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一時帰国
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「美桜、お帰り!」
「ただいま!お母さん」
十二月十八日
美桜はテーマパークでのクリスマスショーを控えて、日本に一時帰国した。
「はあ、いいね、こたつ。これぞ日本の冬って感じ」
「イギリスであんな豪華な生活送ってたら、ガッカリしちゃうでしょうけど。ま、この際だからこってり日本を味わって」
早速こたつに足を入れた美桜に、母が笑ってみかんとお茶を出す。
「おおー、いいわ。まさに王道だね。なんかホッとする」
甘いみかんを食べながら、のんびりおしゃべりを楽しんでいると、父も帰宅してきた。
「おお、美桜。お帰り」
「ただいま、お父さん。お土産あるよ。お父様がウイスキー持たせてくれたの」
「そうか!いやー、今回も飛び切り美味しいだろうな。早速今夜いただくよ。よろしくお礼を伝えてくれ」
「分かった。じゃあ、夕飯の支度するね』
手早く準備をして、三人ですき焼きを囲む。
「美桜、今回はいつまでうちにいるんだ?」
お肉を器に入れながら父が尋ねてきた。
「えっとね、明日からしばらくはここから職場に通うね。二十四日の朝にアレンが日本に来るから、そこからは職場の近くのホテルに泊まって、一月六日にイギリスに帰る予定。あ、お正月にはアレンと一緒にここに顔出すから」
「そうか、分かった。おせち料理を四人で食べよう。楽しみにしてるよ。いやーしかし、イギリスに行ってからの方が美桜はうちに寄りつくようになったな」
は?どういうこと?と美桜が眉根を寄せていると、母が笑い出す。
「ほんとよね。美桜、あなた一人暮らししてた時、ほとんどここに帰って来なかったでしょ?お盆もお正月も仕事だからって。顔を出すのはせいぜい、年に二回くらいだったかしら。それもちょこっとご飯食べたらすぐに帰っちゃって」
あー、確かに、と美桜も当時を振り返って苦笑いした。
「だってテーマパークは年中無休なんだもん。仕方ないでしょ?」
「でも閑散期はまとまった休みが取れるでしょ?それなのにここぞとばかりに絵梨ちゃんと旅行に行っちゃうし」
「それはそうでしょう。今行かずにいつ行くの?って感じなんだもん」
「まあね。だから諦めてたのよ。それなのにイギリスにお嫁に行ったあとは、夏休みも帰国して三週間ここで過ごしたし、今回もまた一週間ほどいるんでしょ?変な感じよね。イギリスに行った方が会えるようになるなんてね」
すると父も、あはは!と笑い出す。
「確かに妙な話だな。イギリスに行って寂しくなると思ってたのに、全く逆だ。こんなに美桜と会えるようになるなんて、父さん嬉しいよ。アレンくんには改めて感謝しないとな。元旦に会えるのを楽しみにしているよ」
「そうね、お母さんも。それになんだか美桜はアレンくんと結婚してから、何もかもが良い方向に進んでる気がするわ。テーマパークの仕事も続けられてるし、実家には顔を出してくれるし、素敵なアレンくんっていう旦那様と一緒にあんなにも豪華な生活を送れるなんてね。ちょっと、美桜。今更だけど、あなたシンデレラストーリーじゃないの?これ」
身を乗り出してくる母に、言われてみればそうか、と美桜も頷いた。
「ほんとだね。アレンは王子様みたいにかっこいいし、パレスは名前の通り宮殿みたいにゴージャスで。クレアとメアリーも良くしてくれてフレディの食事も美味しいし。お父様も優しくて、グレッグやメイソンも。あー、恵まれ過ぎてて怖いくらい」
両親もしみじみと頷く。
「まったくなあ。うちの娘がこんなに優遇されていいんだろうか?家柄なんて絶対に釣り合わないし」
五月に美桜とアレンの結婚式に参列する為に渡英した両親は、フォレストガーデンに滞在中も想像をはるかに超えた環境にびっくりし、更にはパレスでの披露宴でも「ロイヤルウェディングか!?」と目を丸くしていた。
「何かせめてものお礼をしたいと思いつつ、庶民の我々が出来ることって言ったらあちらにとっては失礼に当たりそうだしな」
困ったようにうつむく父に、美桜は明るく笑った。
「気にしないで。アレンもお父様も、本当にそんなこと気にしてないと思う。あ、でもお父様は日本が大好きだから、そうねえ、綺麗な景色の写真集みたいなのがあったら喜ばれるかも」
「へえ、そうなのか。それならいくつかそういうの、取り揃えておくよ。父さんカメラが趣味だから、思いつくのがあるんだ」
「うん、じゃあお願いね。きっと喜ばれると思う。あ、お父様が、またいつでもイギリスに来てくださいって。一緒にゴルフ回りたいんだって」
「おおー!あんな広大な土地なら、ゴルフ場もすごいんだろうな。予定が合えばぜひ行かせてもらうよ」
「分かった、そう伝えておくね。お母さんも、いつでも来て。一緒にフォレストガーデンのスパに行こうよ」
すると母も思い出したように笑顔を浮かべる。
「またあそこに行けるなんて!楽しみだわ。とっても素敵なところだけど、広すぎて全部見て回れなかったのよ」
「次は案内するからいつでも来てね。お母さんがいる間は私もフォレストガーデンに泊まるから」
「えー、いいの?楽しみ!」
すき焼きを食べた後は、フェスティバルの準備の為にあれこれとネットショッピングで材料を選んだ。
「すごいね、屋台のグッズってこんなに色々種類があるんだ。しかも全てパックになっててこれだけで完璧」
「そうね。お母さんも昔、町内会のお祭りやPTAの役員で準備したことあるわよ。業者じゃなくても一般にも売り出されてるんだって驚いたのよ」
「うんうん、私もそう思ってた。じゃあ、ヨーヨー釣りのセットと、このキャラクターのボールすくいと、輪投げと。あ!お父様のハッピと浴衣も買わなきゃ。え、すごーい!このハッピ、背中に名前が入れられるんだって。『ジョージ』ってカタカナで入れちゃおう」
「ええー?そんなことして大丈夫なの?」
「うん。だってお父様もハッピ着たい!っておっしゃってたし、そういうところはお茶目なの」
「そう?じゃあ、せめて浴衣はきちんとしたのをお渡ししなさい。お母さんが見繕うからね。アレンくんと、美桜のも」
「わーい!ありがとう」
そうして実家での時間はあっという間に楽しく過ぎていった。
◇
「美桜先輩、お帰りなさーい!」
次の日。
職場のテーマパークに着いてオフィスに顔を出すと、大勢のメンバーがクラッカーを鳴らして笑顔で出迎えてくれた。
「わっ!びっくりしたー。ありがとう、あやちゃん。由香先輩、みどり先輩、それからみんなも」
オンラインで画面越しには会っていても、やはり実際にこうして顔を見ると感慨もひとしおだ。
「あー、みんなに会えて嬉しい!たくさんおしゃべりしようね、あやちゃん」
「はい!もう私、美桜先輩に聞きたいことがてんこ盛りなんです。旦那様との新婚生活のこととー、イギリスでのこととー」
すると、はいはい、と由香が手を伸ばして遮る。
「まずは仕事ね。ほら、みんな準備して。美桜は、先に今回の滞在中のスケジュールを確認してくれる?企画ミーティングとクリスマスショーの出演。あとは、出来たらフラッグショーも出て欲しいんだけど、どうかな?」
「大丈夫です。フラッグショー、イギリスでも護衛隊のみんなと毎日練習してたので。何番ポジションでもいけますよ」
「おおー、頼もしい!じゃあついでにハピラキショーにも出てもらおっかなー?あと、オフィスでシフト組むのも頼める?」
「はい!何でも来いです」
やったー!助かる、と由香は美桜にガバッと抱きついた。
「美桜、無理しないでね」
みどりが気遣うように声をかけるが、美桜は笑顔で頷く。
「はい、無理はしません。私がやりたいので、やらせてください。あ、そうだ!由香先輩、みどり先輩。これイギリスのお土産です。いつもの紅茶と……」
ショートブレッド!と三人で声を揃えてから、あはは!と笑い合った。
◇
まずはミーティングに参加したあと、レッスンルームで明日から始まるクリスマスショーのリハーサルをする。
「明日、開演前の早朝に実際のステージで場当たりするけど、いつもと同じ場所だし、このレッスンルームにもバミリしてあるから特に問題ないと思うわ。じゃあ、今日は美桜も入って頭から通してみるわよ」
「よろしくお願いします」
美桜はメンバーに頭を下げてから、最後にペアを組む巧にも挨拶した。
「よろしくね、巧くん」
「おう!リフトもあるけど、美桜なら大丈夫だろ。体重変わってないよな?」
ギクリ、と美桜は首をすくめる。
「なんだよ?太ったのか?」
「それが、体重計の数字が読めなくてさ。単位が変なんだもん。ポンドとか、ストーンとか」
「ああ、イギリスはキロ単位じゃないもんな。ま、リフトすればすぐ分かるよ。太ってなければすんなり決まる。グラッてなったら体重オーバーだな」
ひー!と美桜は両手で頬を押さえた。
「こっわ!」
「さてさて、結果はいかに?じゃ、始めようぜ」
冷や汗タラタラで美桜はスタートポジションにつく。
早速、みどりが音楽を流し始めた。
オンラインでレッスンにも参加しているし、パレスのダンスルームでも毎日おさらいしていた為、振り付けは問題ない。
(あとはラストのリフトだけ)
美桜は気を引き締めると、巧と息を合わせてタイミングを計る。
左手を巧と繋ぎ、くるりとターンしながら近づくと、巧の肩に左手を載せてから左足を上げた。
巧は美桜の左足の下に左腕を通し、そのまま美桜の右の太ももをホールドする。
そして右手で美桜の左ヒップを支えて一気に高く持ち上げた。
頭上に伸ばした美桜の右手が、かすかに天井をかすめる。
音楽に合わせてしばらくポーズを取ってから、ストンと地面に下ろされ、メンバー皆で最後のフォーメーションを作った。
ジャン!と音楽が終わり、由香が満足そうに頷く。
「いいねー、バッチリ!じゃあ次は衣装に着替えて、女性陣は小道具のステッキ持ってやってみよ」
「はい!」
皆が一斉に動き出し、巧は美桜の頭にポンと手を置いた。
「体重セーフな。リフト、いつもと同じでやりやすかった」
「ほんとに?良かったー!」
「ああ。本番も頼むぞ」
「うん!こちらこそ、よろしくね」
そして美桜も綾乃達と一緒にドレッシングルームに着替えに行った。
「いやーん、この衣装可愛い!」
薄いピンクと白のオーガンジーが交互に重なったふわふわの衣装を着て、綾乃が嬉しそうにスカートを揺らしている。
「何だっけ?雪の妖精?」
「はい。みどり先輩がそう言って作ってくれたんです。で、小道具のステッキで魔法をかけるイメージなんですけど、このステッキ、夜になるとライトが点くんですよ。細かくキラキラーって」
「そうなんだ、楽しみ!私、イギリスで練習してた時、ステッキの代わりにフライ返し持って踊ってたよ」
すると、フライ返しー!?と、周りからも声が上がった。
「やだ!美桜先輩。妖精のイメージが台無し。フライ返しで魔法はかけられませんよ?」
そう言って綾乃がステッキを渡してくれる。
「わー、可愛い!これなら魔法かけられるね。えーい、ちょちょいのちょい!」
「美桜先輩!妖精はそんな変な掛け声かけませんから」
賑やかに着替えを終えてレッスンルームに戻ると、男性陣も薄い水色のタキシードに着替えていた。
「おおー、かっこいい!王子様だね、巧くん」
「美桜も、そうしてると奥さんには見えんな」
「ちょっと、奥さんってやめてよ。おばちゃんの井戸端会議みたい」
「あら奥さん。ねぎ持って、八百屋の買い物帰りですか?」
「ねぎじゃなーい!魔法のステッキ!」
ブンブンとステッキを振り回していると、綾乃に咎められる。
「美桜先輩!フライ返しとは違うんですからね。ちゃんと丁寧に扱ってください」
「はーい、ごめんなさーい」
全員準備出来たところで、また曲をかけて通してみる。
「うん、衣装も問題なさそうね。何かある?なければ今日は終わり。明日の早朝、ヘアメイクも整えてからリハしまーす」
由香の言葉に、よろしくお願いします!と答えてレッスンは終了した。
ドレッシングルームのカーペットエリアで、皆とおしゃべりしながらランチを食べると、次はフラッグショーに出演する。
衣装に着替えてフラッグを持って整列すると、ドラムメジャーの直樹がメンバーに声をかけた。
「えー、今日はお久しぶりの美桜が五ポジに入ります。英国衛兵風のこのショーで、本場イギリス仕込みの技を披露してくれるでしょう。よろしくお願いします」
うぐっと言葉に詰まってから、美桜は「よろしくお願いします」と挨拶する。
皆で気持ちを引き締めると、直樹の号令とホイッスルに合わせて行進していく。
広場に出ると、寒い時期にも関わらず大勢の観客が待ち受けていた。
(ゲストの前でショーをやるのって楽しい!やっぱり私、好きだな、この仕事)
そんなことを考えながら、美桜は仲間と一緒に観客を魅了するショーを作り上げることに喜びを感じていた。
その後はミーティングに参加し、年末年始のシフトを組んでから業務を終える。
「美桜、また明日ね。朝早いけど、よろしく」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
由香とみどりに挨拶して、美桜はオフィスをあとにした。
◇
「美桜、お疲れ様。どうだった?久しぶりの仕事は」
家に着くと、アレンから電話がかかってきた。
「うん、楽しかったよ。身体がなまってないかドキドキしたけど、大丈夫だった。感覚も取り戻せたし、何よりみんなと会えたのが嬉しくて」
「そう、良かった。今日は疲れてると思うから、ゆっくり休んでね」
「ありがとう。あ、そうだ。絵梨ちゃんと仁くんに連絡取れたよ。二人とも三十日の夜なら都合がつくから、また四人で食事しようって」
「そうか!分かった。俺も楽しみにしてる」
「私も楽しみ!まずは明日からのクリスマスショー、がんばらないとな」
「そうだね。イギリスからエールを送るよ」
「ありがとう!あと五日でアレンに会えるしね。それを励みにがんばるね」
「俺も、美桜に会えるのを楽しみにしてる」
じゃあね、と電話を切ると、念入りにストレッチをしてから、明日に備えて早めにベッドに入った。
翌朝は五時に起きて朝食を食べてから家を出る。
「うわ、寒いし暗い!」
イギリスでは、パレスの中は常に温かく、外出する時も馬車か車で送ってもらえる為、外を歩くことがほとんどない。
「あー、いかんなー。贅沢に慣れちゃってるよ、私」
ぶつぶつ言いながら駅までの道のりを歩く。
だが職場に着いて皆の顔を見れば、一気に気分は明るくなった。
「おはようございます」
「あ、美桜先輩!おはようございます。ね、ヘアメイクお揃いにしたいので、私にやらせてください」
「わあ、私、苦手だから助かる!ありがとう、あやちゃん」
ドレッサーの前に座ると、綾乃はすぐさま美桜のメイクを整え、髪型も綺麗にまとめる。
「んーと、髪飾りはどれにしようかな」
口元に人差し指をやって考え込むと、綾乃は「決めた!」と、小ぶりのティアラをメイクボックスから取り出した。
「数も六人分あるし、みんなこれにしましょ!」
前髪も全部上げて、クラシカルな雰囲気で統一する。
「出来た!我らがフェアリー六人組。いざ、出陣ー!」
「あはは!あやちゃん、その掛け声も変だよ」
ステッキを手に、ストラップシューズに履き替えてからステージに移動した。
ようやく外は明るくなってきたが、風は冷たく、薄い衣装を着ているだけでは身体が冷える。
念入りに準備運動をしてから、音響や照明スタッフも加わり、曲をかけて通してみる。
細かい点の微調整をして、リハーサルは無事に終了した。
その日に始まったクリスマスショーは、午前の部、夜の部共に大盛況。
特に夜はステッキがキラキラと輝き、美桜は踊りながらうっとりと見とれた。
バックヤードに引き揚げると、レッスンルームでクールダウンしながら、皆でみどりが撮影した動画を観る。
「このポーズの時、もう少しステッキがよく見えるようにしよう。身体の向きを観客側に向けて」
「そうですね。特に夜はせっかくキラキラしてますし」
このショーをやるのはあと五日だけ。
それでも少しだけでもブラッシュアップして、より良いものにしていきたい。
メンバーはその後も真剣に意見を出し合っていた。
◇
次の日以降も順調にクリスマスショーは行われた。
ショーのメンバーは期間中は毎日出勤しなければいけない為、負担を減らそうとこのショー以外の業務から外されている。
美桜達は空き時間に、のんびり身体を休めたりおしゃべりをして楽しく過ごした。
(やっぱり私にとって、この時間は大切)
綾乃や巧と他愛もない話で笑ったり、由香やみどりと新たな企画について語り合う。
仕事なのにとにかく楽しく、やりがいや喜びを感じる。
美桜は改めて、皆の理解とサポートに心から感謝していた。
そしていよいよ十二月二十四日
クリスマスイブがやって来た。
「ただいま!お母さん」
十二月十八日
美桜はテーマパークでのクリスマスショーを控えて、日本に一時帰国した。
「はあ、いいね、こたつ。これぞ日本の冬って感じ」
「イギリスであんな豪華な生活送ってたら、ガッカリしちゃうでしょうけど。ま、この際だからこってり日本を味わって」
早速こたつに足を入れた美桜に、母が笑ってみかんとお茶を出す。
「おおー、いいわ。まさに王道だね。なんかホッとする」
甘いみかんを食べながら、のんびりおしゃべりを楽しんでいると、父も帰宅してきた。
「おお、美桜。お帰り」
「ただいま、お父さん。お土産あるよ。お父様がウイスキー持たせてくれたの」
「そうか!いやー、今回も飛び切り美味しいだろうな。早速今夜いただくよ。よろしくお礼を伝えてくれ」
「分かった。じゃあ、夕飯の支度するね』
手早く準備をして、三人ですき焼きを囲む。
「美桜、今回はいつまでうちにいるんだ?」
お肉を器に入れながら父が尋ねてきた。
「えっとね、明日からしばらくはここから職場に通うね。二十四日の朝にアレンが日本に来るから、そこからは職場の近くのホテルに泊まって、一月六日にイギリスに帰る予定。あ、お正月にはアレンと一緒にここに顔出すから」
「そうか、分かった。おせち料理を四人で食べよう。楽しみにしてるよ。いやーしかし、イギリスに行ってからの方が美桜はうちに寄りつくようになったな」
は?どういうこと?と美桜が眉根を寄せていると、母が笑い出す。
「ほんとよね。美桜、あなた一人暮らししてた時、ほとんどここに帰って来なかったでしょ?お盆もお正月も仕事だからって。顔を出すのはせいぜい、年に二回くらいだったかしら。それもちょこっとご飯食べたらすぐに帰っちゃって」
あー、確かに、と美桜も当時を振り返って苦笑いした。
「だってテーマパークは年中無休なんだもん。仕方ないでしょ?」
「でも閑散期はまとまった休みが取れるでしょ?それなのにここぞとばかりに絵梨ちゃんと旅行に行っちゃうし」
「それはそうでしょう。今行かずにいつ行くの?って感じなんだもん」
「まあね。だから諦めてたのよ。それなのにイギリスにお嫁に行ったあとは、夏休みも帰国して三週間ここで過ごしたし、今回もまた一週間ほどいるんでしょ?変な感じよね。イギリスに行った方が会えるようになるなんてね」
すると父も、あはは!と笑い出す。
「確かに妙な話だな。イギリスに行って寂しくなると思ってたのに、全く逆だ。こんなに美桜と会えるようになるなんて、父さん嬉しいよ。アレンくんには改めて感謝しないとな。元旦に会えるのを楽しみにしているよ」
「そうね、お母さんも。それになんだか美桜はアレンくんと結婚してから、何もかもが良い方向に進んでる気がするわ。テーマパークの仕事も続けられてるし、実家には顔を出してくれるし、素敵なアレンくんっていう旦那様と一緒にあんなにも豪華な生活を送れるなんてね。ちょっと、美桜。今更だけど、あなたシンデレラストーリーじゃないの?これ」
身を乗り出してくる母に、言われてみればそうか、と美桜も頷いた。
「ほんとだね。アレンは王子様みたいにかっこいいし、パレスは名前の通り宮殿みたいにゴージャスで。クレアとメアリーも良くしてくれてフレディの食事も美味しいし。お父様も優しくて、グレッグやメイソンも。あー、恵まれ過ぎてて怖いくらい」
両親もしみじみと頷く。
「まったくなあ。うちの娘がこんなに優遇されていいんだろうか?家柄なんて絶対に釣り合わないし」
五月に美桜とアレンの結婚式に参列する為に渡英した両親は、フォレストガーデンに滞在中も想像をはるかに超えた環境にびっくりし、更にはパレスでの披露宴でも「ロイヤルウェディングか!?」と目を丸くしていた。
「何かせめてものお礼をしたいと思いつつ、庶民の我々が出来ることって言ったらあちらにとっては失礼に当たりそうだしな」
困ったようにうつむく父に、美桜は明るく笑った。
「気にしないで。アレンもお父様も、本当にそんなこと気にしてないと思う。あ、でもお父様は日本が大好きだから、そうねえ、綺麗な景色の写真集みたいなのがあったら喜ばれるかも」
「へえ、そうなのか。それならいくつかそういうの、取り揃えておくよ。父さんカメラが趣味だから、思いつくのがあるんだ」
「うん、じゃあお願いね。きっと喜ばれると思う。あ、お父様が、またいつでもイギリスに来てくださいって。一緒にゴルフ回りたいんだって」
「おおー!あんな広大な土地なら、ゴルフ場もすごいんだろうな。予定が合えばぜひ行かせてもらうよ」
「分かった、そう伝えておくね。お母さんも、いつでも来て。一緒にフォレストガーデンのスパに行こうよ」
すると母も思い出したように笑顔を浮かべる。
「またあそこに行けるなんて!楽しみだわ。とっても素敵なところだけど、広すぎて全部見て回れなかったのよ」
「次は案内するからいつでも来てね。お母さんがいる間は私もフォレストガーデンに泊まるから」
「えー、いいの?楽しみ!」
すき焼きを食べた後は、フェスティバルの準備の為にあれこれとネットショッピングで材料を選んだ。
「すごいね、屋台のグッズってこんなに色々種類があるんだ。しかも全てパックになっててこれだけで完璧」
「そうね。お母さんも昔、町内会のお祭りやPTAの役員で準備したことあるわよ。業者じゃなくても一般にも売り出されてるんだって驚いたのよ」
「うんうん、私もそう思ってた。じゃあ、ヨーヨー釣りのセットと、このキャラクターのボールすくいと、輪投げと。あ!お父様のハッピと浴衣も買わなきゃ。え、すごーい!このハッピ、背中に名前が入れられるんだって。『ジョージ』ってカタカナで入れちゃおう」
「ええー?そんなことして大丈夫なの?」
「うん。だってお父様もハッピ着たい!っておっしゃってたし、そういうところはお茶目なの」
「そう?じゃあ、せめて浴衣はきちんとしたのをお渡ししなさい。お母さんが見繕うからね。アレンくんと、美桜のも」
「わーい!ありがとう」
そうして実家での時間はあっという間に楽しく過ぎていった。
◇
「美桜先輩、お帰りなさーい!」
次の日。
職場のテーマパークに着いてオフィスに顔を出すと、大勢のメンバーがクラッカーを鳴らして笑顔で出迎えてくれた。
「わっ!びっくりしたー。ありがとう、あやちゃん。由香先輩、みどり先輩、それからみんなも」
オンラインで画面越しには会っていても、やはり実際にこうして顔を見ると感慨もひとしおだ。
「あー、みんなに会えて嬉しい!たくさんおしゃべりしようね、あやちゃん」
「はい!もう私、美桜先輩に聞きたいことがてんこ盛りなんです。旦那様との新婚生活のこととー、イギリスでのこととー」
すると、はいはい、と由香が手を伸ばして遮る。
「まずは仕事ね。ほら、みんな準備して。美桜は、先に今回の滞在中のスケジュールを確認してくれる?企画ミーティングとクリスマスショーの出演。あとは、出来たらフラッグショーも出て欲しいんだけど、どうかな?」
「大丈夫です。フラッグショー、イギリスでも護衛隊のみんなと毎日練習してたので。何番ポジションでもいけますよ」
「おおー、頼もしい!じゃあついでにハピラキショーにも出てもらおっかなー?あと、オフィスでシフト組むのも頼める?」
「はい!何でも来いです」
やったー!助かる、と由香は美桜にガバッと抱きついた。
「美桜、無理しないでね」
みどりが気遣うように声をかけるが、美桜は笑顔で頷く。
「はい、無理はしません。私がやりたいので、やらせてください。あ、そうだ!由香先輩、みどり先輩。これイギリスのお土産です。いつもの紅茶と……」
ショートブレッド!と三人で声を揃えてから、あはは!と笑い合った。
◇
まずはミーティングに参加したあと、レッスンルームで明日から始まるクリスマスショーのリハーサルをする。
「明日、開演前の早朝に実際のステージで場当たりするけど、いつもと同じ場所だし、このレッスンルームにもバミリしてあるから特に問題ないと思うわ。じゃあ、今日は美桜も入って頭から通してみるわよ」
「よろしくお願いします」
美桜はメンバーに頭を下げてから、最後にペアを組む巧にも挨拶した。
「よろしくね、巧くん」
「おう!リフトもあるけど、美桜なら大丈夫だろ。体重変わってないよな?」
ギクリ、と美桜は首をすくめる。
「なんだよ?太ったのか?」
「それが、体重計の数字が読めなくてさ。単位が変なんだもん。ポンドとか、ストーンとか」
「ああ、イギリスはキロ単位じゃないもんな。ま、リフトすればすぐ分かるよ。太ってなければすんなり決まる。グラッてなったら体重オーバーだな」
ひー!と美桜は両手で頬を押さえた。
「こっわ!」
「さてさて、結果はいかに?じゃ、始めようぜ」
冷や汗タラタラで美桜はスタートポジションにつく。
早速、みどりが音楽を流し始めた。
オンラインでレッスンにも参加しているし、パレスのダンスルームでも毎日おさらいしていた為、振り付けは問題ない。
(あとはラストのリフトだけ)
美桜は気を引き締めると、巧と息を合わせてタイミングを計る。
左手を巧と繋ぎ、くるりとターンしながら近づくと、巧の肩に左手を載せてから左足を上げた。
巧は美桜の左足の下に左腕を通し、そのまま美桜の右の太ももをホールドする。
そして右手で美桜の左ヒップを支えて一気に高く持ち上げた。
頭上に伸ばした美桜の右手が、かすかに天井をかすめる。
音楽に合わせてしばらくポーズを取ってから、ストンと地面に下ろされ、メンバー皆で最後のフォーメーションを作った。
ジャン!と音楽が終わり、由香が満足そうに頷く。
「いいねー、バッチリ!じゃあ次は衣装に着替えて、女性陣は小道具のステッキ持ってやってみよ」
「はい!」
皆が一斉に動き出し、巧は美桜の頭にポンと手を置いた。
「体重セーフな。リフト、いつもと同じでやりやすかった」
「ほんとに?良かったー!」
「ああ。本番も頼むぞ」
「うん!こちらこそ、よろしくね」
そして美桜も綾乃達と一緒にドレッシングルームに着替えに行った。
「いやーん、この衣装可愛い!」
薄いピンクと白のオーガンジーが交互に重なったふわふわの衣装を着て、綾乃が嬉しそうにスカートを揺らしている。
「何だっけ?雪の妖精?」
「はい。みどり先輩がそう言って作ってくれたんです。で、小道具のステッキで魔法をかけるイメージなんですけど、このステッキ、夜になるとライトが点くんですよ。細かくキラキラーって」
「そうなんだ、楽しみ!私、イギリスで練習してた時、ステッキの代わりにフライ返し持って踊ってたよ」
すると、フライ返しー!?と、周りからも声が上がった。
「やだ!美桜先輩。妖精のイメージが台無し。フライ返しで魔法はかけられませんよ?」
そう言って綾乃がステッキを渡してくれる。
「わー、可愛い!これなら魔法かけられるね。えーい、ちょちょいのちょい!」
「美桜先輩!妖精はそんな変な掛け声かけませんから」
賑やかに着替えを終えてレッスンルームに戻ると、男性陣も薄い水色のタキシードに着替えていた。
「おおー、かっこいい!王子様だね、巧くん」
「美桜も、そうしてると奥さんには見えんな」
「ちょっと、奥さんってやめてよ。おばちゃんの井戸端会議みたい」
「あら奥さん。ねぎ持って、八百屋の買い物帰りですか?」
「ねぎじゃなーい!魔法のステッキ!」
ブンブンとステッキを振り回していると、綾乃に咎められる。
「美桜先輩!フライ返しとは違うんですからね。ちゃんと丁寧に扱ってください」
「はーい、ごめんなさーい」
全員準備出来たところで、また曲をかけて通してみる。
「うん、衣装も問題なさそうね。何かある?なければ今日は終わり。明日の早朝、ヘアメイクも整えてからリハしまーす」
由香の言葉に、よろしくお願いします!と答えてレッスンは終了した。
ドレッシングルームのカーペットエリアで、皆とおしゃべりしながらランチを食べると、次はフラッグショーに出演する。
衣装に着替えてフラッグを持って整列すると、ドラムメジャーの直樹がメンバーに声をかけた。
「えー、今日はお久しぶりの美桜が五ポジに入ります。英国衛兵風のこのショーで、本場イギリス仕込みの技を披露してくれるでしょう。よろしくお願いします」
うぐっと言葉に詰まってから、美桜は「よろしくお願いします」と挨拶する。
皆で気持ちを引き締めると、直樹の号令とホイッスルに合わせて行進していく。
広場に出ると、寒い時期にも関わらず大勢の観客が待ち受けていた。
(ゲストの前でショーをやるのって楽しい!やっぱり私、好きだな、この仕事)
そんなことを考えながら、美桜は仲間と一緒に観客を魅了するショーを作り上げることに喜びを感じていた。
その後はミーティングに参加し、年末年始のシフトを組んでから業務を終える。
「美桜、また明日ね。朝早いけど、よろしく」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
由香とみどりに挨拶して、美桜はオフィスをあとにした。
◇
「美桜、お疲れ様。どうだった?久しぶりの仕事は」
家に着くと、アレンから電話がかかってきた。
「うん、楽しかったよ。身体がなまってないかドキドキしたけど、大丈夫だった。感覚も取り戻せたし、何よりみんなと会えたのが嬉しくて」
「そう、良かった。今日は疲れてると思うから、ゆっくり休んでね」
「ありがとう。あ、そうだ。絵梨ちゃんと仁くんに連絡取れたよ。二人とも三十日の夜なら都合がつくから、また四人で食事しようって」
「そうか!分かった。俺も楽しみにしてる」
「私も楽しみ!まずは明日からのクリスマスショー、がんばらないとな」
「そうだね。イギリスからエールを送るよ」
「ありがとう!あと五日でアレンに会えるしね。それを励みにがんばるね」
「俺も、美桜に会えるのを楽しみにしてる」
じゃあね、と電話を切ると、念入りにストレッチをしてから、明日に備えて早めにベッドに入った。
翌朝は五時に起きて朝食を食べてから家を出る。
「うわ、寒いし暗い!」
イギリスでは、パレスの中は常に温かく、外出する時も馬車か車で送ってもらえる為、外を歩くことがほとんどない。
「あー、いかんなー。贅沢に慣れちゃってるよ、私」
ぶつぶつ言いながら駅までの道のりを歩く。
だが職場に着いて皆の顔を見れば、一気に気分は明るくなった。
「おはようございます」
「あ、美桜先輩!おはようございます。ね、ヘアメイクお揃いにしたいので、私にやらせてください」
「わあ、私、苦手だから助かる!ありがとう、あやちゃん」
ドレッサーの前に座ると、綾乃はすぐさま美桜のメイクを整え、髪型も綺麗にまとめる。
「んーと、髪飾りはどれにしようかな」
口元に人差し指をやって考え込むと、綾乃は「決めた!」と、小ぶりのティアラをメイクボックスから取り出した。
「数も六人分あるし、みんなこれにしましょ!」
前髪も全部上げて、クラシカルな雰囲気で統一する。
「出来た!我らがフェアリー六人組。いざ、出陣ー!」
「あはは!あやちゃん、その掛け声も変だよ」
ステッキを手に、ストラップシューズに履き替えてからステージに移動した。
ようやく外は明るくなってきたが、風は冷たく、薄い衣装を着ているだけでは身体が冷える。
念入りに準備運動をしてから、音響や照明スタッフも加わり、曲をかけて通してみる。
細かい点の微調整をして、リハーサルは無事に終了した。
その日に始まったクリスマスショーは、午前の部、夜の部共に大盛況。
特に夜はステッキがキラキラと輝き、美桜は踊りながらうっとりと見とれた。
バックヤードに引き揚げると、レッスンルームでクールダウンしながら、皆でみどりが撮影した動画を観る。
「このポーズの時、もう少しステッキがよく見えるようにしよう。身体の向きを観客側に向けて」
「そうですね。特に夜はせっかくキラキラしてますし」
このショーをやるのはあと五日だけ。
それでも少しだけでもブラッシュアップして、より良いものにしていきたい。
メンバーはその後も真剣に意見を出し合っていた。
◇
次の日以降も順調にクリスマスショーは行われた。
ショーのメンバーは期間中は毎日出勤しなければいけない為、負担を減らそうとこのショー以外の業務から外されている。
美桜達は空き時間に、のんびり身体を休めたりおしゃべりをして楽しく過ごした。
(やっぱり私にとって、この時間は大切)
綾乃や巧と他愛もない話で笑ったり、由香やみどりと新たな企画について語り合う。
仕事なのにとにかく楽しく、やりがいや喜びを感じる。
美桜は改めて、皆の理解とサポートに心から感謝していた。
そしていよいよ十二月二十四日
クリスマスイブがやって来た。
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