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いつまでも好きでいて
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次の合わせの日。
芽衣はいつにも増して緊張の面持ちでやって来た。
「よろしくお願いします」
公平はそんな芽衣を笑顔で出迎える。
「うん、こちらこそよろしく。今日はね、ポピュラーで聴きやすい曲を何曲か撮影したいんだ。まずは『リベルタンゴ』からいい?」
そう言って公平が芽衣と聖に楽譜を配ると、二人は早速ポジションについた。
チューニングを終えると聖が気合いを入れる。
「よし、いつも通り1発でキメるぞ」
「はい。あ、テンポはどうしましょうか?」
「取り敢えずいってみて。イスラに任せる」
「分かりました。木村です」
芽衣は一つ息を吸い込むと、即興で華やかな音色を奏でたあと、少し間を置いて有名なメロディを弾き始める。
(お?かっ飛ばしてんなー)
かなりのアップテンポに、思わず聖は目を見開く。
(面白い。やってやろうじゃないの)
ニヤリと笑ってヴァイオリンを構えると、芽衣が刻むリズムに乗って歯切れ良く攻めたメロディを奏で始めた。
一瞬の隙も見せない、せめぎ合う二人の演奏。
互いに刺激し合い、挑むように鋭さを増していく。
アクセントや音の切り方、強弱やグルーヴ。
それらがピタリとハマる快感。
とにかく、気持ちいい。
やがてユニゾンで最後のフレーズを弾くと、二人はザン!と音を放ってフィニッシュを決めた。
「はあー、たまんねえなー」
聖が酔いしれたように呟く。
「他にもやろうぜ。公平、なんかあるか?」
「んー、じゃあピアソラ続きで『鮫』はどうだ?」
「エスクアロか、いいな。じゃあこれで」
そして聖は芽衣を振り返った。
「イスラもいいか?」
「はい、木村です」
「そう言えば『イスラ』もスペイン語だよな?」
「そうですね、私は木村ですけど」
「確か、島って意味だったっけ?」
「イスラは島で、私は木村です」
「よし、じゃあ早速やるぞ」
話は噛み合わないが、演奏は息ぴったりだ。
この二人は、言葉で会話するよりも楽器で演奏した方が意思疎通が上手くいく、と公平は苦笑いしながら分析していた。
もう1曲、モンティの「チャルダッシュ」も演奏してこの日の撮影は終わった。
「そうだ、芽衣ちゃん。よかったらこれ」
帰り支度をしていた芽衣に、公平がチケットを差し出す。
「え?これって……。如月フィルのコンサートのチケットですか?」
「うん。この間見学したリハの本番。もし予定が空いてれば聴きに来て」
「ええー?!よろしいのでしょうか?だって、チケットは完売だって……」
「一般席はね。でも関係者のご招待チケットはまだ余ってたんだ」
ひえっ!と芽衣は身体を強張らせた。
「そ、そんな!私なんかがこんなチケットをいただく訳には」
「あ、禁句だって言わなかった?私なんかってセリフ」
「えっと、でも」
「でもも禁句!行きたいの?行きたくないの?どっち?」
「行きたいです!」
勢い良く顔を上げる芽衣に、公平は嬉しそうに笑って頷いた。
「うん、じゃあ待ってる」
「はい、ありがとうございます」
頭を下げた芽衣は、聖にも声をかける。
「如月さんも、ありがとうございます。謹んで伺います。当日楽しみにしております」
「ああ。それじゃ」
聖がヴァイオリンケースを肩に掛けて練習室を出て行くと、芽衣は嬉しそうに公平に笑いかけた。
「高瀬さん!本当にありがとうございます。私もう、ワクワクして待ち切れません」
「ふふっ、それなら最初から素直にそう言えばいいのに」
ポツリと呟いた公平の言葉は聞こえなかったらしい。
芽衣は、ん?と首を傾げている。
「いや、喜んでもらえて良かった。それじゃあ当日、会場でね」
「はい!ありがとうございました」
芽衣はチケットを胸に抱えて満面の笑みを浮かべていた。
◇
如月フィルハーモニー管弦楽団の『映画音楽コンサート』は、1日だけの特別なプログラムだった。
当日を迎えると、芽衣は朝からソワソワしながら支度を整え、ホールに向かう。
12月の最初の日曜日で、街はクリスマスの飾りで華やかに賑わっている。
如月シンフォニーホールのロビーにも、大きなクリスマスツリーが飾られていた。
(わあ、素敵……)
芽衣はうっとりと美しいツリーに見とれる。
普段はジーンズにスニーカーの芽衣も、この日ばかりはドレスアップして、メイクにも時間をかけた。
ふんわりと広がるボルドーのワンピースにヒールのあるシューズ。
ラグジュアリーな雰囲気のホワイエを歩いているだけで背筋が伸び、優雅な気分になる。
(高瀬さんにはご挨拶出来るかな?如月さんにはお会い出来ないだろうし)
そう思い、芽衣は受付で聖への花束を預けた。
菓子折りは、公平に会えたら渡そうと、取り敢えず手元に持っておくことにする。
(えっと、座席番号は……)
チケットに書かれた番号は、先日のリハーサルの時と同じように中央で聴きやすい席だった。
(うわ、特等席!さすがご招待チケット。いいのかな?私なんかがこんなところで拝聴しても)
そうは思うが、申し訳なさよりもワクワク感が勝る。
待ち切れないとばかりに熱心にプログラムに目を通していると、「失礼」と声がして右隣に貫録のあるおじいさんが座った。
「あ、はい。こんにちは」
なんと返事をしていいのか分からず、芽衣はドギマギと頭を下げる。
するとおじいさんが「おや?」と芽衣の顔を覗き込んだ。
「お嬢さん、ひょっとして聖のピアニストじゃないかい?」
えっ!と芽衣は驚いて顔を上げる。
「動画にははっきり顔が映っていないが、なんとなく面影が似ている。違うかい?」
「あ、は、はい。そうです」
「やっぱりか!実はね、わしも佐賀教授から聴かせてもらったんだよ、君の『イスラメイ』を。いやー、たまげた。素晴らしい演奏だったよ。まさかこんなに可愛らしいお嬢さんが、あの『イスラメイ』をねえ……。ぜひ今度生で聴かせてもらえんかね?」
芽衣は理解が追いつかずにあたふたした。
「えっと……、佐賀先生とお知り合いでいらっしゃるのですか?」
「ああ。もう古いつき合いになるな」
「では、音楽関係の……?」
恐る恐る聞きながら、必死で音楽業界の重鎮を思い出す。
(佐賀先生のお知り合いなら、この方も教授ってことかしら。ピアニストだったらどうしよう。存じ上げてないなんて、佐賀先生にも失礼に当たるし)
あれこれと考えつく限りの人を思い浮かべるが、心当たりはなかった。
冷や汗が流れ出し、ここはもう先に自己紹介しておこうとおじいさんに向き直る。
「あの、初めまして。佐賀先生に指導していただいている木村 芽衣と申します」
「うん、佐賀教授から聞いとるよ。どうやら一番弟子のようだね」
ええー?!と芽衣は目を丸くして仰け反った。
「そ、そのようなことは決して!」
ブンブンと首を横に振っていると、おじいさんは目を細めて笑う。
「あれほどの難曲を、ああも鮮やかに弾きこなす生徒が他にいるかい?君が一番に決まっておるよ、イスラメイちゃん」
「あ、わたくし木村 芽衣で……って、え?もしかして、如月さんの?」
「ん?ああ、聖はわしの孫だよ」
やっぱり!ということは……、と芽衣は頭の中を整理する。
(如月さんは、如月フィルの創始者のお孫さんよね?つまり、このおじいさんがそのお方。スーパーゼネコン如月建設の会長で、如月フィルの理事長ってこと?)
うひゃー!と芽衣は声にならない声を上げて、頬を両手で押さえた。
「すみません、存じ上げなくて。いつも大変お世話になっております」
「いやいや、こちらこそ。聖と君の動画のおかげで、如月フィルは一気に注目されるようになった。ありがとう。これからもよろしく頼むよ」
「はい!こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
「うむ。そうだ!今日のコンサートが終わったら、ホワイエで関係者のパーティーがあるんだよ。イスラメイちゃんをみんなに紹介したいから、ぜひ残ってくれないかい?」
「ええー?!そんな、滅相もない。私など場違いですから……」
必死にかぶりを振っていると、コンサートの開演を告げるベルが鳴った。
ざわめきが消え、芽衣も慌てて居住まいを正してステージに注目する。
楽器を持った団員達が下手と上手に別れて入場し、それぞれの席に着く。
(如月さん、かっこいい……)
ヴァイオリンのトップに座る聖はいつもの見慣れたラフな私服ではなく、タキシードをスタイル良く着こなし、髪もサイドをすっきりと整えていた。
(なんかもう、オーラが違うわ。この人絶対に上手いって、弾く前から分かる)
チューニングが始まり、管楽器のあとにスッと立ち上がった聖に、芽衣は釘付けになる。
ラの音を伸ばしながらゆったりと団員達を見渡す聖は、優雅で品があり、醸し出す雰囲気が大人の男性の魅力に溢れていた。
(私、本当にこの人と一緒に演奏してたの?この人としゃべったことあるんだよね?)
そんなことを真顔で考えてしまうほど、ステージの上の聖は別世界のスターのようだった。
チューニングを終えた聖が、おもむろに席に座り直す。
ステージマネージャーの拍手が聞こえてきて観客が一斉に拍手を始めると、口元に笑みを浮かべた指揮者が誇らしげに下手から現れた。
指揮台の横まで来ると、ぐるりと会場内を見渡してから深々とお辞儀をする。
指揮台に上がって団員達に目をやると、最後に指揮者は聖とアイコンタクトを取った。
聖が小さく頷き返す。
スッと指揮棒が宙に構えられ、聖達も一斉に楽器を構える。
指揮者の腕の振りに合わせて全員がブレスを取った次の瞬間、鮮やかな大輪の花が咲くようにパーッと華やかな音がホール中に広がった。
リハーサルを見たのだから、そこまで感動しないはず。
そう思っていた。
だがそんな考えはすぐに吹き飛んだ。
芽衣は目を見開いたまま音の世界にいざなわれ、酔いしれる。
どこまでも続く煌びやかで美しい音楽に心を奪われ、言葉を失う。
なんて心地いいのだろう。
音楽とは、どうしてここまで人を感動させられるのだろう。
幸せな時間に芽衣はうっとりと夢見心地になる。
次々と奏でられる魅惑のメロディー。
珠玉の名曲に観客は惜しみない拍手を送る。
やがて聖がおもむろに立ち上がった。
芽衣はハッとして思わずゴクリと喉を鳴らす。
「シンドラーのリスト」
あの曲がまた聴けるのだ。
聖のあのヴァイオリンで。
そう思っただけで芽衣は早くも胸がドキドキし始めた。
ステージ上の聖の方が、自分よりもはるかに落ち着いて見える。
けれどそれは、プロの集中力のなせる業なのだろう。
研ぎ澄まされたオーラが、客席にいても伝わってきた。
知らず知らずのうちに芽衣は両手を組んで、祈るように聖を見つめる。
じっと一点を見据えて気持ちを整えてから、聖は指揮者に小さく頷いた。
指揮棒が上がり、オーケストラが序奏を奏でる。
聖は目を閉じてその音楽を感じ取り、ゆったりと楽器を構えた。
そこから先の芽衣の記憶は定かではない。
一瞬も目をそらさず、一音も聴き逃しはしなかった。
それなのに自分がどう思ったかは、言葉では思い出せない。
心に直に響く聖の音色は魂を揺さぶり、胸を切なく締めつける。
とめどなく涙が溢れ、聖の姿が滲んで見えた。
夢の中に消えていくような気がして、芽衣は必死に目を凝らす。
遠ざかる聖を、行かないで!と繋ぎとめるかのように……
最後の音が空気に溶け込んで消えると、芽衣は顔を伏せて嗚咽をもらした。
客席からひときわ大きな拍手が沸き起こる。
自分もありったけの気持ちを込めて、聖に称賛の拍手を送りたい。
けれどそれは叶わなかった。
両手で顔を覆って、声を押し殺すのに必死だったから。
「イスラメイちゃん?大丈夫かい?」
隣から心配そうな理事長の声がする。
芽衣は何度も頷いてみせるが、口を開こうとすれば嗚咽がもれるだけだった。
「落ち着いて、ゆっくり息を吸って」
肩を震わせてしゃくり上げる芽衣の背中を、理事長が優しくさする。
「す、すみません。あの、大丈夫、ですから、本当に」
うう……っ、と唇を噛みしめる芽衣に、理事長は困ったように笑った。
「やれやれ、可愛いお嬢さんをこんなにも泣かせるなんて。罪な男だな、聖は」
「理事長、本当に、ううっ、もう大丈夫です。ありがとう、ございます。うぐ……」
鳴り止まない拍手の中、聖は客席を見渡し、深々とお辞儀をする。
ようやく顔を上げた芽衣も、大きな拍手を送った。
するとゆっくりと視線を移していた聖が、ふと芽衣を見つけて動きを止める。
しばらく視線を合わせたあと、聖は芽衣に優しく微笑み、右手を胸に当てて頭を下げた。
その姿に、芽衣の胸はドキッと跳ねる。
顔を上げた聖はもう一度芽衣を見つめて、優しく頷いた。
◇
「おー、聖!今日の演奏も良かったぞー」
コンサート終演後、理事長は有無を言わさず芽衣を連れて、聖の控え室を訪れた。
満面の笑みでハグをする理事長を、聖はうんざりしながら手で押し返す。
「理事長。もう俺いい歳なんだから、いい加減やめてくれ」
「何を言うか。お前はいつまでもわしの可愛い孫だ」
「ここ職場なんで、本当にやめろ。恥ずかしいったらないわ」
そう言って聖は、整えた髪を手でクシャッと崩した。
そして理事長の後ろにいる芽衣にようやく気づく。
「あれ?いたんだ、イスラメイ」
「そうなんだよ!」
なぜか理事長がズイッと前に出て、芽衣よりも先に口を開く。
「席が隣だったんだけど、イスラメイちゃん、お前のソロにいたく感激してな。もう涙ボロボロ」
「ああ、見えてた。リハで聴いたことあるのに、なんでまた泣けるんだ?今回もぶっさいくに目が腫れ上がってるな」
う……と芽衣はうつむき、両手で頬を押さえた。
「聖、女の子にそんな口きくんじゃない。だからお前はいつまで経っても結婚出来んのだぞ」
「別にー?する気がないからしないだけだ。あ、そう言えば花、ありがとな。イスラメイ」
急に話題が変わって芽衣は慌てて顔を上げる。
「いえ!そんな。心ばかりですが。男性にお花って、ご迷惑ではなかったですか?」
「迷惑?そんなこと思うように見えるか?俺」
「はい、少し」
正直に答えると、おい、と真顔で睨まれた。
「あ、その……。いつもたくさんもらっていらっしゃるでしょうから、持って帰るのも大変じゃないかと」
「それが案外もらわないんだよ、花。多分、俺のイメージに合わないんだろうな。だから素直に嬉しかった。綺麗だな、この花」
聖はテーブルに置かれていた花束を手に取った。
白と紫の色合いでまとめた花束には、『如月 聖 様へ 木村 芽衣』と書いたカードが添えてある。
聖は花に顔を寄せると、軽く目をつむってすうっと息を吸い込んだ。
「いい香りがする」
初めて見る聖の柔らかい表情に、芽衣はドキッとして思わず目をそらした。
顔が一気に赤くなるのが自分でも分かり、手の甲を当てて必死で冷ます。
その時、コンコンとノックの音がした。
「聖?俺だ」
「どうぞ」
入って来たのは公平だった。
「お疲れ、今日の演奏も良かったぞ。あ、理事長もいらしてたんですね。ん?芽衣ちゃんも?」
すると理事長がまたしても、芽衣が号泣したことを公平に話して聞かせる。
「あはは!芽衣ちゃん、また泣いたんだ。ほんとだ、目が真っ赤」
「すみません、お恥ずかしい。あ、高瀬さん。今日はお招きいただきありがとうございました。これ、よろしければ皆様でどうぞ」
「え?わざわざ手土産用意してくれたの?ありがとう。いただくよ」
公平は菓子折りの紙袋を受け取ると、芽衣ににっこり笑いかけた。
「ほら見なさい、聖。男はこういうふうに女の子に優しく接するもんだ。のう?公平」
理事長の言葉に聖は思い切り顔をしかめ、公平は苦笑いを浮かべる。
「理事長。聖が女の子に優しくしたら、片っ端から言い寄られて大変なことになります。今くらいでちょうどいいかと」
「そういうもんか?せめて好きな子には優しくするんだぞ?わしも老い先そう長くはない。早くひ孫を抱かせてくれ」
聖は大きくため息をつく。
「あと30年くらい、余裕で生きてそうだけどな」
「ばかもん!わしとて化け物ではないわ。いいか?聖。結婚が無理なら、せめて子どもを作ってくれ」
「おいおい。なんちゅうことを言うんだよ、このじいさんは」
「わしは大真面目だ。今どきは珍しくないのだろう?やっちゃった婚とか言って」
「それを言うならできちゃった婚だ」
「そうそれ。英語ではショットガン・ウェディング。昔の言葉ではやっちまった婚だ」
はあー?と呆れる聖を、まあまあと公平がなだめる。
「理事長、ひと言ご挨拶したいと色んなお客様が探しておいでです。そろそろホワイエの方へお願いします」
「ああ、分かった。イスラメイちゃんも、このあとのパーティー参加してくれよ?」
そう芽衣に念を押してから、理事長は控え室をあとにした。
「はあー、やれやれ。やっとうるさいのがいなくなった」
聖はドサッとソファに身を投げる。
「聖、くれぐれもパーティー、バックレんなよ?」
「ギクッ、なんで分かった?」
「当たり前だ。何年一緒にいると思ってる?お前がそそくさと帰らないように、監視しに来たんだ。あーあ、せっかく俺がキメてやった髪型、崩したな。せめてタキシードは着替えるなよ?」
仏頂面でそっぽを向く聖に釘を刺すと、公平は芽衣を振り返った。
「芽衣ちゃん、今日は見違えたよ。よく似合ってる、そのワンピース」
「えっ、そんな。ありがとうございます」
今日の芽衣は、赤くなりっぱなしだ。
「じゃあ、そろそろホワイエに行こうか。ほら、聖も行くぞ」
「分かったよ」
渋々立ち上がった聖のタイを整えてから、公平はドアへと向かう。
「どうぞ、芽衣ちゃん」
「ありがとうございます」
公平にスマートに促されて、芽衣は2階のホワイエに案内された。
壁一面大きなガラス張りになっており、日が暮れ始めた街のイルミネーションや、遠くに海も見渡せる。
「わあ、素敵ですね」
「うん。夜のコンサートはこの夜景のおかげで雰囲気もグッと良くなるんだ。芽衣ちゃんも、次回は夜に聴きに来て」
「はい、必ず伺います」
公平はバーカウンターで飲み物をオーダーしようとして、二人を振り返った。
「聖はシャンパンでいいよな。芽衣ちゃんは?」
「あ、私はノンアルコールでお願いします」
「お酒、強くないの?」
「どうでしょう?そもそも飲んだことなくて」
ええー?!と隣にいた聖が驚いた声を上げる。
「え、お前、未成年だっけ?」
「いえ、22です。でもお酒を飲んだら、そのあとピアノの練習が出来なくなりそうで……」
「それで今まで飲んでこなかったのか?まさかこの先もずっと飲まないつもりか?」
「えっと、そうですね。おそらく飲む機会はないと思います」
呆れたように聖が何かを言おうとするのを、公平がシャンパングラスを差し出して止める。
「ほら、聖。芽衣ちゃんにはこれ。ノンアルコールのカクテル」
「ありがとうございます。綺麗な色ですね」
そうこうしているうちにケータリングの料理が並べられ、理事長がマイクを握って話し始めた。
「えー、皆様。本日はようこそお越しくださいました。演奏はお楽しみいただけましたでしょうか?」
皆は大きな拍手で答える。
「ありがとうございます。では堅い挨拶は抜きにして、今夜は楽しく音楽を語り合いましょう。乾杯!」
乾杯!とあちこちで声が上がった。
おしゃべりを始めたゲスト達は、グラスを片手にお目当ての人のもとへと挨拶に行く。
聖もあっという間に色んな人に取り囲まれた。
公平がさり気なく声をかけて、聖が順番にゲストと会話出来るように仕切っている。
テレビで見かける音楽評論家、世界的指揮者、音楽雑誌のライター、有名なピアニストやヴァイオリニスト。
そうそうたる顔ぶれに、芽衣は気後れしてその場を離れた。
すると「芽衣ちゃん!」と公平に呼び止められる。
「はい、なんでしょうか」
「うちの館長が挨拶させて欲しいって」
「ええ?私にですか?」
「うん、とにかく来てくれる?」
公平は芽衣の肩をそっと抱くと、「失礼」と人波を縫って歩いて行く。
「石田館長。彼女が木村 芽衣さんです」
恰幅の良い50代くらいの男性が振り返り、笑顔を浮かべた。
「これはこれは。初めまして、如月シンフォニーホール館長の石田です」
「初めまして、木村 芽衣と申します。本日はこのような素晴らしいコンサートとパーティーにお招きいただき、誠にありがとうございます」
「こちらこそ。あなたのおかげで如月フィルは今大きく話題になっています。今日の来場者アンケートをざっと見てみましたが、あなたと聖コンマスの動画がきっかけで初めて聴きに来ました、という方が非常に多い。今日はマスコミの取材も入っているし、ますます注目されるでしょう。本当にありがとうございます」
「とんでもない!身に余る機会をいただき、恐縮するばかりです。微力ながら、精一杯努めさせていただきます」
「ええ、これからもどんどん演奏してくださいね。そうだ!聖コンマスとあなたとで、ランチタイムコンサートを開いてみませんか?お客様に生の演奏を聴いていただきたい」
ええー?!と芽衣は、後ずさる。
「む、無理です!そんな、私なんかが、とんでもない」
懸命に手と頭をブルブル振って否定するが、館長は、いいことを思いついたとばかりに早速何やら考え始めた。
「あの動画を観た人なら、チケットに飛びつくでしょうね。うん。動画でもあんなに感動するんだから、生演奏なら推して知るべし。ぜひ実現させたい。高瀬くん、今動画は何本くらい上げてるの?」
「20本ほどです」
「それなら充分レパートリーはある。早速企画しよう。理事長と聖コンマスに話をしに行くぞ」
公平にそう言って、いそいそとその場を去ろうとする館長を、芽衣は必死で止めた。
「あの、館長!そのお話は、本当に私には無理で……」
「どうしてだい?君にとっても良い機会だと思うよ。まだ音大生なんだよね?知名度が上がるとこの先も音楽家としての道が開ける。違うかい?」
「それはもちろんおっしゃる通りですが、私には荷が重すぎます」
「そんな弱気でどうするんだい?あっという間に別の人にチャンスを横取りされてしまうよ?」
「はい。ですが、余りにも実力不足で……」
「何言ってるの。聖コンマスが君を伴奏ピアニストに選んだんだし、何より視聴者が既に君の演奏を認めている。自信を持っていいよ。練習室でカメラを前に演奏するより、ホールでたくさんのお客様に聴いてもらった方が君も嬉しいだろう?」
そこまで言われては何も言い返せない。
はい、と小さく返事をすると、館長は「じゃあ、頼むね」と芽衣の肩をポンと叩いてから、その場を去って行った。
「芽衣ちゃん、何か心配なことでもあるの?」
残されてポツン佇む芽衣に、公平が気遣うように話しかけた。
「何か事情があってコンサートは出来ないというなら、俺から館長に話をするから。佐賀先生に、演奏活動を止められたりしてるの?」
「いえ、そういう訳ではないです」
「だろうな。佐賀先生はそんなことを言う人じゃない。どんどん色んなことをやってみなさいっておっしゃる方だ。それじゃあ、何が気がかりなの?」
「あの、私……」
「うん、なに?」
「えっと……」
うつむいて言い淀む芽衣の言葉をしばらく待ってから、公平は芽衣の手を取った。
「おいで」
混雑したホワイエを通り抜け、通路にあるソファに芽衣を座らせる。
「何でもいいから、話してみて」
「はい、あの……。私、舞台に立つと、思うように弾けなくなるんです」
公平は驚いて息を呑む。
芽衣の今のセリフは、ピアニストにとっては衝撃的、いや、致命的な内容だった。
「……それは、コンクールでってこと?」
慎重に言葉を選びながら、公平は芽衣の顔をうかがう。
「きっかけはコンクールです。でも今は、コンクールだけでなく演奏会でもダメになってしまいました」
「具体的に、どうダメになるの?ものすごく緊張するとか?」
「そうですね、それもありますけど。一番は萎縮してしまうんです。客席に座っている人が全員敵に見えてしまうというか……。演奏していると、へたくそだな、とか、こんなの聴いていられるかって声が聞こえてくる気がして。それで一度、演奏の手が止まってしまったことがあるんです。それ以降、舞台に立てなくなりました」
膝に置いた両手をギュッと握りしめて、芽衣は小さく身体を震わせる。
公平はそんな芽衣をそっと抱き寄せた。
「そう、分かった。館長には俺から話しておく。大丈夫だから、何も心配しないで。ごめん、辛い記憶を呼び起こしてしまったね」
「いえ、私の方こそすみません。情けないですよね。こんな私なんか、演奏家だと名乗る資格もありません」
「そんなことないよ。君はただピアノに向き合って弾けばいい。肩書きとか周りの目なんて気にしないで。君の素直な演奏は間違いなく一流だよ。俺はピアノを仕事には出来なかった人間だから、余計に分かる。君の音は本物だ。だけど何よりも、君にはピアノを弾き続けて欲しい」
真剣に訴える公平の言葉に、芽衣は顔を上げて聞き入る。
「腕は確かなのに、何かのきっかけで挫折して弾けなくなったピアニストを何人も知っている。逆にプロにはなれなかったけど、趣味として楽しく弾き続けている人もいる。どっちが幸せなんだろう?ってずっと思ってた。天性の才能に恵まれても、音楽が嫌いになってしまったら?それなら凡人として楽しく気ままにピアノを弾いていた方が幸せなのかもしれないって。だけどね、芽衣ちゃん」
そう言って公平は、じっと芽衣を正面から見つめた。
「俺は君に、音楽をいつまでも楽しめる天才でいて欲しい。厳しい世界だから、もちろん辛いこともあると思う。だけど生涯音楽を好きでいて。それが大前提だ」
「生涯、音楽を好きでいる……」
「ああ、そうだ。俺は心から君にそう願っているよ。聖にもね。二人ともずっと音楽を大好きでいてくれ。その為に俺は二人を全力でサポートするから」
芽衣の目から涙がこぼれ落ちる。
どうしてなのかは分からない。
だが公平の言葉は、冷たかった自分の心を温かく溶かしてくれた気がした。
変わらなければいけない。
克服しなければいけない。
そんな強迫観念に駆られていた自分を、そのままでいいんだよと優しく守られている気がした。
「ありがとう、ございます。高瀬さん……」
芽衣は涙を堪えながら、なんとか声を振り絞る。
「我慢しないで、いつでも俺に気持ちを話してくれていいからね」
「はい、本当に、ありがとうございます」
公平は芽衣の頭にポンポンと手をやって顔を覗き込み、そっと笑いかけた。
芽衣はいつにも増して緊張の面持ちでやって来た。
「よろしくお願いします」
公平はそんな芽衣を笑顔で出迎える。
「うん、こちらこそよろしく。今日はね、ポピュラーで聴きやすい曲を何曲か撮影したいんだ。まずは『リベルタンゴ』からいい?」
そう言って公平が芽衣と聖に楽譜を配ると、二人は早速ポジションについた。
チューニングを終えると聖が気合いを入れる。
「よし、いつも通り1発でキメるぞ」
「はい。あ、テンポはどうしましょうか?」
「取り敢えずいってみて。イスラに任せる」
「分かりました。木村です」
芽衣は一つ息を吸い込むと、即興で華やかな音色を奏でたあと、少し間を置いて有名なメロディを弾き始める。
(お?かっ飛ばしてんなー)
かなりのアップテンポに、思わず聖は目を見開く。
(面白い。やってやろうじゃないの)
ニヤリと笑ってヴァイオリンを構えると、芽衣が刻むリズムに乗って歯切れ良く攻めたメロディを奏で始めた。
一瞬の隙も見せない、せめぎ合う二人の演奏。
互いに刺激し合い、挑むように鋭さを増していく。
アクセントや音の切り方、強弱やグルーヴ。
それらがピタリとハマる快感。
とにかく、気持ちいい。
やがてユニゾンで最後のフレーズを弾くと、二人はザン!と音を放ってフィニッシュを決めた。
「はあー、たまんねえなー」
聖が酔いしれたように呟く。
「他にもやろうぜ。公平、なんかあるか?」
「んー、じゃあピアソラ続きで『鮫』はどうだ?」
「エスクアロか、いいな。じゃあこれで」
そして聖は芽衣を振り返った。
「イスラもいいか?」
「はい、木村です」
「そう言えば『イスラ』もスペイン語だよな?」
「そうですね、私は木村ですけど」
「確か、島って意味だったっけ?」
「イスラは島で、私は木村です」
「よし、じゃあ早速やるぞ」
話は噛み合わないが、演奏は息ぴったりだ。
この二人は、言葉で会話するよりも楽器で演奏した方が意思疎通が上手くいく、と公平は苦笑いしながら分析していた。
もう1曲、モンティの「チャルダッシュ」も演奏してこの日の撮影は終わった。
「そうだ、芽衣ちゃん。よかったらこれ」
帰り支度をしていた芽衣に、公平がチケットを差し出す。
「え?これって……。如月フィルのコンサートのチケットですか?」
「うん。この間見学したリハの本番。もし予定が空いてれば聴きに来て」
「ええー?!よろしいのでしょうか?だって、チケットは完売だって……」
「一般席はね。でも関係者のご招待チケットはまだ余ってたんだ」
ひえっ!と芽衣は身体を強張らせた。
「そ、そんな!私なんかがこんなチケットをいただく訳には」
「あ、禁句だって言わなかった?私なんかってセリフ」
「えっと、でも」
「でもも禁句!行きたいの?行きたくないの?どっち?」
「行きたいです!」
勢い良く顔を上げる芽衣に、公平は嬉しそうに笑って頷いた。
「うん、じゃあ待ってる」
「はい、ありがとうございます」
頭を下げた芽衣は、聖にも声をかける。
「如月さんも、ありがとうございます。謹んで伺います。当日楽しみにしております」
「ああ。それじゃ」
聖がヴァイオリンケースを肩に掛けて練習室を出て行くと、芽衣は嬉しそうに公平に笑いかけた。
「高瀬さん!本当にありがとうございます。私もう、ワクワクして待ち切れません」
「ふふっ、それなら最初から素直にそう言えばいいのに」
ポツリと呟いた公平の言葉は聞こえなかったらしい。
芽衣は、ん?と首を傾げている。
「いや、喜んでもらえて良かった。それじゃあ当日、会場でね」
「はい!ありがとうございました」
芽衣はチケットを胸に抱えて満面の笑みを浮かべていた。
◇
如月フィルハーモニー管弦楽団の『映画音楽コンサート』は、1日だけの特別なプログラムだった。
当日を迎えると、芽衣は朝からソワソワしながら支度を整え、ホールに向かう。
12月の最初の日曜日で、街はクリスマスの飾りで華やかに賑わっている。
如月シンフォニーホールのロビーにも、大きなクリスマスツリーが飾られていた。
(わあ、素敵……)
芽衣はうっとりと美しいツリーに見とれる。
普段はジーンズにスニーカーの芽衣も、この日ばかりはドレスアップして、メイクにも時間をかけた。
ふんわりと広がるボルドーのワンピースにヒールのあるシューズ。
ラグジュアリーな雰囲気のホワイエを歩いているだけで背筋が伸び、優雅な気分になる。
(高瀬さんにはご挨拶出来るかな?如月さんにはお会い出来ないだろうし)
そう思い、芽衣は受付で聖への花束を預けた。
菓子折りは、公平に会えたら渡そうと、取り敢えず手元に持っておくことにする。
(えっと、座席番号は……)
チケットに書かれた番号は、先日のリハーサルの時と同じように中央で聴きやすい席だった。
(うわ、特等席!さすがご招待チケット。いいのかな?私なんかがこんなところで拝聴しても)
そうは思うが、申し訳なさよりもワクワク感が勝る。
待ち切れないとばかりに熱心にプログラムに目を通していると、「失礼」と声がして右隣に貫録のあるおじいさんが座った。
「あ、はい。こんにちは」
なんと返事をしていいのか分からず、芽衣はドギマギと頭を下げる。
するとおじいさんが「おや?」と芽衣の顔を覗き込んだ。
「お嬢さん、ひょっとして聖のピアニストじゃないかい?」
えっ!と芽衣は驚いて顔を上げる。
「動画にははっきり顔が映っていないが、なんとなく面影が似ている。違うかい?」
「あ、は、はい。そうです」
「やっぱりか!実はね、わしも佐賀教授から聴かせてもらったんだよ、君の『イスラメイ』を。いやー、たまげた。素晴らしい演奏だったよ。まさかこんなに可愛らしいお嬢さんが、あの『イスラメイ』をねえ……。ぜひ今度生で聴かせてもらえんかね?」
芽衣は理解が追いつかずにあたふたした。
「えっと……、佐賀先生とお知り合いでいらっしゃるのですか?」
「ああ。もう古いつき合いになるな」
「では、音楽関係の……?」
恐る恐る聞きながら、必死で音楽業界の重鎮を思い出す。
(佐賀先生のお知り合いなら、この方も教授ってことかしら。ピアニストだったらどうしよう。存じ上げてないなんて、佐賀先生にも失礼に当たるし)
あれこれと考えつく限りの人を思い浮かべるが、心当たりはなかった。
冷や汗が流れ出し、ここはもう先に自己紹介しておこうとおじいさんに向き直る。
「あの、初めまして。佐賀先生に指導していただいている木村 芽衣と申します」
「うん、佐賀教授から聞いとるよ。どうやら一番弟子のようだね」
ええー?!と芽衣は目を丸くして仰け反った。
「そ、そのようなことは決して!」
ブンブンと首を横に振っていると、おじいさんは目を細めて笑う。
「あれほどの難曲を、ああも鮮やかに弾きこなす生徒が他にいるかい?君が一番に決まっておるよ、イスラメイちゃん」
「あ、わたくし木村 芽衣で……って、え?もしかして、如月さんの?」
「ん?ああ、聖はわしの孫だよ」
やっぱり!ということは……、と芽衣は頭の中を整理する。
(如月さんは、如月フィルの創始者のお孫さんよね?つまり、このおじいさんがそのお方。スーパーゼネコン如月建設の会長で、如月フィルの理事長ってこと?)
うひゃー!と芽衣は声にならない声を上げて、頬を両手で押さえた。
「すみません、存じ上げなくて。いつも大変お世話になっております」
「いやいや、こちらこそ。聖と君の動画のおかげで、如月フィルは一気に注目されるようになった。ありがとう。これからもよろしく頼むよ」
「はい!こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
「うむ。そうだ!今日のコンサートが終わったら、ホワイエで関係者のパーティーがあるんだよ。イスラメイちゃんをみんなに紹介したいから、ぜひ残ってくれないかい?」
「ええー?!そんな、滅相もない。私など場違いですから……」
必死にかぶりを振っていると、コンサートの開演を告げるベルが鳴った。
ざわめきが消え、芽衣も慌てて居住まいを正してステージに注目する。
楽器を持った団員達が下手と上手に別れて入場し、それぞれの席に着く。
(如月さん、かっこいい……)
ヴァイオリンのトップに座る聖はいつもの見慣れたラフな私服ではなく、タキシードをスタイル良く着こなし、髪もサイドをすっきりと整えていた。
(なんかもう、オーラが違うわ。この人絶対に上手いって、弾く前から分かる)
チューニングが始まり、管楽器のあとにスッと立ち上がった聖に、芽衣は釘付けになる。
ラの音を伸ばしながらゆったりと団員達を見渡す聖は、優雅で品があり、醸し出す雰囲気が大人の男性の魅力に溢れていた。
(私、本当にこの人と一緒に演奏してたの?この人としゃべったことあるんだよね?)
そんなことを真顔で考えてしまうほど、ステージの上の聖は別世界のスターのようだった。
チューニングを終えた聖が、おもむろに席に座り直す。
ステージマネージャーの拍手が聞こえてきて観客が一斉に拍手を始めると、口元に笑みを浮かべた指揮者が誇らしげに下手から現れた。
指揮台の横まで来ると、ぐるりと会場内を見渡してから深々とお辞儀をする。
指揮台に上がって団員達に目をやると、最後に指揮者は聖とアイコンタクトを取った。
聖が小さく頷き返す。
スッと指揮棒が宙に構えられ、聖達も一斉に楽器を構える。
指揮者の腕の振りに合わせて全員がブレスを取った次の瞬間、鮮やかな大輪の花が咲くようにパーッと華やかな音がホール中に広がった。
リハーサルを見たのだから、そこまで感動しないはず。
そう思っていた。
だがそんな考えはすぐに吹き飛んだ。
芽衣は目を見開いたまま音の世界にいざなわれ、酔いしれる。
どこまでも続く煌びやかで美しい音楽に心を奪われ、言葉を失う。
なんて心地いいのだろう。
音楽とは、どうしてここまで人を感動させられるのだろう。
幸せな時間に芽衣はうっとりと夢見心地になる。
次々と奏でられる魅惑のメロディー。
珠玉の名曲に観客は惜しみない拍手を送る。
やがて聖がおもむろに立ち上がった。
芽衣はハッとして思わずゴクリと喉を鳴らす。
「シンドラーのリスト」
あの曲がまた聴けるのだ。
聖のあのヴァイオリンで。
そう思っただけで芽衣は早くも胸がドキドキし始めた。
ステージ上の聖の方が、自分よりもはるかに落ち着いて見える。
けれどそれは、プロの集中力のなせる業なのだろう。
研ぎ澄まされたオーラが、客席にいても伝わってきた。
知らず知らずのうちに芽衣は両手を組んで、祈るように聖を見つめる。
じっと一点を見据えて気持ちを整えてから、聖は指揮者に小さく頷いた。
指揮棒が上がり、オーケストラが序奏を奏でる。
聖は目を閉じてその音楽を感じ取り、ゆったりと楽器を構えた。
そこから先の芽衣の記憶は定かではない。
一瞬も目をそらさず、一音も聴き逃しはしなかった。
それなのに自分がどう思ったかは、言葉では思い出せない。
心に直に響く聖の音色は魂を揺さぶり、胸を切なく締めつける。
とめどなく涙が溢れ、聖の姿が滲んで見えた。
夢の中に消えていくような気がして、芽衣は必死に目を凝らす。
遠ざかる聖を、行かないで!と繋ぎとめるかのように……
最後の音が空気に溶け込んで消えると、芽衣は顔を伏せて嗚咽をもらした。
客席からひときわ大きな拍手が沸き起こる。
自分もありったけの気持ちを込めて、聖に称賛の拍手を送りたい。
けれどそれは叶わなかった。
両手で顔を覆って、声を押し殺すのに必死だったから。
「イスラメイちゃん?大丈夫かい?」
隣から心配そうな理事長の声がする。
芽衣は何度も頷いてみせるが、口を開こうとすれば嗚咽がもれるだけだった。
「落ち着いて、ゆっくり息を吸って」
肩を震わせてしゃくり上げる芽衣の背中を、理事長が優しくさする。
「す、すみません。あの、大丈夫、ですから、本当に」
うう……っ、と唇を噛みしめる芽衣に、理事長は困ったように笑った。
「やれやれ、可愛いお嬢さんをこんなにも泣かせるなんて。罪な男だな、聖は」
「理事長、本当に、ううっ、もう大丈夫です。ありがとう、ございます。うぐ……」
鳴り止まない拍手の中、聖は客席を見渡し、深々とお辞儀をする。
ようやく顔を上げた芽衣も、大きな拍手を送った。
するとゆっくりと視線を移していた聖が、ふと芽衣を見つけて動きを止める。
しばらく視線を合わせたあと、聖は芽衣に優しく微笑み、右手を胸に当てて頭を下げた。
その姿に、芽衣の胸はドキッと跳ねる。
顔を上げた聖はもう一度芽衣を見つめて、優しく頷いた。
◇
「おー、聖!今日の演奏も良かったぞー」
コンサート終演後、理事長は有無を言わさず芽衣を連れて、聖の控え室を訪れた。
満面の笑みでハグをする理事長を、聖はうんざりしながら手で押し返す。
「理事長。もう俺いい歳なんだから、いい加減やめてくれ」
「何を言うか。お前はいつまでもわしの可愛い孫だ」
「ここ職場なんで、本当にやめろ。恥ずかしいったらないわ」
そう言って聖は、整えた髪を手でクシャッと崩した。
そして理事長の後ろにいる芽衣にようやく気づく。
「あれ?いたんだ、イスラメイ」
「そうなんだよ!」
なぜか理事長がズイッと前に出て、芽衣よりも先に口を開く。
「席が隣だったんだけど、イスラメイちゃん、お前のソロにいたく感激してな。もう涙ボロボロ」
「ああ、見えてた。リハで聴いたことあるのに、なんでまた泣けるんだ?今回もぶっさいくに目が腫れ上がってるな」
う……と芽衣はうつむき、両手で頬を押さえた。
「聖、女の子にそんな口きくんじゃない。だからお前はいつまで経っても結婚出来んのだぞ」
「別にー?する気がないからしないだけだ。あ、そう言えば花、ありがとな。イスラメイ」
急に話題が変わって芽衣は慌てて顔を上げる。
「いえ!そんな。心ばかりですが。男性にお花って、ご迷惑ではなかったですか?」
「迷惑?そんなこと思うように見えるか?俺」
「はい、少し」
正直に答えると、おい、と真顔で睨まれた。
「あ、その……。いつもたくさんもらっていらっしゃるでしょうから、持って帰るのも大変じゃないかと」
「それが案外もらわないんだよ、花。多分、俺のイメージに合わないんだろうな。だから素直に嬉しかった。綺麗だな、この花」
聖はテーブルに置かれていた花束を手に取った。
白と紫の色合いでまとめた花束には、『如月 聖 様へ 木村 芽衣』と書いたカードが添えてある。
聖は花に顔を寄せると、軽く目をつむってすうっと息を吸い込んだ。
「いい香りがする」
初めて見る聖の柔らかい表情に、芽衣はドキッとして思わず目をそらした。
顔が一気に赤くなるのが自分でも分かり、手の甲を当てて必死で冷ます。
その時、コンコンとノックの音がした。
「聖?俺だ」
「どうぞ」
入って来たのは公平だった。
「お疲れ、今日の演奏も良かったぞ。あ、理事長もいらしてたんですね。ん?芽衣ちゃんも?」
すると理事長がまたしても、芽衣が号泣したことを公平に話して聞かせる。
「あはは!芽衣ちゃん、また泣いたんだ。ほんとだ、目が真っ赤」
「すみません、お恥ずかしい。あ、高瀬さん。今日はお招きいただきありがとうございました。これ、よろしければ皆様でどうぞ」
「え?わざわざ手土産用意してくれたの?ありがとう。いただくよ」
公平は菓子折りの紙袋を受け取ると、芽衣ににっこり笑いかけた。
「ほら見なさい、聖。男はこういうふうに女の子に優しく接するもんだ。のう?公平」
理事長の言葉に聖は思い切り顔をしかめ、公平は苦笑いを浮かべる。
「理事長。聖が女の子に優しくしたら、片っ端から言い寄られて大変なことになります。今くらいでちょうどいいかと」
「そういうもんか?せめて好きな子には優しくするんだぞ?わしも老い先そう長くはない。早くひ孫を抱かせてくれ」
聖は大きくため息をつく。
「あと30年くらい、余裕で生きてそうだけどな」
「ばかもん!わしとて化け物ではないわ。いいか?聖。結婚が無理なら、せめて子どもを作ってくれ」
「おいおい。なんちゅうことを言うんだよ、このじいさんは」
「わしは大真面目だ。今どきは珍しくないのだろう?やっちゃった婚とか言って」
「それを言うならできちゃった婚だ」
「そうそれ。英語ではショットガン・ウェディング。昔の言葉ではやっちまった婚だ」
はあー?と呆れる聖を、まあまあと公平がなだめる。
「理事長、ひと言ご挨拶したいと色んなお客様が探しておいでです。そろそろホワイエの方へお願いします」
「ああ、分かった。イスラメイちゃんも、このあとのパーティー参加してくれよ?」
そう芽衣に念を押してから、理事長は控え室をあとにした。
「はあー、やれやれ。やっとうるさいのがいなくなった」
聖はドサッとソファに身を投げる。
「聖、くれぐれもパーティー、バックレんなよ?」
「ギクッ、なんで分かった?」
「当たり前だ。何年一緒にいると思ってる?お前がそそくさと帰らないように、監視しに来たんだ。あーあ、せっかく俺がキメてやった髪型、崩したな。せめてタキシードは着替えるなよ?」
仏頂面でそっぽを向く聖に釘を刺すと、公平は芽衣を振り返った。
「芽衣ちゃん、今日は見違えたよ。よく似合ってる、そのワンピース」
「えっ、そんな。ありがとうございます」
今日の芽衣は、赤くなりっぱなしだ。
「じゃあ、そろそろホワイエに行こうか。ほら、聖も行くぞ」
「分かったよ」
渋々立ち上がった聖のタイを整えてから、公平はドアへと向かう。
「どうぞ、芽衣ちゃん」
「ありがとうございます」
公平にスマートに促されて、芽衣は2階のホワイエに案内された。
壁一面大きなガラス張りになっており、日が暮れ始めた街のイルミネーションや、遠くに海も見渡せる。
「わあ、素敵ですね」
「うん。夜のコンサートはこの夜景のおかげで雰囲気もグッと良くなるんだ。芽衣ちゃんも、次回は夜に聴きに来て」
「はい、必ず伺います」
公平はバーカウンターで飲み物をオーダーしようとして、二人を振り返った。
「聖はシャンパンでいいよな。芽衣ちゃんは?」
「あ、私はノンアルコールでお願いします」
「お酒、強くないの?」
「どうでしょう?そもそも飲んだことなくて」
ええー?!と隣にいた聖が驚いた声を上げる。
「え、お前、未成年だっけ?」
「いえ、22です。でもお酒を飲んだら、そのあとピアノの練習が出来なくなりそうで……」
「それで今まで飲んでこなかったのか?まさかこの先もずっと飲まないつもりか?」
「えっと、そうですね。おそらく飲む機会はないと思います」
呆れたように聖が何かを言おうとするのを、公平がシャンパングラスを差し出して止める。
「ほら、聖。芽衣ちゃんにはこれ。ノンアルコールのカクテル」
「ありがとうございます。綺麗な色ですね」
そうこうしているうちにケータリングの料理が並べられ、理事長がマイクを握って話し始めた。
「えー、皆様。本日はようこそお越しくださいました。演奏はお楽しみいただけましたでしょうか?」
皆は大きな拍手で答える。
「ありがとうございます。では堅い挨拶は抜きにして、今夜は楽しく音楽を語り合いましょう。乾杯!」
乾杯!とあちこちで声が上がった。
おしゃべりを始めたゲスト達は、グラスを片手にお目当ての人のもとへと挨拶に行く。
聖もあっという間に色んな人に取り囲まれた。
公平がさり気なく声をかけて、聖が順番にゲストと会話出来るように仕切っている。
テレビで見かける音楽評論家、世界的指揮者、音楽雑誌のライター、有名なピアニストやヴァイオリニスト。
そうそうたる顔ぶれに、芽衣は気後れしてその場を離れた。
すると「芽衣ちゃん!」と公平に呼び止められる。
「はい、なんでしょうか」
「うちの館長が挨拶させて欲しいって」
「ええ?私にですか?」
「うん、とにかく来てくれる?」
公平は芽衣の肩をそっと抱くと、「失礼」と人波を縫って歩いて行く。
「石田館長。彼女が木村 芽衣さんです」
恰幅の良い50代くらいの男性が振り返り、笑顔を浮かべた。
「これはこれは。初めまして、如月シンフォニーホール館長の石田です」
「初めまして、木村 芽衣と申します。本日はこのような素晴らしいコンサートとパーティーにお招きいただき、誠にありがとうございます」
「こちらこそ。あなたのおかげで如月フィルは今大きく話題になっています。今日の来場者アンケートをざっと見てみましたが、あなたと聖コンマスの動画がきっかけで初めて聴きに来ました、という方が非常に多い。今日はマスコミの取材も入っているし、ますます注目されるでしょう。本当にありがとうございます」
「とんでもない!身に余る機会をいただき、恐縮するばかりです。微力ながら、精一杯努めさせていただきます」
「ええ、これからもどんどん演奏してくださいね。そうだ!聖コンマスとあなたとで、ランチタイムコンサートを開いてみませんか?お客様に生の演奏を聴いていただきたい」
ええー?!と芽衣は、後ずさる。
「む、無理です!そんな、私なんかが、とんでもない」
懸命に手と頭をブルブル振って否定するが、館長は、いいことを思いついたとばかりに早速何やら考え始めた。
「あの動画を観た人なら、チケットに飛びつくでしょうね。うん。動画でもあんなに感動するんだから、生演奏なら推して知るべし。ぜひ実現させたい。高瀬くん、今動画は何本くらい上げてるの?」
「20本ほどです」
「それなら充分レパートリーはある。早速企画しよう。理事長と聖コンマスに話をしに行くぞ」
公平にそう言って、いそいそとその場を去ろうとする館長を、芽衣は必死で止めた。
「あの、館長!そのお話は、本当に私には無理で……」
「どうしてだい?君にとっても良い機会だと思うよ。まだ音大生なんだよね?知名度が上がるとこの先も音楽家としての道が開ける。違うかい?」
「それはもちろんおっしゃる通りですが、私には荷が重すぎます」
「そんな弱気でどうするんだい?あっという間に別の人にチャンスを横取りされてしまうよ?」
「はい。ですが、余りにも実力不足で……」
「何言ってるの。聖コンマスが君を伴奏ピアニストに選んだんだし、何より視聴者が既に君の演奏を認めている。自信を持っていいよ。練習室でカメラを前に演奏するより、ホールでたくさんのお客様に聴いてもらった方が君も嬉しいだろう?」
そこまで言われては何も言い返せない。
はい、と小さく返事をすると、館長は「じゃあ、頼むね」と芽衣の肩をポンと叩いてから、その場を去って行った。
「芽衣ちゃん、何か心配なことでもあるの?」
残されてポツン佇む芽衣に、公平が気遣うように話しかけた。
「何か事情があってコンサートは出来ないというなら、俺から館長に話をするから。佐賀先生に、演奏活動を止められたりしてるの?」
「いえ、そういう訳ではないです」
「だろうな。佐賀先生はそんなことを言う人じゃない。どんどん色んなことをやってみなさいっておっしゃる方だ。それじゃあ、何が気がかりなの?」
「あの、私……」
「うん、なに?」
「えっと……」
うつむいて言い淀む芽衣の言葉をしばらく待ってから、公平は芽衣の手を取った。
「おいで」
混雑したホワイエを通り抜け、通路にあるソファに芽衣を座らせる。
「何でもいいから、話してみて」
「はい、あの……。私、舞台に立つと、思うように弾けなくなるんです」
公平は驚いて息を呑む。
芽衣の今のセリフは、ピアニストにとっては衝撃的、いや、致命的な内容だった。
「……それは、コンクールでってこと?」
慎重に言葉を選びながら、公平は芽衣の顔をうかがう。
「きっかけはコンクールです。でも今は、コンクールだけでなく演奏会でもダメになってしまいました」
「具体的に、どうダメになるの?ものすごく緊張するとか?」
「そうですね、それもありますけど。一番は萎縮してしまうんです。客席に座っている人が全員敵に見えてしまうというか……。演奏していると、へたくそだな、とか、こんなの聴いていられるかって声が聞こえてくる気がして。それで一度、演奏の手が止まってしまったことがあるんです。それ以降、舞台に立てなくなりました」
膝に置いた両手をギュッと握りしめて、芽衣は小さく身体を震わせる。
公平はそんな芽衣をそっと抱き寄せた。
「そう、分かった。館長には俺から話しておく。大丈夫だから、何も心配しないで。ごめん、辛い記憶を呼び起こしてしまったね」
「いえ、私の方こそすみません。情けないですよね。こんな私なんか、演奏家だと名乗る資格もありません」
「そんなことないよ。君はただピアノに向き合って弾けばいい。肩書きとか周りの目なんて気にしないで。君の素直な演奏は間違いなく一流だよ。俺はピアノを仕事には出来なかった人間だから、余計に分かる。君の音は本物だ。だけど何よりも、君にはピアノを弾き続けて欲しい」
真剣に訴える公平の言葉に、芽衣は顔を上げて聞き入る。
「腕は確かなのに、何かのきっかけで挫折して弾けなくなったピアニストを何人も知っている。逆にプロにはなれなかったけど、趣味として楽しく弾き続けている人もいる。どっちが幸せなんだろう?ってずっと思ってた。天性の才能に恵まれても、音楽が嫌いになってしまったら?それなら凡人として楽しく気ままにピアノを弾いていた方が幸せなのかもしれないって。だけどね、芽衣ちゃん」
そう言って公平は、じっと芽衣を正面から見つめた。
「俺は君に、音楽をいつまでも楽しめる天才でいて欲しい。厳しい世界だから、もちろん辛いこともあると思う。だけど生涯音楽を好きでいて。それが大前提だ」
「生涯、音楽を好きでいる……」
「ああ、そうだ。俺は心から君にそう願っているよ。聖にもね。二人ともずっと音楽を大好きでいてくれ。その為に俺は二人を全力でサポートするから」
芽衣の目から涙がこぼれ落ちる。
どうしてなのかは分からない。
だが公平の言葉は、冷たかった自分の心を温かく溶かしてくれた気がした。
変わらなければいけない。
克服しなければいけない。
そんな強迫観念に駆られていた自分を、そのままでいいんだよと優しく守られている気がした。
「ありがとう、ございます。高瀬さん……」
芽衣は涙を堪えながら、なんとか声を振り絞る。
「我慢しないで、いつでも俺に気持ちを話してくれていいからね」
「はい、本当に、ありがとうございます」
公平は芽衣の頭にポンポンと手をやって顔を覗き込み、そっと笑いかけた。
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