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王都
第三十一話 作戦行動
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先ほど決めたように、オレたちが先に宿を出る。
すぐに監視者が動き出し、オレのことを調べているように物陰を隠れながら移動してきているのが分かる。
宿から少し離れたところで、ウィンドウショッピングをしながらイレーナたちに監視の目がついて行かなかの確認をする。
「信希ぃ、服のお店はあっちなのっ」
「うん、わかった。ちょっとだけココ見ててもいい?」
「うんっ!これ欲しいの?」
「少し気になるね」
レストは状況が上手く理解できていないみたいだけど、こういう自然なリアクションは今のオレに作り出すのは難しいかもしれないから正直助かる。
「魔法具じゃな、信希さまは魔法具に興味が?」
「ああ、昨日イレーナと見たんだ。作れたりしないかなと思ってね」
「ふむ、魔法具は魔法を使えることはもちろん。魔法の術を維持したまま水晶に刻み込むらしい、かなりの修練が必要だとか聞いたことがありますじゃ」
「なるほどね、イレーナにも難しいって聞いてたんだよね」
「ふむ。余も、実際に魔法具を作れる人物は知らぬのじゃ」
「それだけマイノリティってことか─」
そんな話をしている間にイレーナたちが宿から出てきた。さすがはイレーナというべきか、目立つ格好は避けてしっかりと外套を纏っていた。
こちらを監視しているヤツは、向こうに見向きもせずにこちらの様子をうかがっているようだった。
監視しているヤツが複数人居た場合には、向こうにも監視が付いてしまうことになるが、今のところ問題はなさそうだった。
「ん、じゃあ服を見に行こうか」
「「はーい!」」
そうしてオレたちは、昨日レスト、ユリアと行った服屋の方へと向かっていく。
──。
「シアンとポミナはどんな服が欲しいの?お金は心配しなくていいから、欲しいものを買ってね」
「うん!ありがとっ!」
「わたしは、寝巻と下着を信希に選んでもらいたいです…」
「…」
それは、オレがポミナの服をオレが選ぶってことか…?下着を見てもいいということか…?そんな最高なことが…いや待て!これは罠かも─
「まさき…?」
「あ、ああ。オレは構わないけど、ポミナは恥ずかしかったりしない?」
「はいっ、信希なら恥ずかしくありません…」
ポミナはそう言うと、その愛らしいケモミミを動かしつつ上目遣いでこちらをまっすぐに見つめてくる。
「それは、反則です…。わかったよ、センスがいいか分からないけど選んでみるね?」
「はいはいっ!ボクもボクも!」
「うん、わかったよ。一緒に選ぼうか」
困ったことになったな、でも嫌な感じはしない。
それよりも、最高のケモミミ様に似合うお洋服を選択しなくては…。
そんな会話をしつつ進んでいたら、服を多く取り扱っている店舗にたどり着いた。
昨日とは少し違った緊張感でやってきたが、なんとかこの大役をこなさなくては…。
それにしても、ポミナの勢いはすごいな。
普段は大人しそうに見えるが、案外一番積極的なのはポミナかもしれない。
ただの酔っ払いかと思っていたが、ポミナもちゃんと可愛らしい女性だということだ。
「信希は女の子の好きな服とかあるのー?」
「ん-、そうだな。個人的な好みはあるけど、この世界では作られてないかも?これまでに見てないしな」
「そうなんだ…?」
「まぁでも、着る人に似合っていて可愛いさを増量させてくれるなら、どんな服でも好きになっちゃうかも」
「似合ってる…、似合ってるの探す!」
シアンもポミナもいつになく真剣な感じで、服を選んでいるみたいだ。
やはり女性にとって、外見や衣装というのはそれだけ大切なんだと思わされる。
「これは、元居た世界からそんなに変わらないことだな」
「信希さま?どうかしましたか?」
「ん?いやいや、女性にとって大切なものはいつの時代でも一緒なのかなって、服とか宝石とか綺麗なもの?みたいな」
「それは違います、信希さまに見ていただくために必死なのじゃ」
「…。そんなもの…?」
「そうです。『そんなもの』のために女子は必死になりますじゃ」
「そうなのか…」
ユリアの言葉に、今まで自分では感じ取ることの出来なかった感情に少し戸惑いつつも、言われてみればシアンもポミナもかわいい服を着たいなら、既に数着持っていてもおかしくないなと思わされる。
「余たちはお金をもっておらず、信希さまにご飯を食べさせてもらっている状況じゃから、彼女たちも遠慮してたのじゃ。信希さまから服を買おうと提案してもらったのはとても嬉しかったはずですじゃ」
「なるほどね…、気にしなくていいよと言っていても遠慮しちゃうよね」
「…信希さま?」
少しだけ考えるような顔をしていたオレに気付いたのか、ユリアがいつもの可愛らしい上目遣いでこちらを見ていた。
「ユリア、これからもそういったことがあれば教えてくれない…?」
オレは元居た世界からどうも女性関係の話題に疎く、どこか苦手意識を持っている。そんなオレに先生とも呼べる彼女の存在はとても大きく見えて、ついそんなことを口走っていた。
「信希さまが女性経験が少ないのは承知してますじゃ。でも、余が正解を教えてはダメなのじゃ、余も含め信希さまの本心の部分に惹かれておるのじゃ。信希さまは生粋のスケコマシじゃからの?」
ユリアは優しくそう言うと、にっこりと笑いオレに抱き着いてくる。
いつもならユリアの体に意識を持っていかれるんだが、今のオレは少し考えていた。
「そうだよね、流石に間違ってた。でも、そんなオレだからこそ間違いは絶対にすると思うんだ?もし、そうなってしまったら助けてもらってもいい?」
「もちろんですじゃ。その時は命令してくだされ?」
「命令じゃなくて、お願いでもいいかな?」
「はい」
ユリアはとても優しい、最初の出会いこそオレを従属させようなんていう感じだったけど、今となっては別人ではないかとすら思ってしまう。
楽しそうに自分たちの服を選んでいたシアン、レスト、ポミナたちがサイズを確かめながらオレのことを呼んでいる。
「信希ぃー、こんなのどう?」
「信希、かわいいですか…?」
「うん、二人ともいい感じに似合ってる。かわいいね」
シアンは元気な様子が感じられる動きやすそうな服を選んでいる。
ポミナは体型をあまり目立たせないもこもこした服を選んだみたいだ。
この世界の気象は、暑すぎず寒すぎずいつでも春秋のような気温なので、衣替えの習慣はないみたいだ。
大体どの服を選んでも、普通に生活するのであればずっと着続けられるといった感じで、元の世界に比べると服の種類は少なかった。
「それにする?」
「うん!これがいい!」
「はい。次は下着も…」
「ああ、好きなのを選んでね?」
「信希もいこぉー?」
「一緒に…」
なんとかうまく躱せたと思っていたが、大変なことになってしまった。
流石に女性の下着売り場に男が侵入するのは良くないんじゃないか…?
「え、えと…。ユリア、普通は男が下着売り場に入っていいもの…?」
「問題ないと思うのじゃ、ちゃんと選んであげるのじゃ」
「はい…」
オレは不本意ながらも神聖な場所へと足を進めた。
──。
なんだかどっと疲れたような気がする。
彼女たちの下着を選んでる時の記憶はあまりなく、彼女たちが見せてくる下着を「いいね」というだけの人形になっていた気がする。
シアンもポミナも良い買い物が出来たみたいで、どこか満足そうな表情を浮かべていた。
「信希さま、もう戻りますか?」
ユリアの言葉で我に返る。
「ん-、正直まだ時間が掛かるだろうから、もう少し時間を使いたいところだけど…」
オレは今の状況を少し考えてみる。
イレーナたちの方に監視が付いてない以上、オレたちは早く街を出てしまった方が良いのではないと思われる。
もしも、このまま時間を潰していたら監視者に余計な猶予を与えるだけかもしれない…。
監視者は相変わらず、こちらの様子をうかがっているだけで何か行動に移すつもりはないみたいだった。
「いや、一度宿に戻ろうか」
「はいですじゃ」
そうしてオレたちは、イレーナたちとの約束通りに一度宿に戻ることになった。
──。
すぐに監視者が動き出し、オレのことを調べているように物陰を隠れながら移動してきているのが分かる。
宿から少し離れたところで、ウィンドウショッピングをしながらイレーナたちに監視の目がついて行かなかの確認をする。
「信希ぃ、服のお店はあっちなのっ」
「うん、わかった。ちょっとだけココ見ててもいい?」
「うんっ!これ欲しいの?」
「少し気になるね」
レストは状況が上手く理解できていないみたいだけど、こういう自然なリアクションは今のオレに作り出すのは難しいかもしれないから正直助かる。
「魔法具じゃな、信希さまは魔法具に興味が?」
「ああ、昨日イレーナと見たんだ。作れたりしないかなと思ってね」
「ふむ、魔法具は魔法を使えることはもちろん。魔法の術を維持したまま水晶に刻み込むらしい、かなりの修練が必要だとか聞いたことがありますじゃ」
「なるほどね、イレーナにも難しいって聞いてたんだよね」
「ふむ。余も、実際に魔法具を作れる人物は知らぬのじゃ」
「それだけマイノリティってことか─」
そんな話をしている間にイレーナたちが宿から出てきた。さすがはイレーナというべきか、目立つ格好は避けてしっかりと外套を纏っていた。
こちらを監視しているヤツは、向こうに見向きもせずにこちらの様子をうかがっているようだった。
監視しているヤツが複数人居た場合には、向こうにも監視が付いてしまうことになるが、今のところ問題はなさそうだった。
「ん、じゃあ服を見に行こうか」
「「はーい!」」
そうしてオレたちは、昨日レスト、ユリアと行った服屋の方へと向かっていく。
──。
「シアンとポミナはどんな服が欲しいの?お金は心配しなくていいから、欲しいものを買ってね」
「うん!ありがとっ!」
「わたしは、寝巻と下着を信希に選んでもらいたいです…」
「…」
それは、オレがポミナの服をオレが選ぶってことか…?下着を見てもいいということか…?そんな最高なことが…いや待て!これは罠かも─
「まさき…?」
「あ、ああ。オレは構わないけど、ポミナは恥ずかしかったりしない?」
「はいっ、信希なら恥ずかしくありません…」
ポミナはそう言うと、その愛らしいケモミミを動かしつつ上目遣いでこちらをまっすぐに見つめてくる。
「それは、反則です…。わかったよ、センスがいいか分からないけど選んでみるね?」
「はいはいっ!ボクもボクも!」
「うん、わかったよ。一緒に選ぼうか」
困ったことになったな、でも嫌な感じはしない。
それよりも、最高のケモミミ様に似合うお洋服を選択しなくては…。
そんな会話をしつつ進んでいたら、服を多く取り扱っている店舗にたどり着いた。
昨日とは少し違った緊張感でやってきたが、なんとかこの大役をこなさなくては…。
それにしても、ポミナの勢いはすごいな。
普段は大人しそうに見えるが、案外一番積極的なのはポミナかもしれない。
ただの酔っ払いかと思っていたが、ポミナもちゃんと可愛らしい女性だということだ。
「信希は女の子の好きな服とかあるのー?」
「ん-、そうだな。個人的な好みはあるけど、この世界では作られてないかも?これまでに見てないしな」
「そうなんだ…?」
「まぁでも、着る人に似合っていて可愛いさを増量させてくれるなら、どんな服でも好きになっちゃうかも」
「似合ってる…、似合ってるの探す!」
シアンもポミナもいつになく真剣な感じで、服を選んでいるみたいだ。
やはり女性にとって、外見や衣装というのはそれだけ大切なんだと思わされる。
「これは、元居た世界からそんなに変わらないことだな」
「信希さま?どうかしましたか?」
「ん?いやいや、女性にとって大切なものはいつの時代でも一緒なのかなって、服とか宝石とか綺麗なもの?みたいな」
「それは違います、信希さまに見ていただくために必死なのじゃ」
「…。そんなもの…?」
「そうです。『そんなもの』のために女子は必死になりますじゃ」
「そうなのか…」
ユリアの言葉に、今まで自分では感じ取ることの出来なかった感情に少し戸惑いつつも、言われてみればシアンもポミナもかわいい服を着たいなら、既に数着持っていてもおかしくないなと思わされる。
「余たちはお金をもっておらず、信希さまにご飯を食べさせてもらっている状況じゃから、彼女たちも遠慮してたのじゃ。信希さまから服を買おうと提案してもらったのはとても嬉しかったはずですじゃ」
「なるほどね…、気にしなくていいよと言っていても遠慮しちゃうよね」
「…信希さま?」
少しだけ考えるような顔をしていたオレに気付いたのか、ユリアがいつもの可愛らしい上目遣いでこちらを見ていた。
「ユリア、これからもそういったことがあれば教えてくれない…?」
オレは元居た世界からどうも女性関係の話題に疎く、どこか苦手意識を持っている。そんなオレに先生とも呼べる彼女の存在はとても大きく見えて、ついそんなことを口走っていた。
「信希さまが女性経験が少ないのは承知してますじゃ。でも、余が正解を教えてはダメなのじゃ、余も含め信希さまの本心の部分に惹かれておるのじゃ。信希さまは生粋のスケコマシじゃからの?」
ユリアは優しくそう言うと、にっこりと笑いオレに抱き着いてくる。
いつもならユリアの体に意識を持っていかれるんだが、今のオレは少し考えていた。
「そうだよね、流石に間違ってた。でも、そんなオレだからこそ間違いは絶対にすると思うんだ?もし、そうなってしまったら助けてもらってもいい?」
「もちろんですじゃ。その時は命令してくだされ?」
「命令じゃなくて、お願いでもいいかな?」
「はい」
ユリアはとても優しい、最初の出会いこそオレを従属させようなんていう感じだったけど、今となっては別人ではないかとすら思ってしまう。
楽しそうに自分たちの服を選んでいたシアン、レスト、ポミナたちがサイズを確かめながらオレのことを呼んでいる。
「信希ぃー、こんなのどう?」
「信希、かわいいですか…?」
「うん、二人ともいい感じに似合ってる。かわいいね」
シアンは元気な様子が感じられる動きやすそうな服を選んでいる。
ポミナは体型をあまり目立たせないもこもこした服を選んだみたいだ。
この世界の気象は、暑すぎず寒すぎずいつでも春秋のような気温なので、衣替えの習慣はないみたいだ。
大体どの服を選んでも、普通に生活するのであればずっと着続けられるといった感じで、元の世界に比べると服の種類は少なかった。
「それにする?」
「うん!これがいい!」
「はい。次は下着も…」
「ああ、好きなのを選んでね?」
「信希もいこぉー?」
「一緒に…」
なんとかうまく躱せたと思っていたが、大変なことになってしまった。
流石に女性の下着売り場に男が侵入するのは良くないんじゃないか…?
「え、えと…。ユリア、普通は男が下着売り場に入っていいもの…?」
「問題ないと思うのじゃ、ちゃんと選んであげるのじゃ」
「はい…」
オレは不本意ながらも神聖な場所へと足を進めた。
──。
なんだかどっと疲れたような気がする。
彼女たちの下着を選んでる時の記憶はあまりなく、彼女たちが見せてくる下着を「いいね」というだけの人形になっていた気がする。
シアンもポミナも良い買い物が出来たみたいで、どこか満足そうな表情を浮かべていた。
「信希さま、もう戻りますか?」
ユリアの言葉で我に返る。
「ん-、正直まだ時間が掛かるだろうから、もう少し時間を使いたいところだけど…」
オレは今の状況を少し考えてみる。
イレーナたちの方に監視が付いてない以上、オレたちは早く街を出てしまった方が良いのではないと思われる。
もしも、このまま時間を潰していたら監視者に余計な猶予を与えるだけかもしれない…。
監視者は相変わらず、こちらの様子をうかがっているだけで何か行動に移すつもりはないみたいだった。
「いや、一度宿に戻ろうか」
「はいですじゃ」
そうしてオレたちは、イレーナたちとの約束通りに一度宿に戻ることになった。
──。
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