかが動いてはいるらしいが、小さな悪事に関しては野放しで泣き寝入りが常だ。」

 残念そうな様子で、爪を噛んだソウタに男は苦笑した。

「お人好しも過ぎれば身を滅ぼす。深入りしない方が身のためだぜ。」

 自分に解決出来るとはソウタも思ってはいない。

 しかし、切っ掛けがあれば変わることもあると信じたかった。

「憂いが少なければそういった悪事も減るかな?」

 ソウタの言葉に男は少し考える。

「やもえず悪事に手を染めている者はもしかしたら···な···。救いを求めている者も居るだろう。」

 男の言葉にソウタは笑みを返す。

「そうだと良いね!」

 ソウタは造り出す仕込みの中に、気休め程度の自己満足でも構わないと思いながら想いを込める事にした。

 困難を乗り越え運を掴み取るための気持ちと他人を思いやり助け合う気持ちを込める。

 自己満足の偽善だとは思っていたが、ソウタの本気の想いだった。

 中継地の村に寄ると、時限式の仕掛けを急ぎ設置していく。

 一時間程度の補給と交易を済ませると出発になった。

 それと時間を合わせる様に、発動させる。

 御者の計らいで馬車は出発を遅らせ、人によっては二度目の奇跡の目撃者の一員となった。

 ソウタは人々の表情の違いを見て取りながら、想いが伝われば良いのにと思いながら馬車の出発を待った。

 ようやく馬車は走りだし、興奮の覚めあらぬ人達の声を聞きながら次の中継地まで黙々と仕込みをソウタは続けた。
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