上 下
91 / 111

91,アンバランス

しおりを挟む
 上手く師事を受け入れる話まで漕ぎ着けて、内心喜んだ。

 内包している魔力からしても稀に見る逸材だ。

 早速、魔法の実力を見せるように促した。

 ソウタは手を広げると『ファイア』と唱えた。

 しかし手のひらには火種程度の小さな炎が現れただけだった。

 結界を張っているので遠慮しなくてもいいと告げると、それが最大出力だと、告げてくる。

 そんな筈はない。

 魔力の量から推定しても2mサイズの火球を出現させることが出来ても良い筈だ。

 幾度と無く試して貰ったが、結果は同じだった。

 何故だ?

 何かに魔力の出力を阻害されているとしか思えない。

 とにかく出来るだけ永く足留めして、彼の真の実力を引き出せるように導いて行かねば、魔道士の名が廃る。

 新に使命感に燃える私は、早速彼に屋敷に滞在するように告げる事にした。

「ソウタ。師事を受けてもらう間は、弟子としてこの屋敷に滞在して貰うので悪しからず。よろしく頼むよ。」

 彼は複雑そうな表情で、私を見詰める。

「大した魔法の実力も無いのに、すみません。心苦しくはありますが、暫くお世話になります。」

 あの魔法の出力ならそう感じて仕舞うのも仕方がないが、真の実力は決してあんなものではない。

 早く本人に知らしめて、本格的に魔法使いを目指して貰おう。

 どうすれば本来の力が発揮出来るのか、出力を阻害している原因を探って、アンバランスな今の状態を早急に解消するための策を講じよう。

「取り合えず、食事に呼ばれるまでの間に、この水晶に魔力を込める練習をしてみたまえ。」

 魔力の親和性を高める加工をしてある水晶をソウタに渡して、私は研究室の文献を調べることにした。


しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

生残の秀吉

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:221pt お気に入り:2

小説家に恋しちゃったので、恋人ごっこはじめました!

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

穴の影

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

錬金術師のカルテ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

名も無い男の慕情

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

ベスティエンⅢ【改訂版】

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:25

大杉の誓い~外交官 安達峰一郎 青春譜~

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

処理中です...