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王都
第三十七話 シアンの嗅覚
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シアンの教えてくれている方向を確認してみる。
だが、やはりというか『そこ』には何もなく…。
「─信希!こちらです!」
突然自分を呼ぶ声が聞こえてくる。
「イレーナか…?声は間違いないよな」
「うん!イレーナおねーちゃんの声!」
オレたちが見ている方向の林の中からイレーナが突然現れる。
「信希、こちらです。早く来てください」
「うん、みんな行こうか」
そうして、オレたちはイレーナが案内してくれるままに林の中に進んでいく。
「イレーナこれは…?」
イレーナが案内してくれた通りに林の中を進んでいくと、そこには馬車と馬二頭、ミィズ、ロンドゥナが寛いでいて、本当に肉を焼いていた。
「ロンドゥナさんが、認識阻害の魔法を使えたのでお願いしました。肉を焼いていればシアンさんが見つけてくれますから」
「そ、そういうこと…」
オレ自身少し驚いて、言葉が上手く出てこない。
「ワタシたちが街を出る時に少しだけ衛兵たちが騒いでいて、出てすぐに北門が閉鎖されるのが見えましたから、確実に何かあったと思い大事を取ってこうしました。予定と違ってすみません…」
「いや、ベストな判断だ。街中は外壁閉鎖で外に出られなくなってしまったからな」
「信希、よく無事で…安心しました…」
イレーナはそう言うと、オレの側に駆け寄ってきて抱きしめてくる。
「心配かけたな。イレーナたちも無事でよかった」
「街の中で何かあったんですか?」
「ああ、王様の所に招待されて、報酬を受け取れっていう話を受けてたんだ」
「報酬ですか…?」
「フォレストバジリスク討伐の件らしい。貴族位と屋敷と金貨をくれるって言うから、金貨だけ貰って出てきちゃったんだ」
「それは良くないですね…」
「良くないって?」
「国からの貴族位を断るのは、暗殺対象にすらなりえる可能性があります…」
イレーナの言葉に少し耳を疑うが、彼女がこういったときに冗談を言わないのは知っている。
「なるほど…、だったら早くこの国を離れた方がいいのか…?」
「そうですね。とりあえずは、朝までは大丈夫だと思います。門を閉めていることで、信希を閉じ込めていると思われているでしょうから」
「わかった。朝一番に出発できるようにしよう」
それにしても、この国の連中は正直面倒くさいな…。それに、この世界の人類が全員こんな感じなのであれば、オレは国や街に依存する生活には向いていないみたいだ。
ケモミミ様がいるだけで、この不思議な力を存分に使ってしまう…。
「オレは街に入らない方がいいかもな」
「信希がもうちょっと自重できれば良いのですが…」
「だってケモミミ様がいると…」
「それも、分かっています…」
若干だが、イレーナに呆れられているような感じがした…。
「とりあえず休みませんか?食事も準備出来てますよ?」
「あー。オレたちは宿で食べてきたんだ」
「そうですか…」
「ボクはまだ食べられる!」
「レストもぉー」
「わたしももう少し食べたい…」
「だ、そうです。食事しながら休憩しよう」
「はいっ」
オレたちは何とか合流することが出来た。
貴族位を断ってしまったことは問題らしいが、あの場で攻撃を仕掛けてこなかったのも、オレの実力というか強さを知っているからだろうか。
なんにせよこれからは、国に入るときと街を訪ねる時には十分注意していく必要がありそうだな。
みんなが食事を食べ始めて、オレもこれまで警戒していたせいか少しだけ気が抜けたような感じになりながら、リラックスすることが出来た。
少し余裕が出来てきたおかげで、気になることが出てきた。
「イレーナ、馬車と物資はどんな感じ?」
「ええ、しっかりと準備できていますから、かなりの距離まで旅することもできますよ」
「それは頼もしいね。少し見てもいいかな」
「はい、ワタシたちは食事していますから、ゆっくり見てください」
オレは馬車と馬に少しだけ興味があったので、みんなが食事している間に観察してみることにした。
「これからよろしくな?」
馬車の隣で、二頭の馬は野草を食べていた。
オレの言葉に反応こそしないものの、怒ったりはしないので少しだけ安心する。
馬は難しい性格の子が多かったり、かなり神経質な子も多いらしいからな。今のところイイ子にしているこの二頭を選んでくれたイレーナには感謝だな。
「馬車はこんな感じかぁ、結構いい感じだな」
馬車は大きすぎず、小さすぎず良い感じなのでは、と素人目に感じる。
横幅はあまりなく、どちらかと言えば車体が長く細めの道でも難なく進んでいけそうな感じの馬車だ。
「中も見てみよう─」
オレは馬車の中に想像もしていなかった中身に驚愕することになる。
──。
だが、やはりというか『そこ』には何もなく…。
「─信希!こちらです!」
突然自分を呼ぶ声が聞こえてくる。
「イレーナか…?声は間違いないよな」
「うん!イレーナおねーちゃんの声!」
オレたちが見ている方向の林の中からイレーナが突然現れる。
「信希、こちらです。早く来てください」
「うん、みんな行こうか」
そうして、オレたちはイレーナが案内してくれるままに林の中に進んでいく。
「イレーナこれは…?」
イレーナが案内してくれた通りに林の中を進んでいくと、そこには馬車と馬二頭、ミィズ、ロンドゥナが寛いでいて、本当に肉を焼いていた。
「ロンドゥナさんが、認識阻害の魔法を使えたのでお願いしました。肉を焼いていればシアンさんが見つけてくれますから」
「そ、そういうこと…」
オレ自身少し驚いて、言葉が上手く出てこない。
「ワタシたちが街を出る時に少しだけ衛兵たちが騒いでいて、出てすぐに北門が閉鎖されるのが見えましたから、確実に何かあったと思い大事を取ってこうしました。予定と違ってすみません…」
「いや、ベストな判断だ。街中は外壁閉鎖で外に出られなくなってしまったからな」
「信希、よく無事で…安心しました…」
イレーナはそう言うと、オレの側に駆け寄ってきて抱きしめてくる。
「心配かけたな。イレーナたちも無事でよかった」
「街の中で何かあったんですか?」
「ああ、王様の所に招待されて、報酬を受け取れっていう話を受けてたんだ」
「報酬ですか…?」
「フォレストバジリスク討伐の件らしい。貴族位と屋敷と金貨をくれるって言うから、金貨だけ貰って出てきちゃったんだ」
「それは良くないですね…」
「良くないって?」
「国からの貴族位を断るのは、暗殺対象にすらなりえる可能性があります…」
イレーナの言葉に少し耳を疑うが、彼女がこういったときに冗談を言わないのは知っている。
「なるほど…、だったら早くこの国を離れた方がいいのか…?」
「そうですね。とりあえずは、朝までは大丈夫だと思います。門を閉めていることで、信希を閉じ込めていると思われているでしょうから」
「わかった。朝一番に出発できるようにしよう」
それにしても、この国の連中は正直面倒くさいな…。それに、この世界の人類が全員こんな感じなのであれば、オレは国や街に依存する生活には向いていないみたいだ。
ケモミミ様がいるだけで、この不思議な力を存分に使ってしまう…。
「オレは街に入らない方がいいかもな」
「信希がもうちょっと自重できれば良いのですが…」
「だってケモミミ様がいると…」
「それも、分かっています…」
若干だが、イレーナに呆れられているような感じがした…。
「とりあえず休みませんか?食事も準備出来てますよ?」
「あー。オレたちは宿で食べてきたんだ」
「そうですか…」
「ボクはまだ食べられる!」
「レストもぉー」
「わたしももう少し食べたい…」
「だ、そうです。食事しながら休憩しよう」
「はいっ」
オレたちは何とか合流することが出来た。
貴族位を断ってしまったことは問題らしいが、あの場で攻撃を仕掛けてこなかったのも、オレの実力というか強さを知っているからだろうか。
なんにせよこれからは、国に入るときと街を訪ねる時には十分注意していく必要がありそうだな。
みんなが食事を食べ始めて、オレもこれまで警戒していたせいか少しだけ気が抜けたような感じになりながら、リラックスすることが出来た。
少し余裕が出来てきたおかげで、気になることが出てきた。
「イレーナ、馬車と物資はどんな感じ?」
「ええ、しっかりと準備できていますから、かなりの距離まで旅することもできますよ」
「それは頼もしいね。少し見てもいいかな」
「はい、ワタシたちは食事していますから、ゆっくり見てください」
オレは馬車と馬に少しだけ興味があったので、みんなが食事している間に観察してみることにした。
「これからよろしくな?」
馬車の隣で、二頭の馬は野草を食べていた。
オレの言葉に反応こそしないものの、怒ったりはしないので少しだけ安心する。
馬は難しい性格の子が多かったり、かなり神経質な子も多いらしいからな。今のところイイ子にしているこの二頭を選んでくれたイレーナには感謝だな。
「馬車はこんな感じかぁ、結構いい感じだな」
馬車は大きすぎず、小さすぎず良い感じなのでは、と素人目に感じる。
横幅はあまりなく、どちらかと言えば車体が長く細めの道でも難なく進んでいけそうな感じの馬車だ。
「中も見てみよう─」
オレは馬車の中に想像もしていなかった中身に驚愕することになる。
──。
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